米国生理学会(APS) 2022年8月25日
シリカ粒子の吸入は腎臓病を引き起こす可能性がある

情報源:American Physiological Society (APS), August 25, 2022
Inhaling Silica Particles May Cause Kidney Disease
https://www.physiology.org/detail/news/2022/08/25/
inhaling-silica-particles-may-cause-kidney-disease?SSO=Y


訳:安間 武 (化学材料問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/index.html
掲載日:2022年9月14日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/nano/news/220825_
Inhaling_Silica_Particles_May_Cause_Kidney_Disease.html


 ラットでの概念実証研究は、サトウキビの燃焼にさらされた人々に懸念を引き起こす

【メリーランド州ロックビル 2022年8月25日】− 非晶質(アモルファス)シリカは、歯磨き粉から半導体に至るまでの製品の製造に使用される一般的な鉱物である。一般的には安全と考えられてきたが、ラットを使った新しい研究では、ナノ粒子と呼ばれる小さな非晶質シリカ粒子を吸い込むと、腎臓に損傷を与える可能性があることが示されている。この研究は、American Journal of Physiology-Renal Physiology に先行して掲載されており、8月の APSselect 記事に選ばれた。

 ”サトウキビ灰に見られるサイズと同様のサイズの[非晶質シリカナノ粒子]が、ラットで[慢性腎臓病]を引き起こす可能性があることを初めて示した。”

 ”原因不明の慢性腎臓病(chronic kidney disease of unknown etiology)”または CKDu と呼ばれる、原因不明の慢性腎臓病の流行が世界中で発生している。これらの CKDu の流行には多くの類似点がある。それらは主に農業労働コミュニティで見られ、次のような同様の症状を示す。
  • 糖尿病がほとんどない
  • 尿中の最小タンパク質
  • 老廃物クレアチニンのレベル上昇
  • 炎症
  • 腎臓組織の瘢痕化
 サトウキビにはもともと非晶質シリカが含まれており、サトウキビ畑を燃やすと大気中に放出される。収穫前にサトウキビ畑を燃やすことは、収集を遅らせる可能性のある余分な葉を取り除くために使用される一般的な方法である。サトウキビ労働者は、CKDu の割合が最も高い人々の ひとつである。研究者らは、吸入されたシリカが腎臓に影響を与える可能性があるかどうかをテストすることにした.

 研究チームは焼かれたサトウキビ畑の灰を分析し、ラットを灰に最も多く含まれる粒子と同じサイズのシリカ粉末にさらした。オスのラットには、純粋な水 (コントロールとして) または 200 または 300 ナノメートルのシリカ粒子を混ぜた水を週 2 回、13 週間吸入させた。 13週間後、投与は中止された。研究チームは、ラットの腎機能を 13 週と 26 週で評価した。

 シリカ粒子の投与を受けたラットの両方のグループで、研究者らは CKDu で見られるものに対応する領域で腎臓組織の損傷と炎症を観察した。投与されたラットは、対照ラットと比較して、尿中のクレアチニンレベルと最小タンパク質レベルも上昇した。しかし、暴露を止めても損傷は治まらなかった。それは進行し続け、26週目までに重大な組織の瘢痕化をもたらした。

 他の多くの要因が CKDu の発生に影響を与えている可能性があるが、これらの調査結果は、”サトウキビ灰に含まれる[非晶質シリカナノ粒子]への人間の暴露が CKDu に参加型の役割(a participatory role)を果たしている可能性があるという仮説を支持している”と研究者らは書いている。



 American Journal of Physiology-Renal Physiology で印刷前に公開された記事”Inhaled silica nanoparticles cause chronic kidney disease in rats 吸入されたシリカ ナノ粒子がラットに慢性腎臓病を引き起こす”の全文をお読みください。これは、米国生理学会の APSselect プログラムの一環として、今月の”ベスト オブ ザ ベスト”の ひとつとして注目されている。今月の厳選された研究記事をすべてお読みください。

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