欧州委員会/BiPRO最終報告書 2013年1月14日
協力 Oeko 研究所 ナノ物質のためにREACH要求を変更するための 可能性あるオプションの産業、消費者、人の健康、 及び環境に及ぼす影響の検証と評価 エグゼクティブ・サマリー 情報源:European Commission, Joint Research Centre Institute for Health and Consumer Protection . Ispra/Italy BiPRO Final Report 14 January 2013 In cooperation with Oeko Institut e.V. Examination and assessment of consequences for industry, consumers, human health and the environment of possible options for changing the REACH requirements for nanomaterials http://ec.europa.eu/environment/chemicals/nanotech/pdf/Final_Report.pdf 訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会) 掲載日:2013年6月15日 このページへのリンク: http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/nano/eu/130114_BiPRO_Report_REACH_for_Nano.html エグゼクティブ・サマリー
このプロジェクト”REACH登録書類一式の中でのナノ物質及び利用可能な情報の妥当性の評価に関する科学的技術支援(ナノ支援)”の目的は、選択されたREACH登録書類一式の中でナノ物質のリスクと安全性がどのように評価(assess)されたかを評価(evaluate)し、これに基づき、ナノ物質によりよく対応するために、現在のREACH規定に対する修正のための可能性あるオプション一式を開発することである。最初の作業結果はすでに2012年3月に発表されている。 この報告書の基礎となる現在の作業の狙いは、もし、REACHの修正のためのこれらのオプションが実施された場合の、産業、消費者、人の健康、及び環境に及ぼす結果の検証と評価を実施することである。 この評価のために適用された方法論の重要な要素は下記を含む:
9つのオプションを実施するための合計コストは、全ての関連する会社の2022年までの取り組みの累積額として、1,100万ユーロ(13億7,500万円)から7,300万ユーロ(91億2,500万円)の範囲になる。合計コストの単一オプションへの分割は取り組みが大規模か中規模化により大きな相違を示し、従って大規模又は中規模コスト、及びつ追加コストなし又はほとんどないオプションとなる。
評価されたコストは、REACH規則の規定にあるように、広範なグループ化と 定性的みなし代用 (read-across)アプローチを考慮に入れている(訳注1)。このようなアプローチをしなければ、最終コストは劇的に増加して、1億ユーロ(125億円)から6億ユーロ(750億円)に跳ね上がるであろう。 訳注1:REACH 付属書 I−序論 0.4 物質評価及び化学物質安全性報告書の作成のための一般的な規定 物理化学的、毒性学的及び生態毒性学的な特性が類似しているか、又は構造的な類似性 の結果として、規則的なパターンに従いやすい物質は、物質のグループ又は“カテゴリー” として考えることができる。1 つの物質について実施する化学物質安全性評価が、他の物 質又は物質のグループ若しくは“カテゴリー”から生じるリスクを適切に管理しているこ とを評価し、文書化するのに十分であると製造者又は輸入者が考える場合には、他の物質 又は物質のグループ又は“カテゴリー”に対してその化学物質安全性評価を使用すること ができる。製造者又は輸入者は、そのことに対する正当な根拠を提供しなければならない。 2018年以降のナノ物質の登録もまたコストを伴うであろう。しかし、これらのコストは、影響を受けるナノ物質の製造量を正確に予測できないので、定量化できない。登録者は、ナノ物質の登録をしているうちに得られる経験から教訓を得て、その後のナノ物質の効率的な登録に役立てるであろうことは、合理的に主張することができる。さらに、これまでに更新された、あるいは新たなテスト手法は、特にナノ物質の特性に対応することに利用できることが期待される。 金銭的な観点からの9つのオプションの総利益の定量化は、多くの不確実性により妨げられる。健康への利益について、2042年までに平均1億6,500万ユーロ(8,300万ユーロ〜2億4,800万ユーロ)の累積節約額が計算される。潜在期間があるので、健康利益の多くはオプションの追加後かなりの遅れを伴って生じるであろうことが予測されるということを言及しなくてはならない。したがって、2022年までの期間の調査では、健康利益はかなり低いと推定される。さらに、健康影響はオプションの結果として自動的に生じるものではなく、適切なリスク削減措置が取られた場合にのみ達成され、そのことは次々に追加コストを伴うということにも言及しておく必要がある。このことから、登録のための金銭的コストと健康利益を直接比較することは実行できそうにない。いくつかのオプションを実施してナノ物質の情報が増えれば健康利益も増加するであろう。物質ごとの健康利益の増加は平均して、REACHの合計潜在能力として得られる物質ごとの健康利益の約20%となるであろう。この割り当ては、専門家からのインタビューの時に得られた可能性ある10%から30%の範囲の中らの判断に基づく。 この定量化できる利益のほかに、追加的な付加価値が提案されるオプションを通じて期待できる。このことは、特に環境への潜在的に有害な影響に関する不確実性の削減と、リスクが疑われる又は特定される場合に迅速にそして適切に対応する能力の増大とに関係する。さらに能力の増大は、新たなより良い解決を求めている会社にある革新プロセスを刺激するように見える。ヒト健康及び/又は環境に有害であると特定されたナノ物質は、当該会社における代替活動の対象となり得る。その結果、それは公衆から見てその会社のイメージを向上させるのに役立ち、当該会社は有害ではないナノ物質を製造プロセスで使用しているということを伝えるためのオプション提供する。結論はこれらの3つの定量化できない影響は無視されるべきではないということである。 会社にとっての追加的なコストは、適切なリスク削減措置との組み合わせで、健康、環境及び社会的利益に大きく貢献するであろう、潜在的に有害な影響についての不確実性の削減をもたらすことを、この影響評価は示している。 報告書全文 |