ScienceDirect 2019年2月10日
親の BPA とナノ TiO2 への同時暴露は
ゼブラフィッシュの子に
甲状腺の内分泌かく乱と発達神経毒性を
引き起こす(アブストラクト)

情報源:ScienceDirect, 10 February 2019
Parental co-exposure to bisphenol A and nano-TiO2 causes thyroid endocrine disruption
and developmental neurotoxicity in zebrafish offspring
Yongyong Guo and Lianguo Chen, etc.
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0048969718334259

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2019年10月22日

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http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/nano/research/190210_sciencedirect_
Study_on_effects_of_co-exposure_to_BPA_and_nano_TiO2.html


ハイライト
  • ゼブラフィッシュモデルへの BPA とナノ TiO2(n-TiO2)の慢性同時暴露が行われた。
  • 同時暴露は生物蓄積、及び BPA と n-TiO2 の子への移行を強めた。
  • 同時暴露により甲状腺ホルモンは F0 及び F1 世代でさらに減少した。
  • 発達神経毒性(訳注1)が暴露した親の子の幼生に観察された。
  • 拮抗的及び相乗的相互作用は BPA の濃度に依存した。
アブストラクト

 有機毒性物質とナノ粒子(nanoparticles )の環境中での共存(coexistence)は、汚染物質(pollutant)の生物学的利用能(訳注2)(bioavailability)と毒性に影響を及ぼす。
 成魚ゼブラフッシュモデルへの慢性同時暴露を用いてこの研究は、 F1 世代(子ども世代)におけるビスフェノールA(BPA)二酸化チタンナノ粒子(n-TiO2)暴露の 移行動態及び世代間影響を調査した。
 BPA(0,2, 及び 20 μg/L)及び n-TiO2(100 μg/L)への単独及び複合暴露が比較された時に、複合暴露は成魚における生物蓄積性を相互に高め合う一方で、母親から子への 移行を強化することが発見された。
 親の BPAだけへの単独暴露、又は n-TiO2 との複合暴露により、甲状腺内分泌かく乱及び発達神経毒性が子の幼生に観察された。
 20 μg/L BPA への暴露は、成魚の血漿中のサイロキシン(T4)(訳注3)濃度を顕著に減少させ、卵へのより少ない 移行をもたらした。
 n-TiO2 を伴う 20 μg/L BPA の存在は、 BPA 単独に比べて T4 のレベルをさらに減少させた。
 尚、暴露した親からの子の幼生(larvae)は、不活発な泳ぎ方を示した。
 全体としてこの研究は、その生物蓄積、母からの 移行、及び発達影響に関して、 BPA と n-TiO2 の相互作用を検証したが、それらは同時暴露の動態は重要であり、正確な環境リスク評価のために考慮される必要があることを強調した。


訳注1:発達神経毒性
  • 化学物質の発達神経毒性/J-STAGE
     発達神経毒性とは、重金属や化学物質等のばく露による、胎児期あるいは生後発達期の神経系の構造および機能に対する有害影響と定義されている。メチル水銀による胎児性水俣病やエタノールによる発達障害は、その例としてよく知られている。
訳注2:生物学的利用能
  • バイオアベイラビリティ/ウィキペディア
     バイオアベイラビリティ(英: bioavailability)または生物学的利用能(せいぶつがくてきりようのう)とは、薬剤学において、服用した薬物が全身循環に到達する割合をあらわす定数である。定義上、薬物が静脈内に投与される場合、そのバイオアベイラビリティは 100%となる。一方、薬物がそれ以外の経路(例えば経口摂取など)により投与される場合は、全身循環に到達するまでに不十分な吸収と初回通過効果を受けるため、そのバイオアベイラビリティは減少する事になる。
訳注3:サイロキシン
  • サイロキシン/ウィキペディア
     サイロキシンまたはチロキシン (Thyroxine) は甲状腺の濾胞から分泌される甲状腺ホルモンの一種であり、同じく甲状腺ホルモンであるトリヨードサイロニンの前駆体ともなる修飾アミノ酸で、T4と略記される。

化学物質問題市民研究会
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