EHN 2008年10月21日論文解説
酸化アルミニウム ナノ粒子 ヒト脳内で見出される血管細胞を殺し傷つける 情報源:Environmental Health News, October 21, 2008 Nanoparticles kill and maim blood vessel cells found in the human brain Synopsis by Stacey L. Harper http://www.environmentalhealthnews.org/ehs/newscience/ a-toxic-encounter-when-nanoparticles-meet-blood-vessels-cells-in-the-human-brain Original: Chen, L, RA Yokel, B Hennig and M Toborek. 2008. Manufactured aluminum oxide nanoparticles decrease expression of tight junction proteins in brain vasculature Journal of Neuroimmune Pharmacology doi:10.1007/s11481-008-9131-5y. http://www.springerlink.com/content/02212l1734460gt6/ 訳:安間 武(化学物質問題市民研究会) 掲載日:2008年10月29日 このページへのリンク: http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/nano/ehn/ehn_081021_nano_aluminum_oxide.html ラットの細胞を用いた研究が、酸化アルミニウムのナノ粒子がヒトの脳内血管の内面を覆う特別の細胞を殺し、有害な変化を与えうることを示した。これらの非常に小さな粒子の生産と使用の急速な増大は、これらの物質の未知のリスクへのヒトの暴露を必然的に高めるであろう。 酸化アルミニウムのナノ粒子は、ヒトの脳内の血管の内面を覆う細胞に有毒でありうることをラットの細胞を用いた最近の研究が発見した。酸化アルミニウムのナノ粒子は、2005年には世界のナノ粒子製造市場の20%を占めた。これらのナノ物質の生産増大はヒトの暴露を必然的に高めるであろう。 この研究は、径がナノメートル・サイズだけの酸化アルミニウムの粒子であるナノ・アルミナの、ヒト血液-脳関門への影響を調べるために設計された。脳内血管内面を覆う細胞を、ナノ・アルミナ、通常サイズ・アルミナ粒子、カーボン・ナノ粒子、カーボン・非ナノ粒子に暴露させた。暴露後、研究者らは細胞構造と細胞死、及びミトコンドリアへの影響及び、血管の内面を覆う細胞を堅く結合する重要なたんぱく質であるタイト結合蛋白への影響を評価した。さらに、ラットはナノ・アルミナの静脈投与を受けた。 ナノスケールのアルミナとカーボンは、それぞれに対応する通常サイズの粒子よりも明らかに有毒であった。ナノ・アルミナとナノ・カーボンの両方とも、細胞死を増大し、ミトコンドリア(訳注1)の機能を阻害したが、アルミナとカーボンはそのようなことを起こさなかった。ナノ・アルミナはまた、細胞の外観を損ね、細胞の酸化ストレスを増大し、タイト結合蛋白の発現を阻害した。動物実験は、ラットの大脳中の重要な蛋白の喪失を伴う蛋白の改変を確認した。 酸化アルミニウムは、電気的、工学的、生物医学的分野で多様な応用が行われている酸化セラミックの一種である。現在、酸化アルミニウムのナノ粒子は、そのサイズがそのように小さなスケールになった時に強化される特性のために、製造されている。この研究から得られた追加的な発見は、抗酸化剤がナノ粒子毒性に対する処置として適用されるかもしれないことを示している。 訳注1 ミトコンドリア(フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』) |