NIST Tech Beat 2012年4月17日
米・国立標準技術研究所/マサチューセッツ大学アムハーストの研究 第二酸化銅ナノ粒子は植物のDNAを損傷し、生育を妨げる 情報源: NIST Tech Beat: April 17, 2012 NIST/UMass Study Finds Evidence Nanoparticles May Increase Plant DNA Damage http://www.nist.gov/mml/biochemical/nanoparticles-041712.cfm 訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会) http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/ 掲載日:2012年4月25日 このページへのリンク: http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/nano/nist/nist_120417_plant_DNA_damage.html 米・国立標準技術研究所(NIST)とマサチューセッツ大学アムハースト(UMass)の研究者等が、工業ナノ粒子が植物中に蓄積し、それらのDNAを損傷することができるという証拠を初めて報告した。最近の論文で、NISTの化学者ブライアント C. ネルソンをリーダーとする研究チームは実験室の環境で、第二酸化銅(訳注1)ナノ粒子は植物の根の細胞に入り込み、多くの突然変異誘発性DNAベースの病変を生成することができることを示した。
第二酸化銅(酸化銅(II)又はCuO とも呼ばれる)は、長年、ガラスや陶器の彩色用顔料、レンズの研磨材、レーヨン製造プロセス中での触媒として使用されている化合物である。第二酸化銅はまた、ナノスケールのレベルで強化されたひとつの特性として強い導電性を持つようになり、そのことによりこのナノ粒子形状のものが半導体製造者にとって有用なものとなる。 第二酸化銅は酸化剤、すなわち他の化合物から電子を取り除く反応性の高い化学物質であり、それはリスクをもたらすかもしれない。金属酸化物により引き起こされる酸化作用は、ある生物においてDNA損傷を引き起こすことが示されている。ネルソンらが望んだことは、ナノサイズの第二酸化銅が植物においてDNA病変の生成及び蓄積をどのように(より多く又はより少なく)もたらすかどうかということであった。もし、前者(より多くもたらす)なら、研究者らはさらにナノサイズ化が植物の成長と健康に本質的な影響をもたらすかどうか調べたいと望んだ。 それらの答を得るために、NIST/UMassの研究者等は最初に、ダイコンと二つのライグラス(牧草)に、銅イオンのほかに、第二酸化銅のナノ粒子とサイズのもっと大きな(100nm 以上)粒子を曝露させた。その後、彼等は、DNAベースの病変の形成と蓄積を評価し、銅がどれだけどのように植物により摂取されるかを調べるために高感度分光技術を用いた。 ダイコンに関して、ナノ粒子に曝露されたものは、大きな粒子に曝露されたものより2倍多くの病変が生成された。さらに、細胞がナノ粒子から摂取する銅は、大きなサイズの粒子からの摂取より著しく多かった。ライグラス(牧草)についてのDNA損傷状況はダイコンの場合とは異なり、ナノ粒子が誘引するDNAの損傷は植物の種及びナノ粒子の濃度に依存することを示した。 最後に、研究者等は第二酸化銅ナノ粒子は、テストされた3種類の植物種の全てにおいて根と新芽の成長に著しい影響を及ぼして生育を阻害することを示した。この研究で使用されたナノ粒子の濃度は、典型的な土壌曝露シナリオの下において植物が遭遇しそうな曝露濃度より高かった。 ”我々が知る限り、これは、植物における多数の突然変異誘発性DNA病変の生成と蓄積の増大に関し、粒子のサイズがある役割を演じる環境中において、第二酸化銅の’ナノベースの影響’を示す最初の証拠である”と、ネルソンは述べている。 ネルソンらは次に、多くのサンスクリーン中で使用されている二酸化チタン・ナノ粒子の稲に及ぼす影響を調べる同様な研究を実施したいと考えている。 訳注1:酸化銅
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