BioWorld 2009年2月11日
ナノテク規制について
ヨーロッパで戦いが起ころうとしている


情報源:BioWorld, February 11, 2009
Battle Brewing in Europe over Nanotech Regulation
By Peter O'Donnell, BioWorld International Correspondent
http://www.bioworld.com/servlet/com.accumedia.web.Dispatcher?next=bioWorldHeadlines_article&forceid=50024

紹介:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2009年2月18日


 【ブリュッセル、ベルギー】ナノテクノロジーの健康と環境リスクに対する懸念が、欧州連合における厳しい規制を求める新たな圧力となっている。欧州議会は現在、ナノ物質の規制面に関する報告書案を起草中であり(訳注1)、その基調は強い懸念を表している。

 ”ナノ物質とナノテクノロジーの利用は、消費者、患者、及び環境のためのおびただしい応用分野で、多くの便益を約束している”と、現在、環境・公衆健康・食品安全に関する議会の委員会で討議中の報告書案は述べている。しかし、それは、”一方、ナノ物質は著しい新たなリスクを潜在的に示している”と続けている。報告書案が言及したように、”現在のナノ物質についての議論は多くの矛盾、又は逆説によって特徴付けられ、不一致と政治的な戦いをもたらしている”。

 たとえば、報告書案は現状の使用の程度について、さまざまな見解を引用している。著名な研究所によって編集された目録は、現在市場にあり製造者がそのように認めているナノテクノロジーに基づく800以上の消費者製品をリストしているが、報告書案は、”製造者の業界団体は具体的な数値を示すことなく、それらは過大な見積もりであるとして、これらの数値に疑問を呈している”と述べている。

 そして、会社は、”ナノ”という言葉は前向きな市場影響を与えるように見えるので、”ナノである”と喜んで明言しているが、彼らは客観的な表示要求には強く反対している。

 この議論は、この議題に関する一連の長いEU討議における最新のものである。

 議論は、”ナノテクノロジーのための欧州戦略”に関する2005年コミュニケーション(訳注2)、2006年の”ナノサイエンスとナノテクノロジーに関する行動計画”(訳注3)、及び、ナノ物質の評価に関する新たに出現し新たに特定された健康リスクに関する科学委員会からの意見(訳注4)、及び化粧品中のナノ物質の安全性に関する消費者製品に関する科学委員会からの意見(訳注5)にしたがっている。

 この議論の舵を取っている欧州議会議員カール・シリターによれば、”ナノテクノロジーは、あいまいに定義されておりテストすることが難しい新たな毒性学的リスクを必然的に伴い、たとえどのような状況においても全てのことに対応することができるとしても、免疫防御反応についての我々の知識が乏しい分野である”。

 彼は、”EUの科学委員会は、主要データの中だけではなく、そのようなデータを得る方法の中にも、重大な欠陥を指摘している。しかし、産業側の多くの代表は、全ての関連するデータは入手可能であり、方法論的な欠陥はないと主張する”と付け加えた。

 シリターは、ナノ物質の規制面に関するEU当局からの最近の文書は、”ナノ物質の具体的な特性、それらの実際の用途、及び潜在的なリスクと便益についての情報の完全な欠落したひどいものである”と結論付けた。

 彼はまた、特許権について用心深く、バイオテクノロジーとの関連について深く懸念している。”ナノ物質への特許権の広範な適用は、さらなる革新の妨げとなる”とし、”ナノテクノロジーがバイオテクノロジー及びインフォメーションテクノロジーと収斂するということがあれば、それは深刻な倫理的疑問を提起する”と彼は述べた。

 将来ありえるバイオテクノロジー応用と収斂するナノテクノロジーの利用に倫理的価値を十分に尊重することを確実にするために、やがては倫理的ガイドラインが開発される必要があると力説した。


訳注1
DRAFT REPORT on regulatory aspects of nanomaterials (2008/2208(INI)) Committee on the Environment, Public Health and Food Safety Rapporteur: Carl Schlyter

訳注2
訳注3
Nanosciences and nanotechnologies:An action plan for Europe 2005-2009

訳注4
訳注5
2007年12月18日 欧州委員会/消費者製品科学委員会(EC/SCCP)化粧品中のナノ物質の安全性に関する意見 エグゼクティブサマリー

訳注:関連情報
Safenano Battle Brewing in Europe over Nanotech Regulation 13/02/2009



化学物質問題市民研究会
トップページに戻る