カリフォルニア大学サンフランシスコ校 2011年5月4日
カリフォルニアにおけるナノ物質による
潜在的な健康リスクに対応するための政策提言−概要


情報源:UCSF Program on Reproductive Health and the Environment
May 4,2011
Summary of Policy Recommendations for Addressing Potential Health Risks from Nanomaterials in California
http://prhe.ucsf.edu/prhe/nanodocument.html

紹介:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2011年5月16日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/nano/
news/110504_UCFS_Recommendation_Health_Risks_from_Nano.html


カリフォルニア大学サンフランシスコ校−生殖健康と環境に関するプログラムによる報告書

 カリフォルニア大学サンフランシスコ校−生殖健康と環境に関するプログラムは、『カリフォルニアにおけるナノ物質による潜在的な健康リスクに対応するための政策提言(RECOMMENDATIONS FOR ADDRESSING POTENTIAL HEALTH RISKS FROM NANOMATERIALS IN CALIFORNIA)』の発行を発表した。この報告書は、ナノ物質による潜在的な健康リスクに対応するための勧告を、カリフォルニア環境保護局(CalEPA)の環境健康ハザード評価室(OEHHA)とカリフォルニア州に向けたものでる。

 かつては野心的な目標であったナノテククノロジーも今日、経済分野で急速に成長しており、2014年までに世界の市場の15%を占めるであろうと予測されている。ナノテクノロジーは、極度に小さなスケールで物質を取り扱い、作りだす。サイズが小さいので、ナノ物質は独自の物理的及び科学的特性を持ち、そのことが独自の機能を生み出す。

 しかし、これらの独自の機能を生み出すまさにその同じ特性がまた、工業用化学物質に対応する既存の公共政策が、工業用ナノ物質とその応用のもたらす潜在的な健康影響に対して十分であるかどうかについての懸念を提起している。市場においてナノ物質の使用が増大し、その結果、人々の曝露が増大しているので、ナノ物質による潜在的な健康リスクに対応した我々のアプローチを強化することが重要な時期となった。

 この必要を満たすために、カリフォルニア環境健康ハザード評価室(OEHHA)は、カリフォルニア大学サンフランシスコ校に委託してこの報告書を作成したが、それはカリフォルニア州に、ナノ物質、潜在的曝露、及び人間の健康リスクについての概要、及び、ナノ物質からの潜在的な健康ハザードとリスクに対応するための勧告を提供するものである。

 効果的な健康保護は、ナノテク産業の発展を導くために必要である。この報告書は次のことを行なっている。

  • OEHHA の既存の規制構造の下に実施できる勧告
    • ナノ物質の特性化
    • ナノ物質の曝露源と曝露の特定
    • 健康影響の優先化と特性化
    • 政府機関、産業、NGO、及び公衆の間での情報伝達

  • OEHHAの所掌範囲外に関する勧告が、ナノ物質の潜在的な健康リスクに完全に対応するために必要とされる。これらの多くは、法的な変更が求められるように見える。これらの勧告は、一義的には、市場で用いられているナノ物質への潜在的な曝露と健康ハザードに関する情報を求めることに力をいれている。
 カリフォルニア州は進歩的な化学物質政策におけるリーダーであり、ナノテクノロジーという成長分野は、カリフォルニア州が公衆健康と経済成長を同時に強化する革新的な技術を政策を開発するための新たな機会を与えるものである。

既存の規制構造の下で達成することができる OEHHA のためのナノ物質による健康リスクに目を向けた勧告
  1. 特定するために用いことができるナノ物質の定義を開発すること
  2. リスクの特性化のための優先度の高い特性を特定し定義すること
  3. 従来の又は独自の特性に従い、定義し、記述し、分類するための特性を開発すること
  4. 公衆がアクセスできるナノ物質の供給と製品に関するクリアリングハウスと目録を確立すること
  5. 環境媒体中及び人のバイオモニタリングを通じてナノ物質を監視するための手法を特定し開発すること
  6. 環境媒体及び生物学的媒体の監視を通じることを含んで、ナノ物質の運命と移動に関する情報を収集すること
  7. 残留性があり、生物蓄積し、有害な(PBT)ナノ物質を特定し対応することに注力すること
  8. ナノ物質曝露からの潜在的な有害健康影響を評価するために、既存の他の化学物質の有害性の特徴と毒性学的環境的健康関連エンドポイントを使用すること
  9. 既存のリスク評価ガイドラインがナノ物質を十分にカバーするかどうかを決定するために、必要に応じてナノ特有のアプローチを調整し又は取り入れながら、それらのガイドラインを評価すること
  10. 毒性テストを現代化するために現状の取り組みにナノ物質を統合すること
  11. ナノテクノロジーとナノ物質の使用、応用、毒性に関する関連データと情報を共有するために、他の政府や研究者らとの関係を作り上げ、維持すること
  12. 連邦政府及び州の機関、他国政府、産業界、NGOとの間の調整を改善し、コミュニケーションを監視すること
  13. 政策決定プロセスの間に公衆が意見を述べ、コメントをする機会を継続すること
現在は OEHHA の所掌範囲外であるナノ物質からの潜在的な健康リスクに対応するために成功をもたらすアプローチを支援するための勧告
  1. どこで、どのようなナノ物質が製造されているのか、その量はどのくらいか、新規製品か、既存製品かについての開示を求めること
  2. 残留性、生物蓄積性、有害性(PBT)があるナノ物質を特定することができる特性を報告するよう求めること。他のPBTs物質へのアプローチと同じ使用を廃止すること。
  3. ナノ物質の使用と便益と、それらの毒性と曝露の可能性との、バランスがとれた政策と規制を決定するための枠組みを開発すること
  4. 新規及び既存の消費者製品中のナノ物質の放出と曝露の可能性をテストすること求めること
  5. 労働者、研究者、ナノ物質の川下ユーザーを保護し、教育する取り組みを強化すること
  6. 製造労働者及びその他の労働者へのリスク、消費者と幼児のような脆弱な集団を含んで川下ユーザーへのリスクを評価するために、できれば上市前に、必要があれば上市後にも、十分な毒性テストを実施することを求めること
  7. ナノ物質を含む製品の表示を求める表示システムを実施すること
  8. データのギャップを埋めるための目標を定めたナノ特有の研究への資金助成と支援を増大すること
  9. 発生源、曝露経路、内部分布を含んで、ナノ物質の生物学的運命、移動、分布に関する研究を実施し、この研究を曝露の可能性に関して収集された情報と統合すること

関連情報
UCSF's Program on Reproductive Health and the Environment Publishes Recommendations for Addressing Health Risks from Nanomaterials in California



化学物質問題市民研究会
トップページに戻る