2011年6月16日欧州連合理事会発表
ナノ物質に関連するリスク
オランダ代表団の意見

情報源:COUNCIL OF THE EUROPEAN UNION Brussels, 16 June 2011
Risks associated with nanomaterials
- Information from the Netherlands delegation
http://register.consilium.europa.eu/pdf/en/11/st11/st11626.en11.pdf

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2011年7月12日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/nano/europe/110616_Netherlands_delegation.html


 ナノテクノロジーは、非常に広範な領域での使用を意図して、極めて小さな粒子の製造に関わる技術である。それは、医療から太陽電池を含む広い範囲の用途で大きな潜在能力を持つ先端技術である。さらに、様々なEU産業はこのナノテク分野のリーダーである。

 同時に、いくつかのナノ物質のナノ構造はヒト及び又は環境健康にリスクを及ぼすかもしれないことを明確に示している。これらは、基になる物質の特性に関連するリスクとは異なる。現在のEU法令と予防原則の下に、産業は、労働者及び消費者に対しその製品の安全性について第一義的な責任を有する。しかし、現在の法令は化粧品のような製品中で使用される化学物質のハザードを評価するように設計されているが、ナノ工学的な粒子に関連する特定のはハザードを評価するように計画されていない。主要な問題は、一般的に受け入れられる何がナノ物質を構成するのかの定義が欠如していることである。

 化学物質に関する法令は、高いレベルのヒト健康と環境の保護を提供することを目指し、さらに産業に彼等が製造し、使用し、市場に出す物質が安全であることを確実にする義務を課している。しかし、現在、多くの製品で、ナノ物質の安全性とナノ特有のリスクの適切な評価が行われることなく、ナノ物質が使用されている。毎日、新しいナノ物質が市場に出ている現状を鑑みると、この問題に対応することは緊急の課題である。

 欧州委員会は、EU環境法令によるナノ物質の範囲に関するワークショップを組織した。これは正しい方向への第一歩である。オランダを含むいくつかの評価は、範囲はナノ物質に関連する潜在的なリスクを評価し、管理するためにはまだ完全には十分でないことを示している。既存のEU法令は、ナノ物質の潜在的なリスクへのヒトと環境の長期の曝露を適切に防止することはできない。このことは、遅かれ早かれ、ナノ物質が環境的又は健康的問題に関連することがもっと明らかになるであろう。公衆の激しい抗議の結果、全てのナノ物質の評判と使用に有害影響をもたらし、革新的で潜在的に儲かる企業、及びそれが作り出す雇用に脅威を及ぼすであろう。

 いくつかの研究が行なわれ、現在も実施中であり、その多くは欧州委員会のナノ物質の安全性に関する取り組みである。たとえ、科学が常に決定的でなくても、ナノ物質に特に関連するリスクの評価と管理に関する措置がとられることは火急を要することである。

 第一の本質的なステップは、可能な限り多くのナノ特有のリスクを有する物質を包含する広範に適用可能な定義に関して合意に達することである。第二のステップは、もし特定のナノ物質が有害であるということが判明したなら、確実に追跡し、迅速で適切な対応を可能とすることである。ナノスケールの特徴をもったナノ物質と製品の義務的な登録はこの目的に資するであろうし、この方法で収集されたデータはまた、ヒトと環境に対する曝露シナリオを特定するのに役立つであろう。これらは第三のステップで用いられるであろう。すなわち、ナノ物質とナノスケールの特徴をもった製品のための適切なリスク評価システムと、必要なら、リスク管理措置の開発である。

 これらの全てのステップは本質的に重要である。もし、欧州共同体(Community)としての行動が起こされず、加盟各国が独自にこれらのステップに対応するなら、産業は、ナノ物質の調和の取れない異なる定義、異なる物質データベース、余分な管理コスト、及びある物質又は製品の市場制限の可能性に直面するであろう。しかし共同体としての措置が取られないなら、健康と環境を守るために、加盟国の取り組みが必要かも知れない。

 我々の意見としては、欧州委員会がこの取り組みを行なう立場にあり、予防原則とEU革新政策の両方に一致したナノ物質のリスク評価と管理に関する首尾一貫した法的枠組みを確実にするために、上述したようなEU政策を提案すべきである。

 オランダは、欧州委員会が可能な限り早急に適切な措置を取るよう要請する。


(訳注):これはオランダ政府が2011年6月21日に開催された欧州連合環境理事会で提出した意見書である。
Nanotechnology Law Blog/Netherlands Delegation Notes Risks Associated with Nanomaterials
Posted on June 24, 2011 by Lynn L. Bergeson




化学物質問題市民研究会
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