Science of the Total Environment 2014年5月
ナノ複合材料からのナノ物質放出の
評価のための概念的枠組みの開発:
環境的及び毒性学的影響

(アブストラクト、毒性学的テスト及び結論)

情報源:Science of the Total Environment 473-474 (2014) 9-19
Development of a conceptual framework for evaluation of nanomaterials release
from nanocomposites: Environmental and toxicological implications
James Ging, Raul Tejerina-Anton, Girish Ramakrishnan, Mark Nielsen,
KyleMurphy, Justin M. Gorham, Tinh Nguyen, Alexander Orlov

http://www.nist.gov/customcf/get_pdf.cfm?pub_id=914575

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2014年5月25日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/nano/journal/
2014_STE_nanomaterials_release_from_nanocomposites.html

 アブストラクト
 ナノ物質は自由分散状態では潜在的に有害(ハザード)であると考えらえているが、重合体母材(ポリマーマトリックス)に埋め込まれると安全であるとしばしば考えられている。しかし、このパラダイム(訳注:物の見方や捉え方)を確認する体系的な研究は十分ではない。
 我々のデータは、環境条件、特に紫外線(UV)への暴露のために、ナノ複合材料からのナノ物質放出の複数のメカニズムが存在する可能性があることを示している。重合体母材の分解と放出の可能性は、充填ナノ物質(ナノフィラー)と重合体母材の特性、及び紫外線、湿気、機械的ストレス等の要素のような環境暴露の特性に依存するが、我々が知る限り、これらすべての影響に目を向けた体系的な研究はない。
 我々は、環境的諸条件に暴露させたナノ複合体材料の安定性の初期研究をここに示す。そこでは、複合重合体を含むカーボンナノチューブ(CNT)が、様々な分光技術や顕微鏡技術により評価された。
 この研究は、カーボンチューブ(CNT)重合ナノ複合材料の紫外線、湿気、機械的ダメージのような要素を含んで様々な分解メカニズムを検討している。ショウジョウバエのインビボでの摂取研究は、自由アミン機能化 CNTs によるどのような用量でのテストでも生存率を減少させたが、一方、これらの CNTs がエボキシ樹脂に埋め込まれた場合には毒性は示されなかった。
 ナノ複合材料の安全性という観点で新たなパラダイムを開発することに加えて、この研究の結果は次世代のCNT含有製品のための安全設計戦略に関する勧告を導き出すことができる。


 3.3. 毒性学的テスト

 実験のセクションに記述されたプロトコールで、我々は自由MWCNT(多層カーボンナノチューブ)又はMWCNT−ナノ複合材料の摂取の影響はハエの発達速度に影響を与えないことを見つけた (not shown)。しかし我々は生存率への影響を見つけ、その結果は Fig. 8に示されている。自由アミノCNTsを摂取したハエは、テストされたどの用量でも有意に生存率が低減した。予測されたように、アミノCNTsはナノ複合材料に埋め込まれた時には有害ではなかった。エポキシ埋め込みは、CNT の有害性に最も関連する CNTsの大きなアスペクト比(長さと径の比率)を無効にする(Ali-Boucetta et al., 2011)。自由単純(plain)CNTs に対する自由アミノCNTsのより大きな有害性は、アミノ基が細胞によるCNT摂取を促進することに帰することができる。コントロールサンプルに比べていくつかのCNTs暴露サンプルの生存率の増大は、植物モデルにおいて観察されたCNT暴露の有益な影響にまさる(Tripathi et al., 2011)が、発表されたこの現象のメカニズムと我々の実験データは不明確である。


 5. 結論
 この研究で我々は、環境的に妥当な天候条件の下に CNTs を含むエポキシ複合材料の安定性を評価した。我々は、湿気と紫外線の組み合わせ影響の下に複合材料が顕著な分解を示し、潜在的な環境放出を伴う重合体母材からの部分的なCNT 脱保護(deprotection)をもたらすことをを発見した。光学的及び顕微鏡的データの評価に基づき、我々は様々な環境的放出及び毒性学的なシナリオに関するひとつの概念的な枠組みを開発した。
 インビボでのショウジョウバエのモデルに基づく、重合体母材に埋め込まれたナノ物質への暴露への影響に関する予備的調査では毒性の有意な増大は検出されなかったが、このことは剥がされたサンプルから集められたCNTs の大部分はまだ母材中に被包されたままであったという事実によるということができるかもしれない。
 このシナリオは、自由ナノチューブが検証された3.3章で記述されているものとは非常に異なる。しかし、ある条件の下では紫外線と機械的擦過の組み合わせ暴露の下では、もっと明白な放出をもたらす可能性がある。したがって、重合複合材料から放出される CNTs の潜在的な毒性学的影響を評価するために、更なる研究が必要である。

 この記事への補足的データは下記からオンラインで入手できる。
 http://www.nist.gov/customcf/get_pdf.cfm?pub_id=914575


訳注:関連情報
Chemical Watch 22 May 2014 CNTs may break free from polymers
Environmental/health effects possible, but release rate would be slow
http://chemicalwatch.com/19881/carbon-nanotubes-may-break-free-from-polymers



化学物質問題市民研究会
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