ミズーリ大学ニュース 2016年10月12日
給水系の銀ナノ粒子は濃度が低いので
有害性はないことを論文が示す

ライアン・オーエンス

情報源:University of Missouri News, October 12th, 2016
Silver nanoparticle concentration too low to be harmful in water supply, paper finds
Posted By: Ryan Owens
http://engineering.missouri.edu/2016/10/
silver-nanoparticle-concentration-low-harmful-water-supply-paper-finds/


訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/index.html
掲載日:2016年10月23日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/nano/news/
161012_Silver_nanoparticle_concentration_too_low_to_be_harmful_in_water_supply.html


 銀ナノ粒子は広範な用途を持ち、それらの一つは飲料水から有害なバクテリアとウィルス除去するために処理することである。しかし銀ナノ粒子はまた、有益なバクテリアを殺したり、水生態系に有害影響を引き起こす可能性がある。しかしミズーリ大学工学部の研究者らのチームによる新たな論文は、それは当たらないと述べている。

 ”Science of the Total Environment”誌に最近発表された彼らの論文 『排水処理に及ぼす銀ナノ粒子の効果に影響を与える支配的な要素 (Governing factors affecting the impacts of silver nanoparticles on wastewater treatment)』(訳注1) の中で、土木環境工学部の博士研究員チキャン・ザーンとシャシカンス・ガジャラジ、及び学部長であり教授のジーギャン・フーはサウスチャイナ工科大学のピン・リと共に、銀ナノ粒子と排水処理をテーマとする約300の公開されている研究の結果を分析した。

 彼らが発見したことは、銀ナノ粒子は高濃度では中程度又はかなりの有害影響をもたらすことができるが、現在の我々の排水中で見いだされる銀ナノ粒子の量は、全体として人間又は生態系に有害ではないということである。

 ”もし濃度が低く保たれているなら、深刻な問題とはならない”と、ザーンは述べた。

 銀ナノ粒子は、排水処理に使用され、またバクテリアを殺すために、日用品中でますます見られるようになった。廃水処理という観点からは、銀ナノ粒子はしばしば下水汚泥中で硫化物と反応し、その毒性は大幅に制限される。

 ザーンは、研究の多くは高濃度を対象としていると述べ、時間が経過すればその濃度は、数ミリグラム/リットル又はそれ以上という高いレベルになり、毒性が問題となり得ると付け加えた。しかし彼は、そのようなレベルに達するには数十年あるいはそれ以上の期間を要するであろうと説明した。

 ”人々はその毒性を小規模な系で評価する”と彼は述べた。”しかし水収集系で銀ナノ粒子の多くは硫化銀となり、有害でなくなる”。


訳注1:アブストラクト紹介
排水処理に及ぼす銀ナノ粒子の効果に影響を与える支配的な要素
Governing factors affecting the impacts of silver nanoparticles on wastewater treatment
Zhang C1, Hu Z, Li P, Gajaraj S.
Abstract

 銀ナノ粒子(AgNPs)は、様々な源から自治体の排水系に入り込み、それらが及ぼす排水処理プロセスへの潜在的な有害影響についての懸念をもたらす。環境的に現実的な濃度(マイクログラム/リットル、又はそれ以下)で銀ナノ粒子が実物の自治体水資源回収施設(WRRF)の能力に及ぼす生物学的影響は極微であると我々は主張する。
 リアクター構成は、実物の資源回収施設(WRRF)中の排水バクテリアへの銀ナノ粒子の毒性を低減するか、さらにはそれを消すための重要な要素である。自治体の下水収集網(ネットワーク)は銀ナノ粒子を生態毒性の低い silver(I)-complexes/precipitates に変換し、生物学的処理設備直前の前処理/主処理プロセスが銀ナノ粒子を部分的に汚泥に除去する。銀ナノ粒子に対するバクテリアの機能的冗長性とバクテリアの適応性もまた、実物の水資源回収施設(WRRF)の能力への銀ナノ粒子の有害影響を大いに軽減する。
 汚泥収集装置、及び/又は前処理/主処理プロセスのない研究室のバイオリアクター中の銀ナノ粒子は、実物のバイオリアクター中の銀ナノ粒子とは対照的に、 比較的高い濃度(例えば、ミリグラム/リットル、又はそれ以以上)ではリアクターの能力を低下させるかもしれない。しかし、多くの場合、銀ナノ粒子は、特に比較的低濃度の場合(例えば1ミリグラム/リットル以下)、シーケンシング・バッチリアクター(SBRs) のような研究室のバイオリアクターへの影響は極微である。排水バクテリアの銀ナノ粒子に対する感受性は種毎に異なる。一般的に、銀ナノ粒子は従属栄養バクテリアより 硝化バクテリアに対して高い毒性を持つ。



化学物質問題市民研究会
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