ACS Nano 2017年4月26日
吸入されたナノ粒子は
血管障害のある部位に蓄積する

アブストラクト

情報源:ACS Nano, April 26, 2017
Inhaled Nanoparticles Accumulate at Sites of Vascular Disease
Abstract
http://pubs.acs.org/doi/abs/10.1021/acsnano.6b08551

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2017年5月2日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/nano/acs/
170426_Inhaled_Nanoparticles_Accumulate_at_Sites_of_Vascular_Disease.html


 工業的ナノ物質は、顕著な心肺疾病率と死亡率に関連している環境的ナノ粒子(訳注:大気汚染微粒子)との潜在的な類似性が懸念されるにもかかわらず、その開発は指数関数的に成長している。
 ナノ粒子の吸入が急性心血管事故を引き起こすメカニズムが明らかになりつつあるが、基本的な未解決の疑問がある:吸入されたナノ粒子は人間の肺から移動し、心血管疾患の病因に直接的に寄与するのか?
 補足的な臨床及び実験調査で、我々は、粒子の移動を評価するために、高解像度誘導結合質量分析計及びラマン顕微鏡による検出を可能とする金ナノ粒子を使用した。
 健康なボランティアが急性吸入によりナノ粒子に暴露させられ、その後、繰り返し血液と尿のサンプリングが行われた。
 金は暴露後15分から24時間以内に検出されたが、暴露3か月後にもまだ存在した。レベルは、粒子径 30 nm のものに比べて 5 nm の方が高かった。
 マウスの実験は、金ナノ粒子のもっと広いサイズ範囲(粒子系 2〜200 nm)の肺への暴露の後、10 nm 以下の粒子がより大きく移動することを示しつつ、血液と肝臓中に蓄積することを実証した。
 さらに、吸入後、金ナノ粒子は心発作のリスクがある患者の頚動脈疾患の検体からも検出された。

 吸入されたナノ粒子の体循環への移動及び血管炎症部位への蓄積は、環境的ナノ粒子と循環器系疾患との関連を説明することができ、工業的ナノ物質の使用におけるリスク管理のための密接な直接的メカニズムを提供するものである。


参考
ACS パブリック リリース 2017年4月26日
ナノ粒子は肺から血流に進むことができ、
おそらく心臓へのリスクを明らかにするであろう


情報源:EurekAlert! / ACS Public Release April 26, 2017
Nanoparticles can travel from lungs to blood, possibly explaining risks to heart
By American Chemical Society
https://www.eurekalert.org/pub_releases/2017-04/acs-nct042117.php

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2017年5月2日

 大気汚染中の微粒子は心血管系疾病に関連しているが、それは早死にをもたらす可能性がある。しかし肺に吸入された粒子はどのように血管や心臓に影響を及ぼすことができるのかということは謎であった。現在、科学者らは人間及び動物実験で、吸入されたナノ粒子は肺から血流に入り込むことができ、潜在的に大気汚染と心血管系疾病との関連を説明できる証拠を発見している。彼らの研究結果はジャーナル『ACS Nano』に発表されている。

 世界保健機関は、2012年に屋外大気汚染に関連する早死にの約72%は虚血性心疾患と心発作であると見積もった。他の28%は、肺疾患、呼吸器系感染症、及び肺がんに関連付けられた。多くの科学者らは微粒子が肺から血流に移行することを疑ったが、人間でのこの仮説を支持する証拠を収集することは難しかった。そこで、イギリスのエジンバラ大学又はオランダの国立公衆健康環境研究所のマーク・ミラーと彼の同僚らは、吸入ナノ粒子の運命を追跡するために特別の技術を採用した。

 この新たな研究で、14人の健康なボランティア、12人の外科患者及び何匹かのマウスが、医療画像技術及びドラッグデリバリーで安全に使用されている金ナノ粒子を吸入した。暴露後すぐにナノ粒子は血液中及び尿中で検出された。重要なことには、ナノ粒子は、心臓発作のリスクのある患者の頸動脈を含んで、炎症を起した血管部位に優先的に蓄積するように見えた。この発見は、ナノ粒子は肺から血流中に移行し、心臓発作の可能性を増大させ得る、心血管系の影響を受けやすい部位に達することができることを示唆している。
###
 著者らは、the British Heart Foundation, the Colt Foundation, the Dutch Ministry of Infrastructure and Environment and the U.K. Department of Health からの資金的支援を受けたことを認めている。

 論文のアブストラクトは2017年4月26日現在、http://pubs.acs.org/doi/abs/10.1021/acsnano.6b08551から入手可能である。



化学物質問題市民研究会
トップページに戻る