SAFENANO 2009年8月20日
吸入研究 カーボン・ナノチューブの
げっ歯類への肺毒性を示す


情報源:SAFENANO 20/08/2009
Inhalation study demonstrates carbon nanotube-induced lung toxicity in rodents
http://www.safenano.org/SingleNews.aspx?NewsID=806

オリジナル
Toxicological Sciences, doi:10.1093/toxsci/kfp146
Inhalation Toxity of Multi-Wall Carbon Nanotubes in Rats Exposed for 3 Months
http://toxsci.oxfordjournals.org/cgi/content/abstract/kfp146v1

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2009年8月23日


 90日間吸入毒性研究は、多層カーボン・ナノチューブ(MWCNTs)が暴露ラットに肺毒性を引き起こす可能性を示した。ドイツの BASF SE 社の毒性学者ロバート・ランドシーデルに率いられたこの研究は、労働現場のリスク評価を支援するためのデータを提供することを目的として、OECDテストガイドラインに従って実施された。SAFENANO の最近の特集記事の中で、SAFENANO のシェオナ・ピーターズとロブ・アイトケンはなぜこの研究の結果がそのように重要なのか、そして将来の研究にとってそれらの意味合いは何なのかを問うている。

吸入毒性テストの新たなアプローチ

 先月、『Toxicological Sciences』に発表されたこの研究の中で、MWCNTs 粒子の吸入性の高いダスト・エアロゾルが独特なブラシ・ジェネレーターを用いて生成されたこと、及びそのジェネレータはチューブの構造を損傷したり粒子表面の活性酸素種(Reactive Oxygen Species, ROS)のレベルを上げることはないことが示された。

 次にウィスターラットに対し、鼻頭に MWCNT 粒子を90日間(1日6時間、週5日間、13週間、合計65日の暴露)、0.1、0.5 又は 2.5 mg/m3の濃度、コントロールに対しては0 mg/m3、で暴露させた。

 最後の吸入暴露が終わると、臨床的な化学、血液学、及び病理学の検査が行われた。全身的な毒性に関しては、上記のどの濃度の暴露においても有害影響は観察されなかった。しかし、0.5 と 2.5 mg/m3の濃度では、濃度依存の病変(主に炎症と肉芽腫)が肺とリンパ節に観察され、 MWCNTs の吸入による健康への危険性が示された。最も低い濃度の0.1 mg/m3でも、単一腫瘍が観察され、したがって、 MWCNTs の無影響濃度(NOAEC)は確立することができなかった。

産業衛生への意味合い

 これらの発見に基づき、著者らは、これらの物質の取り扱い及び加工の時には、ダスト形成の可能性が低くても、厳格な産業衛生の措置がとられなくてはならないと結論付けた。

 ”この研究は、ナノ物質によって及ぼされる潜在的な健康リスクを特定し、それらを排除するという我々の使命の一部であり、新たなナノ物質の製造と使用に関連する懸念を特定するために安全性研究の必要性をハイライトすることに資するものである”とロバート・ランドシーデルは SAFENANO に対してコメントした。”この研究結果は、例えばMWCNTsエアロゾルの生成や特性化など、それらの特定の特性が考慮されるなら、OECDテストガイドラインの研究プロトコールはナノ物質テストに対して適切であるということを示した。この研究は MWCNT 供給者との協力の下に実施されたが、その結果は両者に有益であった。我々はナノ物質の安全な取り扱いと使用は可能であることを主張するが、それは適切な安全措置が採用され、必要なら、ある種の使用は回避されるという場合についてのみである”。

 この研究は、MWCNTsが、たとえ低用量であっても吸入暴露により肺毒性を引き起こす可能性を示したのみならず、方法論に多くの進歩を組み入れ、労働現場におけるリスク評価を支援する適切なデータを生成するという点で目覚しい前進を示した。

 SAFENANO の8月特集第二弾の記事の中で、SAFENANO のシェオナ・ピーターズとロブ・アイトケンはこの研究について洞察に満ちた解説をし、ナノEHS(環境健康安全)研究の進歩におけるその重要性をハイライトしている。ここをクリック

 『Toxicological Sciences』に発表され”Inhalation Toxicity of Multi-Wall Carbon Nanotubes in Rats Exposed for 3 Months”へのアクセスはここから入手可能である。



訳注:関連情報
エンバイロンメンタル・ディフェンス リチャード・デニソン 2009年7月14日 TSCAにおけるナノ物質の正体隠し



化学物質問題市民研究会
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