CORDIS NANO-ECOTOXICITY Result In Brief
2015年6月17日
ナノ粒子とミミズ

情報源:CORDIS NANO-ECOTOXICITY Result In Brief, June 17, 2015
Nanoparticles and earthworms
http://cordis.europa.eu/result/rcn/165001_en.html
Original Article:
Soil pH effects on the comparative toxicity of dissolved zinc, non-nano and nano ZnO
to the earthworm Eisenia fetida
August 2014, Vol. 8, No. 5 , Pages 559-572 (doi:10.3109/17435390.2013.809808)
Laura R. Heggelund, Maria Diez-Ortiz, Stephen Lofts, Elma Lahive, Kerstin Jurkschat, Jacek Wojnarowicz, Nina Cedergreen, David Spurgeon, and Claus Svendsen
http://informahealthcare.com/doi/abs/10.3109/17435390.2013.809808?prevSearch=allfield%253A%2528lofts%2529&searchHistoryKey=&

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/index.html
掲載日:2015年6月30日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/nano/news/150617_CORDIS_nano_earthworms.html

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(c) Thinkstock
 多くの研究がナノ粒子((NPs)の人間への潜在的な毒性に目を向けているが、土壌中のナノ粒子の運命について重要な疑問が残っている。新たな研究が、土壌中に生息する生物への生物学的利用能(訳注1)と毒性に影響を与える要素に光を当てている。

 ナノ粒子は、少なくともひとつの次元が 100ナノメートル未満の小さな物質である。それらは容積に比べて非常に大きな表面積を持ち、同じ組成の通常サイズの物質に比べて反応性が高い。新たな用途にとって望ましい品質であっても、それは人や環境への反応性について重要な疑念を提起する。

 金属ナノ粒子は、多くの製品中でますます使用されるようになり、環境中で検出されている。EUが資金援助するプロジェクト、’土壌中の金属ナノ粒子の生態毒性(NANO-ECOTOXICITY)は、通常は目を向けられることが少ない土壌中に生息する生物に対するナノ粒子の毒性という特定の課題を調査するために立ち上げられた。

 研究者らは、異なる運命動特性を持つ2つのナノ粒子、酸化亜鉛(ZnO)と銀(Ag)を選んだ。彼らは、毒性に及ぼす pH の影響を評価するために土壌のタイプ、及び経時の影響を見るために土壌潜伏期間(数週間から1年)、の両方を変えた。ひとつの土壌生息生物、ミミズ(Eisenia andrei)がテストケースとして選ばれた。科学者らは、摂取度合と経路を調査し、成長と生殖はもとより、組織の断面を通じて内部分布と分化を評価した。

 粒子特性と運命に及ぼす関連影響の結果として、酸化亜鉛の生物学的利用能と毒性は土壌の pH により非常に影響された。興味深いことには、ナノ酸化亜鉛に比べてイオン化酸化亜鉛に暴露したミミズの組織中の亜鉛濃度は低いにもかかわらず、イオン化酸化亜鉛に暴露したミミズはより大きな毒性を示した。コーティングありとコーティングなしの銀ナノ粒子に暴露したミミズは、銀イオンのために確立された体内負荷限度以上の銀の組織内濃度を蓄積したが、同じ毒性を被ることはなかった。

 暴露経路については、ナノ粒子は、微量元素のイオン化形として皮膚を通じて吸収されるより、摂取による方が大きいようである。最後に、銀ナノ粒子に関連する毒性は、1年以上の土壌潜伏期間で増大し、このことは、4週間の暴露をカバーする標準テストは正確にナノ粒子のリスクを反映しないかもしれないということを示唆している。

 ナノ粒子の製品中での使用は増大しており、従って環境中の存在も増大している。 NANO-ECOTOXICITY は、ナノ粒子のミミズへの影響を研究することによって、重要であるが無視されている土壌中の毒性の領域に目を向けた。その結果は、ナノ粒子のリスクと毒性の包括的な評価のためのテストの標準化に対して重要な情報を提供するであろう。

関連情報:
Final Report Summary - NANO-ECOTOXICITY (Ecotoxicity of metal nanoparticles in soils)


訳注1
生物学的利用能/ウィキペディア
 薬剤学において、服用した薬物が全身循環に到達する割合をあらわす定数である。定義上、薬物が静脈内に投与される場合、そのバイオアベイラビリティは100%となる。一方、薬物がそれ以外の経路(例えば経口摂取など)により投与される場合は、全身循環に到達するまでに不十分な吸収と初回通過効果を受けるため、そのバイオアベイラビリティは減少する事になる。静脈内投与以外の経路で投与する際、投薬量の計算にバイオアベイラビリティを考慮する必要がある事から、バイオアベイラビリティは薬物動態学において必須のツールである。



化学物質問題市民研究会
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