SAFENANO 2010年5月6日
カナダ 有機食品中でのナノテクノロジーを禁止

情報源:SAFENANO 06/05/2010
Canada bans nanotechnology in organic foods
http://www.safenano.org/SingleNews.aspx?NewsId=1038

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2010年5月14日
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http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/nano/safenano/100506_Canada_bans_nano_organic_foods.html


 『Organic and Non-GMO Report 5月号』で報告されたように、カナダは有機食品生産で工業用ナノ物質とナノテクノロジーの利用を禁止するための措置をとった。

 同記事によれば、カナダの国家有機規則にナノテクノロジーを”禁止物質又は技術”として禁止する条項が加えられることとなった。その条項は、遺伝子技術、合成農薬、放射線、クローン動物などを含む有機食品製造で禁止される物質又は技術をリストしている。

 Natureの”Path Foods”の有機プログラム・マネージャーのダグ・ファルクは、カナダ一般標準委員会(Canadian General Standards Board)における有機食品でのナノテクノロジーを禁止するという意見を支援し、禁止は採択された。ファルクによれば、ナノテクノロジーを禁止した理由は、消費者がナノテクノロジーについて非常に懸念を持っており、それは有機の原則と一致せず、この技術の安全面は未知だということである。

 ファルクはまた、カナダにはナノテクノロジーに関する規制がなく、遺伝子組み換え技術よりも潜在的に問題があると強調した。”遺伝子組み換えは、作物に遺伝子を組み込むこととして定義可能な科学であるが、ナノテクノロジーに関しては少なくとも1000の異なる適用があり、その全ては未知のリスクがあるにも関わらず規制されていない”。

 アメリカでは、国家有機標準委員会(NOSB)の物質取り扱い委員会が昨年の秋にナノテクノロジーの使用を有機食品製品で禁止することを勧告することを計画した。

 しかし、今年の2月に、同委員会は、”有機における(ナノテクノロジーという)用語の利用可能な定義を開発するための情報要求”を発表した。同文書は、’ナノテクノロジー’という用語の定義の開発が難しいので、同委員会はこの重要な問題に関する最終勧告を完成することができない”と述べている。

 その結果、同委員会は”ナノテクノロジー”という用語を明確に定義することを支援するために、この問題の技術的及び科学的レビューを要求した。同委員会は、現在有機生産及び加工において許されている技術の製品をその定義に含めることは避けることを望んでいる。例えば、牛乳の均質化(ホモジナイズド牛乳)や製粉ではナノサイズの粒子−牛乳分子や小麦細粉ダスト−を生成するが、これらはナノテクノロジー製品であるとはみなされないであろう。

 同記事によれば、、ナノテクノロジーはいくつかの有機製品中ですでに使用されているので、有機製品における禁止には課題がある。 Nano Green Sciences, Inc.は、”有機”であると主張してナノ農薬を販売している。ピレスリン(訳注:除虫菊の殺虫成分)や銅のような他の自然農薬もナノ粒子を含む可能性があり、ナノ銀は野菜のバクテリアを殺すために用いることができる。有機として宣伝されているいくつかの身の回り製品はすでにナノ粒子を含んでいる。

 この最新の展開は、有機食品中でのナノテクノロジーをすでに禁止したか禁止を提案しているいくつかの他の諸国の仲間入りをするように見える。それらの国には、イギリスのSoil Association訳注1)、オーストラリアのBiological Farmers of Australia、及びオーストリアの有機認証団体のAustria Bio Garantieがある。アメリカの Organic Crop Improvement Association は、彼らの有機基準にナノテクノロジーの使用を規制するための条項を追加したと同記事は述べている。
Source: The Organic & Non-GMO Report, pg. 18


訳注1
英ソイル・アソシエーション プレスリリース 2008年1月17日 ソイル・アソシエーション ナノ粒子を禁止する世界初の組織に 皮膚の下に直接達する潜在的に有毒な化粧品

訳注:日本の有機農業定義
有機農産物 (出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』)
  • 1992年に農林水産省によって「有機農産物及び特別栽培農産物に係る表示ガイドライン」が制定され、「化学的に合成された肥料及び農薬を避けることを基本として、播種または植付け前2年以上(多年生作物にあっては、最初の収穫前3年前)の間、堆肥等による土づくりを行ったほ場において生産された農産物」と定義された。
  • 日本有機農業研究会は、「有機農産物の定義」として,「有機農産物とは、生産から消費までの過程を通じて化学肥料・農薬等の合成化学物質や生物薬剤、放射性物質、(遺伝子組換え種子及び生産物等)をまったく使用せず、その地域の資源をできるだけ活用し、自然が本来有する生産力を尊重した方法で生産されたものをいう」と定めている。



化学物質問題市民研究会
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