CBC News 2014年5月21日
カナダの科学者らがナノ粒子暴露テストを開発 簡単な皮膚テストが動物を殺し器官をテストすることに代わる 情報源:CBC News, May 21, 2014 Nanoparticle exposure test developed by Canadian scientists Simple skin test is an alternative to killing animals and testing organs By Emily Chung, CBC News http://www.cbc.ca/news/technology/nanoparticle-exposure-test-developed-by-canadian-scientists-1.2649608 訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会) http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/index.html 掲載日:2014年5月28日 このページへのリンク: http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/nano/news/140521_CBC_np_exposure_test_developed.html
トロント大学化学教授ワーレン・チャンと彼のチームは、ナノ粒子のレベルを上げながらマウスに暴露させると、ナノ粒子の種類ごとに、あるマウスはその色が変わり、他のマウスは蛍光性を持つ(すなわち、ある色の光が当たると輝く)ことに気が付いて、この皮膚テスト手法を開発した。このマウスはナノ粒子を利用するがん治療法を開発するための研究に使用されていた。チャン教授と彼のチームによる研究はジャーナル『 Nature Communications 』の最新号に発表された(訳注1)。 ■Watch The Nano-Revolution: More than Human on CBC-TV's The Nature of Things ナノ粒子は、人間の髪の毛の幅の約 1,000分の1 以下の径を持つ粒子である(訳注:髪の毛の幅:約100,000 ナノメートル)。それらは日焼け止めから消費者電気製品まで広い範囲の製品中で見いだされる。 ある種のそしてあるレベルの暴露は人間の健康に有害かもしれないという、いくつかの証拠がある。しかし現在までのところ、暴露を測定することのむずかしさもひとつの要因ということもあり、暴露を健康影響に関連付けることは困難であった。 ”どのくらいのナノ粒子に暴露したかを決定するための方法はない”と CBC News カナダとのインタビューでチャンは述べた。 マウスのナノ粒子暴露を測定するひとつの方法があるが、それにはマウスを殺すことが必要である。マウスは解剖され、ナノ粒子が蓄積する肝臓や脾臓のような臓器が調べられることになる。 チャンの研究室の新たなテストは、げっ歯類による大きな改善であるとみなされるであろう。 それは単にマウスの皮膚に光をあてて、ナノ粒子のタイプに依存する色の変化又は蛍光性を調べるだけである。 より精度を高めるためには、マウスを健康に生かしたまま、皮膚の小さなサンプルを切り取り、様々な種類の化学物質の分析に数十年間使用されてきた誘導結合プラズマ質量分析法計と呼ばれる装置を通して測定することが可能であると、チャンは述べた。 ”そのことで、体内に蓄積しているナノ粒子の皮膚の中にある量とナノ粒子の種類がわかるであろう”と彼は述べた。 研究者らは、皮膚中のナノ粒子レベルは他の臓器にあるナノ粒子及びマウスに投与された用量に比例することを見出した。 ”あるレベルで暴露すると、皮膚に最初に現れる”とチャンは述べた。従って皮膚は暴露を反映することになる”。 このテストは、人が暴露した後に体内でナノ粒子に何が起きるのかを研究者が理解しようとするのに役立つであろう。 広く使用されているが、毒性はわかっていない 現在までのところ、研究者らはまだナノ粒子が体内に入り込むと有害なのかどうか理解しようとしている段階である。そして人がどの様なレベルでナノ粒子に暴露しているのかについて誰にもわからない。 それにもかかわらず、ワシントンに拠点を置くウイルソン・センターにより編集されたナノテクノロジー消費者製品目録には現在、日焼け止めから電子機器まで、世界中の 1,600 以上の消費者製品を含んでいる。 ■Silver nanoparticle use spurs U.S. consumer database ナノ粒子のサイズが小さいことが多くの特別で有用な特性をもたらす理由である。例えば、銀ナノ粒子はバクテリアを殺すので自己殺菌歯ブラシから防臭ソックスまで広い範囲の製品中で使用されている。二酸化亜鉛のの粒子は、他の物質より広い範囲の紫外線から皮膚を守るので、日焼け止め中で使用されている。 マウスと人間の肺の細胞での実験は、ナノ粒子は肺にダメージを与えることができることを示している。そして今月の初めに、『American Journal of Industrial Medicine』誌に掲載されたひとつの論文(訳注2)は、ニッケル・ナノ粒子粉末に暴露した後、過敏症及び皮膚の発疹や鼻づまりのような症状を発症した作業者の事例を報告した。 チャンの研究で使用されたマウスは、金ナノ粒子及び、亜鉛、硫黄、カドミウム、及びセレンからなる量子ドットと呼ばれるナノ粒子を顕著な皮膚変化を引き起こすに十分な用量で注射されたが、明白な有害影響を示さなかった。しかし、研究者らは長期的な影響は起こり得るであろうこと、及び他の種類のナノ粒子は異なる影響を持つかもしれないことに言及した。 彼らは、皮膚テスト結果が、異なる種類のナノ粒子により及び注射以外の暴露経路により、どのように影響を受けるかを調べるために、さらなる研究を勧告した。 訳注1 Nanoparticle exposure in animals can be visualized in the skin and analysed via skin biopsy Edward A. Sykes, Qin Dai, Kim M. Tsoi, David M. Hwang & Warren C. W. Chan Nature Communications 5, Article number: 3796 doi:10.1038/ncomms4796 Received 26 August 2013 Accepted 02 April 2014 Published 13 May 2014 訳注2 Occupational handling of nickel nanoparticles: A case report W. Shane Journeay PhD, MD and Rose H. Goldman MD, MPH Wiley Online Library Article first published online: 8 MAY 2014 DOI: 10.1002/ajim.22344 |