欧州連合理事会事務局 2017年6月19日
ウイーン宣言
第11回ナノ規制当局対話の結論と勧告

(ウイーン 2017年3月29−30日) ルクセンブルグ、オーストリア、及びドイツ代表団からの情報

情報源:General Secretariat of the Council,
19 June 2017
Vienna Declaration: Conclusions and Recommendations adopted
as a result of the 11th Nano-Authorities Dialogue (Vienna, 29-30 March 2017)
- Information from the Luxembourg, Austrian and German delegations -
http://data.consilium.europa.eu/doc/document/
ST-10156-2017-INIT/en/pdf


訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会
掲載日:2017年7月20日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/nano/eu/
170329-30_Vienna_Declaration_on_Nanotechnology.html

 オーストリア、ドイツ、リヒテンシュタイン、ルクセンブルグ、及びスイスのナノ規制当局は長年、ナノテクノロジーの分野で首尾よく連携してきた。2017年3月29〜30日、第11回ナノ規制当局対話がウイーンで開催された。この会議で、現状に関する結論と2020年までのこの重要な技術の管理に関する勧告が採択された(ウイーン宣言)。

 ナノテクノロジーは、生活と経済の広範な領域で新たな機会を開く可能性を持っている。その応用は多方面にわたり、医学、電子工学、自動車技術から消費者製品、環境技術に及ぶ。しかし、高いレベルの人の健康と環境の保護を確実にすることは、ナノテクノロジーにより提供される機会の長期的な持続可能な利用のための本質的な前提条件である。

  循環型経済(circular economy)(訳注1)を背景にして、製品の全ライフサイクルを考慮することは、ますます重要になっている。安全のための要(かなめ)は、しばしばライフサイクルの初めに、すなわち、持続可能な製品設計と製造プロセスにあるとされる。世界規模のサプライチェーンの高い複雑性と物質の流れは将来の課題を提起している。

 我々は今日、どのような状況にいるのであろうか? ナノ物質の環境と健康の面についての政策的議論は、その揺籃期から大きく成長している。国家及び欧州レベルで数百万ユーロ(数億円)規模の様々な公的資金が安全とリスクの研究に投資されている。このことは安全性の分野における知識のギャップを埋めることに、そしてある程度、規制条項の更なる開発に、貢献してきた。

 多くのことがすでに達成されたが、まださらなる行動が必要性とされている。”ナノの持続可能性(Sustai-NANO-bility)”の開発を可能にするために、ナノテクノロジーに向けた持続可能なアプローチを促進する措置を推し進めるべきである。特に次の措置が2020年までに取られるべきである。
  • ナノ物質によりもたらされる潜在的な健康と環境へのリスクを評価するために、統一され確実なテスト及び検出技術、測定手法、及び基準が不可欠である。OECD によりすでに取り扱われている要素は、法的に拘束力のあるやり方で速やかに適用される必要がある。これらの技術と方法論の開発、及びナノ物質の特定の特性に対するそれらの適合は、欧州レベルでのさらなる資源の導入を必要とするであろう。

  • EU の化学物質規則 REACH を含んで、法的枠組みへのナノ特定の適合に関する作業は 2020年までに完了されなくてはならない。ナノ物質の工業的製造の開始以来、妥当な研究が職場における安全問題に注力してきた。様々な EU 機関(欧州化学物質庁や欧州労働安全衛生機関など)の連携の必要性は明確に述べられてきたが、様々な方法論的アプローチについての議論が、必要な予防的及び保護的措置の実施を送らせるようなことがあってはならない。

  • ナノ物質を含有する製品は、単に製造され、加工され、またそれらの使用後は回収又は処分されるだけでなく、環境にも入り込むかもしれない。全ライフサイクルを考慮する必要性は明らかである。したがって、研究プログラム及び規制の手段は全ライフサイクルに目を向ける必要がある。

  • ナノ物質を含有する製品に関する情報を収集するための欧州ツールの創設を欧州化学物質庁に委任するという欧州委員会の決定は歓迎される(訳注2)。この監視サイトは欧州市場に出ているナノ物質のタイプ、量、及び用途に関して透明性を確実にすべきである。

  • 欧州レベル及び国際レベルにおけるナノ物質のデータ交換、特に毒性学、環境監視、及び技術評価の分野、に関する既存の協力は評価に値するものであり、今後も強化されるべきである。


訳注1:循環型経済 (circular economy) 訳注2:欧州ナノ情報収集サイト('Nano-observatory')


化学物質問題市民研究会
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