オーストラリアン紙2008年10月10日報道の紹介
食品会社 ナノ成分を明らかにするよう求められる

情報源:The Australian, October 10, 2008
Food firms pushed to come clean on nano-ingredients
Leigh Dayton, Science writer
http://www.theaustralian.news.com.au/story/0,25197,24473621-30417,00.html

紹介:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2008年10月16日


 オーストラリアは、食品会社に対し、その製品中に裸眼では見えない粒子が含まれているなら、そのことを明らかにするよう求めることで、ナノテクノロジーの規制に向けた最初の措置に踏み出した。

 ナノサイズの亜鉛は、食品及び容器包装中で防腐剤として使用され、ナノサイズのクレー粒子は生物分解性の甘味容器包装を頑丈にする。

 ナノテクノロジー、原子や分子のスケールで製造される粒子の使用に関する規制は今までなかった。しかし、国家食品規制当局は現在、食品会社はその製品中のどのようなナノ成分についても明らかにすべきことを提案している。

 この動きは、オーストラリア・ラッド政権はナノテクノロジーのための規制の枠組みを確立するつもりであるとするキム・カール科学大臣によるコメントを受けたものである。

 ナノスケールにおいて物質は未知の振る舞いをするので、ナノ物質を含む食品、容器包装、及び農産物のための基準やテストがないことは、ナノテクノロジーのパイオニアであるノーベル賞受賞のスイスの物理学者ハインリッヒ・ローラーのような学者に懸念をもたらしている。

 ”我々は、そのリスクについてはわからない”とローラー博士は10月10日(金)にオーストラリアン紙に述べた。

 食品基準オーストラリア・ニュージランド(FSANZ)は、会社が販売にあたり製品の承認を得るために従わなくてはならない手続きの概要を示した文書への修正案に関するパブリック・コメントを求めている。

 この動きは、食品会社はどのようなナノ粒子についてもそのサイズと形状に関する情報、及びそれらが新たな製品にどのように使われているのかに関する情報を提供する義務を課すものである。しかし、製品は安全テストや表示の事前承認を求められず、またナノ物質を含んだ容器包装材料も対象外である。

 この提案は、地球の友オーストラリアのナノテクノロジー報道官ジョージア・ミラーによって歓迎された。”現在まで、FSANZは、ナノ食品が市場に出ているのかどうか知る方法がなく、計器飛行をしていたとMs ミラーは述べた。

 今年の3月に発表された地球の友の報告書は、ナノ物質を含む104種の食品、食品容器包装、及び農産物が国際的に市場に出ていることを示した(訳注1)。

 FSANZの報道官リンダ・ブヒトマンは、表示は保健省によって決定されるべき政策の問題であると述べた。
 同省はナノ物質の宣言を義務化する計画はないと述べた。

 提案に対するコメントの締め切りは、10月29日午後6時、FSANZへの提出である。


訳注1
地球の友 2008年4月 報告書 食品と農業におけるナノテクノロジー 研究室から食卓へ



化学物質問題市民研究会
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