ミズーリ大学 2013年8月22日
有害なナノ粒子(ナノ銀)は、人の食物供給系に
入り込むかもしれないとミズーリ大学の研究者らが報告
科学者らは食物中の危険なナノ粒子を検出する新たな方法を開発

情報源:University of Missouri News Bureau Aug. 22, 2013
Toxic Nanoparticles Might be Entering Human Food Supply, MU Study Finds
Scientists develop new way to detect threatening nanoparticles in food
By Diamond Dixon
http://munews.missouri.edu/news-releases/2013/0822-
toxic-nanoparticles-might-be-entering-human-food-supply-mu-study-finds/


訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/index.html
掲載日:2013年9月3日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/nano/news/130822_MU_nano_silver_food.html


【コロンビア、ミズーリ州】 過去数年間、水処理、食品容器包装、農薬、化粧品、その他の産業用途での使用が増大している。例えば、農民は、銀ナノ粒子を農薬として使用してきたが、それは銀ナノ粒子が有害な微生物の成長を抑制する能力があるからである。しかし、これらの粒子が人と環境に潜在的な健康リスクを及ぼすかもしれないという懸念が高まっている。この新たな研究でミズーリ大学の研究者らは、新鮮な食材やその他の食品中の銀ナノ粒子を検出する信頼性のある方法を開発した。

 ”市場にある1,000以上の製品がナノテクノロジーに基づく製品である”とミズーリ大学の農業、食料、天然資源学部の食物科学准教授メングシ・リンは述べた。”我々はナノ粒子の毒性について知っていないのだから、このことには懸念がある。我々の目標は、食物及び食品中のこれらのナノ粒子を検出し、特定し、定量化することであり、できるだけ早く、それらの毒性を調査することである”。

 リンと、ミズーリ大学の科学者アズリン・ムスターファ及びボンコシュ・バーダナブフティを含む彼女の同僚らは、銀ナノ粒子の梨の皮の残留と浸透を調べた。最初に、科学者らは、農薬の使用と同様に梨を銀ナノ粒子溶液に浸した。その後、何度も梨を洗い、すすいだ。その結果は、ナノ粒子による処置とすすぎを行ってから4日経ってもの銀ナノ粒子はまだ皮に残留しており、より小さな粒子は皮を浸透し、梨の果肉に達していることを示した。

 ”人が銀ナノ粒子を摂取すると体内に広がる可能性があるので、ナノ粒子の浸透は消費者にとって危険である”とリンは述べた。 ”したがって、サイズの小さなナノ粒子は、サイズの大きな同一物質よりも消費者にとって有害である”。

 摂取するとナノ粒子は血液とリンパ系に入り込み、体中を巡り、脾臓、脳、肝臓、そして心臓のような潜在的に感受性の高い部位に到達する。

 他の種類のナノ粒子を使用する傾向も増えており、味わい、補助栄養の補給強化、食品の長期の鮮度維持、食品色の高い明度などによる食品産業の革命が起きている。しかし、研究者らは銀ナノ粒子の使用が人の体を損なうことを懸念している。

 ”この研究は、食用作物やその他の農産物中の銀ナノ粒子による汚染を検出するための有望なアプローチを提供するものである”とリンは述べた。

 リンの研究チームのメンバーにはまた、食物科学の大学院生であるゾン・ザンもいる。この研究は、 Agricultural and Food Chemistry誌に発表された。Detection of Engineered Silver Nanoparticle Contamination in Pears


訳注:オリジナル論文のAbstractの一部を紹介します。

Journal of Agricultural and Food Chemistry October 19, 2012
Detection of Engineered Silver Nanoparticle Contamination in Pears
http://pubs.acs.org/doi/abs/10.1021/jf303423q
Zhong Zhang †, Fanbin Kong ‡, Bongkosh Vardhanabhuti †, Azlin Mustapha †, and Mengshi Lin *†
† Food Science Program, Division of Food Systems & Bioengineering, University of Missouri, Columbia, Missouri 65211-5160, United States
‡ Department of Food Science & Technology, University of Georgia, Athens, Georgia 30602-7610, United States
J. Agric. Food Chem., 2012, 60 (43), pp 10762?10767
DOI: 10.1021/jf303423q
Publication Date (Web): October 19, 2012

Ag_NPs_on_pier.gif(64428 byte)
 この研究では、梨の銀ナノ粒子汚染が次のような技術の組み合わせにより検出され、特性化され、定量化された。すなわち、透過型電子顕微鏡(TEM)、走査型電子顕微鏡(SEM)、エネルギー分散型分光計(EDS)、及び誘導結合プラズマ発光分光分析法(ICP-OES)などの組合わせである。
 梨のサンプルは、異なるふたつのサイズ(直径20nmと70nm)の銀ナノ粒子で処置され、異なる期間、保管された。
 誘導結合プラズマ発光分光分析法(ICP-OES)による梨サンプル中の銀ナノ粒子の定量化の結果は、spiked values と recovered values との間によい直線関係(R2 = 0.983)があることを示している。
 径20nmと70nm両方のナノ粒子の残留は、処置後水ですすいだでから4日でもまだ検出された。
 浸透調査は、20nm銀ナノ粒子は処置4日後、梨の皮と果肉を浸透することを明らかにしたが、一方、70nmの銀ナノ粒子にはこの現象は観察されなかった。
 これらの結果は、技術の組合わせは、農産物中の工業ナノ粒子検出、特性化、定量化について正確な結果を提供することを実証している。



化学物質問題市民研究会
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