米化学会 ES&T 2008年6月4日
双子の有毒物質 ナノチューブとアスベスト
新たな研究が、アスベストによく似たカーボン・ナノチューブは
中皮腫を起こす可能性を示す

情報源:ES&T Science News, June 4, 2008
The twin toxics: nanotubes and asbestos
A new study shows that, just like their look-alike asbestos,
carbon nanotubes can cause mesothelioma.
http://pubs.acs.org/subscribe/journals/esthag-w/2008/jun/science/rc_asbestos.html

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2008年6月6日

 他のナノ物質と同様に、非常に小さいが鉄のように強いナノチューブは今世紀の驚異の物質としてほめちぎられている。研究者や製造者らはこれらのナノ物質は薬剤や高効率の電池、すばらしい電子技術の新たな時代に導くと期待している。しかし、科学者らは、ナノチューブのアスベストとの顕著な類似点がアスベストのようなヒトへの悪影響の可能性を暗示していることを心配している。5月20日にネイチャー・ナノテクノロジーに発表された新たな研究は、これらの心配には十分な根拠があることを証明している。それはこの物質がマウスに肺がんを引き起こすことができることを示している。

 この研究では、英エジンバラ大学のケン・ドナルドソンと彼の同僚らは、マウスの腹腔にナノチューブを投与することによってマウスの肺に50マイクログラムの多層カーボン・ナノチューブを暴露させた。その影響−中皮(肺組織を覆う細胞膜)の炎症及び病変の進展−はアスベストを長期間吸入することによって引き起こされる危険な健康障害として知られる中皮腫の症状と似ている。

 この研究は、”繊維仮説がカーボン・ナノチューブにも適用されることをまさに確認している”と共著者であるウッドロー・ウイルソン国際学術センター新興ナノ技術プロジェクトのアンドリュー・メイナードは述べている。この仮説によれば、長くて細くて直線で丈夫な繊維は、それらがアスベストからできていようと炭素原子からできていようと関係なく、体に同じような影響を及ぼす。

 その結果は、もし人々が十分な量のカーボン・ナノチューブに暴露すれば、潜在的な有害性がある証拠を示している。しかし、この研究は人々が暴露することがあるのかどうか、そしてもし暴露すればどのような条件で起きるのかを示すことはできていない。”それは早急に目を向けられなくてはならない大きな未知のひとつである”とメイナードは述べている。この結果は暴露シナリオに関するもっと多くの研究の必要性、及びこれらの物質を安全に取り扱うための産業側と規制当局からのガイドラインの必要性を示していると彼はつけ加えた。
(RHITU CHATTERJEE)


参考記事


化学物質問題市民研究会
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