ドイツ連邦リスク評価研究所 2006年4月12日
ナノスプレー中毒の原因はまだ完全には解明されていない

情報源:Federal Institute for Risk Assessment 12.04.2006
Cause of intoxications with nano spray not yet fully elucidated
http://www.environmentaldefense.org/documents/5218_BFR%20press%20release0406.pdf

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2006年5月9日


ドイツ連邦リスク評価研究所(BfR)での議論からはまだ明確な結論は出ていない

 2006年4月7日の専門家会議において、中毒管理治療センター、科学、産業、連邦政府当局、及び連邦リスク評価研究所(BfR)からの専門家らが、ナノ粒子を含む新規の封入スプレーを使用した結果生じた97の中毒症例、そのうちいくつかは重症である−の原因を分析した。
 ”これらの症例は、消費者製品に新規の技術を導入する場合にはその製品の使用により引き起こされるかもしれないリスクの評価が伴わなくてはならないということを実証した。このメッセージを消費者に伝える責任は科学にある”−とBfR所長で教授であるアンドレアス・ヘンセル博士は述べた。専門家らは、観察された健康障害は非常に微細なエアゾール・スプレーの吸入によって引き起こされたと考えている。10μmの小滴のエアゾールは、製品が噴射ガスを含むスプレー容器から噴射された場合にのみ形成される。このサイズの小滴は肺の奥深く浸透し、肺機能を損なう恐れがある。
 専門家らはエアゾール中の成分であるナノ粒子もまた観察されたような問題を引き起こしたかどうかについては、毒物学的特性とナノスケールの粒子に関するデータが欠如しているために、決定的な方法で結論を出すことができなかった。

 本件は、2006年3月27日から30日の間に、クラインマン(Kleinmann)社製の二つのエアゾール容器入りの”ナノ”封入スプレーを使用した後に発症し、ある症例は重症であり肺浮腫さえも引き起こしていたと発表された。中毒管理治療センター、連邦政府当局、連邦リスク評価研究所(BfR)、製造者および流通業者らによる連携のとれた措置のおかげで、この疑惑のある製品は非常に速やかにドイツの市場から撤去された。プレスリリースで消費者らはこれらの製品を使用しないよう警告された。2006年3月30日以降は、このような症例は報告されていない。

 2006年4月7日の専門家会議で、科学、医療、公衆衛生当局、産業、及び連邦リスク評価研究所(BfR)からの専門家60人は呼吸困難や肺浮腫のような健康障害が二つの製品のそれぞれに含まれるナノ粒子によって引き起こされたのかどうか、又は、従来の吹きつけスプレーからのnoxae又は有害な物質のせいなのかを分析した。

 二つの封入スプレーの流通業者は上流側の供給者からの情報がないので完全な調剤を供給することはできなかった。二つの製品を使用した後、最終的な急性肺疾患の毒物学的評価は行われておらず、したがって科学的討議しか行えなかった。

 専門家らはまた、製品が噴射ガスを含むエアゾール・スプレーに適用されている場合には、製品中の個々の成分の古典的な毒物学的評価では十分ではないということを指摘した。スプレーの小滴サイズのような物理的特性は主要な決定要素かどうか、もしそうなら、気管支の中でどのような有害影響が起きたのかが問題である。

 我々は、ドイツ、オランダ、及びスイスにおける古典的な吹きつけスプレーに関連する中毒症例から、それらの製品は、肺胞組織にしみ込むまでは呼吸器系障害や肺浮腫のような深刻な健康問題を引き起こさないということを知っている。これらの組織にまで到達するためには小滴はは非常に小さくなくてはならない。この小滴サイズは製品が噴射ガスによってスプレー・ヘッドの相応に小さいノズル用いて使用されたときにのみ達成できる。しかし、これらの液がポンプを用いて使用されたときには小滴は100μmより小さくはならず、肺胞組織まで達しない。

 専門家らは、噴射ガスを含む二つのナノ封入スプレーの使用に関連して観察された有害影響がエアゾール・スプレーとして使用されたことによってのみ、引き起こされたかも知れないという可能性を排除していない。エアゾール中のナノ粒子もまた患者の肺に到達し肺胞組織にダメージを与えていたかどうかどうか分らないので、これらの粒子の関与の可能性が明確にされなくてはならない。

 専門家らは、噴射式スプレー中の製品の健康影響は実際の屋内使用条件をシミュレートしたテスト戦略よってのみ決定されるということについて同意した。有害影響は、製品自身が、すなわち調剤中の全体の混合物質が相応に小さい小滴サイズの細かいミストとして吸入された時にのみ生じる。このことはナノ粒子を使用している製品にも、使用していない製品にも適用される。

 したがって噴射式スプレーの製造者は、この種の製品を市場に出す前に毒物学的テストを実施して結果を報告すべきである。そのようにして初めて、”正しい使用又は誤った使用によって使用者の安全と健康、又は第三者が危険にさらされてはならない”とする機器製品安全法(GPSG)に規定されている要求を遵守したことになる。 end bfr-p
参照:プレスリーリース 08/2006, 2006-03-31
Exeercise caution when using "nano-sealing sprays" containing a propellant!
訳注:
ドイツ連邦リスク評価研究所 2006年3月31日 噴射式ナノ封入スプレーを使用する時の注意(当研究会訳)



化学物質問題市民研究会
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