Science Nordic 2012年3月22日
ナノ粒子 食物連鎖を通じて魚に影響を与える

情報源:Science Nordic March 22, 2012
Nanoparticles impact fish through the food chain
By: Asle Ronning
http://sciencenordic.com/nanoparticles-impact-fish-through-food-chain

オリジナル論文:PLoA one February 22, 2012
Food Chain Transport of Nanoparticles Affects Behaviour and Fat Metabolism in Fish
Tommy Cedervall1, Lars-Anders Hansson2, Mercy Lard2*, Birgitta Frohm1, Sara Linse1*
1 Chemical Centre, Department of Biochemistry and Structural Biology, Lund University, Lund, Sweden, 2 Department of Biology/Aquatic Ecology, Lund University, Lund, Sweden

http://www.plosone.org/article/info%3Adoi%2F10.1371%2Fjournal.pone.0032254

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/index.html
掲載日:2012年3月28日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/nano/news/120322_Nano_impact_fish_food_chain.html


 新たなスウェーデンの研究が、ナノ粒子は食物連鎖の中で残留することができることを示している。

 ナノ粒子を含む水槽の中で成長させた藻類は粒ナノ子を吸収した。その後、藻類は動物プランクトンを与えられ、最終的にそのプランクトンは魚に与えられた。
 動物プランクトンを与えられた魚の行動に変化があった。魚は単純に食欲を失った。科学者らは、それはナノ粒子のせいであるとしている。

プランクトンを食べなくなる
 ”魚は食物を食べたり求めることをしなくなった”と、スウェーデンにあるルンド大学の研究者トミー・セダーバルは述べている。科学者らは、魚が動物プランクトンを口の中や外で泳がせて、食べようとしないことを観察した。
 ジャーナル PLoS One に掲載された記事によれば、適度の餌を与えると、ナノ粒子を含む動物プランクトンに曝露していた魚の体重は減らなかった。

代謝を妨げる
 科学者らは、血流を通じて脂肪を運ぶために魚が必要とするある種のタンパク質にナノ粒子は取り付くからであると考えている。
 彼等は魚の体内での脂肪の燃焼が減少する明確な兆候を見たが、そのことはこの仮説を支持するものである。
 DDT、重金属、ホルモン抑制物質などの有害環境物質で見られたように、これらの有害物質は、食物連鎖中に入り込み、ピラミッドの頂点にある動物に蓄積することが前から知られている。

ナノの安全性
研究報告書の説明図:藻類はナノ粒子を含む水槽の中で成長し、ナノ粒子(黄緑色)を吸収した。この藻類は動物プランクトンを与えられ、最終的にそのプランクトンは魚に与えられた。(Illustration: Cedervall et. al. in PLoS ONE)

 このスウェーデンの科学者らは、ナノの安全性の分野で研究活動をしている。彼等はどの種類のナノ粒子が危険であり、どれがそうではないかをマップで示している。
 ”我々の研究の目標は有害ではないナノ粒子をどのように作るかを見つけることである”と・セダーバルは述べている。
 彼等が今回使用した手法は、工業製品中で使用される前にナノ粒子をテストするひとつの方法になる可能性がある。

規制がない
 ナノ粒子は、環境への有害影響を防止するための法令や規制を制定したいと望む当局の頭痛の種である。様々なナノ粒子の潜在的な危険性という話になると、テスト手法の欠如が問題となる。
 ノルウェー水研究所(NIVA)の研究者エイビンド・ファーメンによれば、これは大問題でる。魚類への環境的脅威に関する専門家であるファーメンは、ナノ粒子が環境にダメージを与えるのを防ぐためにナノ粒子の使用を規制するためのシステムを確立することが現在、重要であると考えている。

一連の取り組み
 ナノ粒子の環境影響の研究は、それが小さなサイズであるということが問題なのか、あるいは最も重要な化学的特性が問題なのかに焦点を当ててきた。
 ファーメンは、最近数年間の結果は、ナノ粒子の一般的な影響というものはないことを示しているのではないかと考えている。したがって、スウェーデンの科学者らが魚に使用した手法が汎用的に使用することができるという点については疑問を持っている。
 ”ナノ粒子は非常に多様なので、ひとつのテストが全てに適用できるかどうか確信がない”と彼は述べている。



化学物質問題市民研究会
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