Particle and Fibre Toxicology (pft) 2014年5月7日
銀ナノ粒子のラット静脈中への
28日繰り返し投与による免疫毒性研究

アブストラクト

情報源:Particle and Fibre Toxicology, 7 May 2014
Immunotoxicity of silver nanoparticles in an intravenous 28-day repeated-dose toxicity study in rats
ARob J Vandebriel, Elisa CM Tonk, Liset J de la Fonteyne-Blankestijn, Eric R Gremmer, Henny W Verharen, Leo T van der Ven, Henk van Loveren and Wim H de Jong
http://www.particleandfibretoxicology.com/content/11/1/21/abstract

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2014年5月16日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/nano/pft/140507_immunotoxicity_of_silver_nanoparticles.html

アブストラクト

背景
 ナノ銀は、その抗菌作用のために、様々な医療及び消費者製品中で使用されている。この広い応用は人の暴露の増大をもたらす結果となる。しかし、ナノ銀の体全体に影響を及ぼす(全身性)毒性に関する知識は、比較的少ない。以前の研究で、20 nm の銀ナノ粒子の全身性毒性が、ラットでの28日繰り返し投与による毒性研究で調べられた。銀ナノ粒子は、最大容量1日当たり6 mg/kg体重(bw)で静脈投与された。いくつかの免疫パラメータが影響を受けた。すなわち、胸腺の重量低下、脾臓重量と脾臓細胞数の増加、NK 細胞(訳注1)作用の強い低下、及びIFN-γ(訳注2)生成の低下が観察された。

手法
 これらの影響を受けた免疫パラメータにより促されて、我々は、免疫系機能に対する暴露影響を評価したいと望んだ。したがって本研究では、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)(訳注3)への T 細胞依存性抗体産生(TDAR)(訳注4)が、同様の28日静脈繰り返し投与による毒性研究で測定された。さらに、広範な免疫学的パラメータが測定された。ベンチマーク用量(BMD)アプローチを使用して得られたデータが、測定されたパラメータに対する適切な用量反応モデルにより分析された。

結果
 キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)特有の免疫グロブリンG(IgG)(訳注5)の低下が、1日当たり 0.40 mg/kg体重というベンチマーク用量信頼下限(BMDL)の最小値を示した。このことは、銀ナノ粒子が免疫系機能の抑制を誘発することを示唆している。銀ナノ粒子暴露に敏感な他のパラメータは、我々の以前の研究:1日当たり 0.76 mg/kg体重というBMDLの低下胸腺重量、及び増加脾臓重量と脾臓細胞数、及び1日当たり0.36 から 1.11 mg/kg体重の範囲のBMDLsを持つ脾臓細胞部分集合と一致した。しかし、脾臓への影響は増加したキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)特有の免疫グロブリンG(IgG)により反映されないので、それらは免疫刺激を示唆しない。

結論
 28日繰り返し用量毒性研究における銀ナノ粒子の静脈投与は、免疫系機能の抑制を誘発した。この発見は、免疫毒性を評価するためにT 細胞依存性抗体産生(TDAR)を研究し、免疫細胞部分集合の測定だけに依存しないことの重要性を強調している。


訳注1
ナチュラルキラー細胞 - ウイキペディア
 ナチュラルキラー細胞(ナチュラルキラーさいぼう、NK細胞)は、自然免疫の主要因子として働く細胞傷害性リンパ球の1種であり、特に腫瘍細胞やウイルス感染細胞の拒絶に重要である。細胞を殺すのにT細胞とは異なり事前に感作させておく必要がないということから、生まれつき(natural)の細胞傷害性細胞(killer cell)という意味で名付けられた。形態的特徴から大形顆粒リンパ球と呼ばれることもある。

訳注2
インターフェロン-γとは - 生物学用語 Weblio辞書
 ヘルパーT細胞が分泌するインターロイキンの一種で、B細胞やマクロファージを活性化するタンパク質。MHC遺伝子を活性化し、細胞障害性T細胞による感染細胞の認識を助ける。

訳注3
KLH - 生物用語集
 キーホールリンペットヘモシアニン[keyhole lympet hemocyanin]の略。キーホールリンペットという貝のヘモシアニン。キーホールリンペットヘモシアニンは免疫原性が高いので抗ペプチド抗体を作成する時の担体としてしばしば用いられる。

訳注4
T 細胞依存性抗原−プチ免疫情報サイト
 T細胞の指令があってB細胞は抗体をつくり出す。

訳注5
免疫グロブリンG - ウイキペディア
免疫グロブリンG(めんえきグロブリンG、Immunoglobulin G、IgG)は単量体型の免疫グロブリンで、2つの重鎖γと2つの軽鎖からなっている。それぞれの複合体は2つずつの抗原結合部位を持っている。免疫グロブリンの中では最も数の多いものである。ヒトの血清の免疫グロブリンの75%を占め[1]、体中の血液、組織液に存在する。



化学物質問題市民研究会
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