コーネル クロニクル オンライン 2012年2月16日
食品やビタミン剤に含まれるナノ粒子が
ヒトの健康を害するおそれありと研究者たちが警告


情報源:Cornell Chronicle Online, Feb. 16, 2012
Nanoparticles in Food, Vitamins Could Harm Human Health, Researchers Warn
By Anne Ju
http://www.news.cornell.edu/stories/Feb12/nanoparticlesHarmful.html

訳:野口知美 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/index.html
掲載日:2012年2月26日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/nano/news/120216_Cornell_nanoparticles_in_food.html


 食品や医薬品に含まれる何十億もの工業ナノ粒子をヒトは毎日摂取しているが、こうした工業ナノ粒子は従来考えられていたよりも健康に害を及ぼす可能性があるとコーネル大学の最新研究は警告している。

 Michael Shuler、化学工学教授 Samuel B. Eckert、医用生体工学教授 James McCormickとMarsha McCormickが率いる共同研究で、どの程度の量のポリスチレンナノ粒子―食品添加物からビタミン剤までのさまざまな物質に見られる、FDA(食品医薬品局)に認可された一般的な素材―が、どの程度ニワトリが必須栄養素の鉄を細胞に吸収するのに影響を及ぼすかについての研究が行なわれた。

 この研究結果は2月12日、オンライン雑誌「ネーチャーナノテクノロジー」の中で報告された。

 この研究によれば、ポリスチレンナノ粒子への強い短期曝露によって初めのうちは鉄の吸収が阻害されていたが、曝露が長期に及ぶと腸細胞の構造変化が起こり、鉄吸収の調節に改善が見られるようになった。

 研究者たちはペトリ皿中のヒト腸細胞と生きたニワトリを使用してナノ粒子への急性曝露及び慢性曝露の調査を行い、整合性のある結果を報告した。ニワトリを選んだのは、ニワトリなどの動物はヒトと同じように鉄を体内に吸収し、またヒトと同じく微量栄養素欠乏に反応しやすいからである、とこの論文の第一著者であり元コーネル大学大学院生のGretchen Mahlerは説明した。彼女は2008年に博士号を取得し、現在は博士研究員をしている。

 研究者たちは、食用として安全であると一般的に考えられている市販の50ナノメートルのカルボキシル基を有するポリスチレン粒子を使用した。そして、摂取後数分から数時間の急性曝露のあと、試験管内の細胞及びニワトリ双方の鉄吸収が減少するということを発見した。

 しかし、1キロ当たり2ミリグラムの曝露を2週間続けたあと―よりゆっくりと慢性的に摂取される―、腸絨毛の構造が変化し、表面積が増加し始めた。これは事実上の生理的リモデリングであり、鉄吸収の増加につながった。

 「これは思いもよらない生理学的反応であった」とMahlerは述べた。

 Shulerは、この腸絨毛のリモデリングは身体が困難に適応していることを示すのだから、ある意味有益なことである、と指摘した。しかし、広く研究され安全だと考えられている粒子がいかにして辛うじて気づくほどの変化をもたらし、有害化合物などの過剰吸収といったことにつながり得るかを浮き彫りにすることになったのである。

 「ナノ粒子へのヒト曝露は増え続けるばかりである」とShulerは続けて言った。

 「ナノ粒子は数多くのさまざまな方法でわれわれの環境に入り込んできている。全体的に見ればナノ粒子は有害ではないといくらか確信してはいるが、より捉えにくい影響を懸念しなければならなくなる可能性もある」。

 この論文に名前が挙げられているのは、コーネル大学の共著者であり医用生体工学の研究員のMandy Esch、ロバート・W・ホリー農業衛生センターの研究員のElad Tako、生体医科学の准教授のTeresa Southard、医用生体工学の上級講師のShivaun Archer、米国農務省農業研究局の上席研究員であり食品科学科の客員准教授のRaymond Glahnである。この研究に対する支援を行ったのは、全米科学財団、ニューヨーク州科学・技術・学術研究財団、陸軍工兵隊、米国農務省である。



化学物質問題市民研究会
トップページに戻る