ACS Nano 2012年8月2日
ラットの28日経口曝露による
銀ナノ粒子及び銀イオンの体内分布、排泄及び毒性

(アブストラクト)

情報源:ACS Nano, 2012, 6 (8), pp 7427 - 7442 DOI: 10.1021/nn302649p
Publication Date (Web): August 2, 2012
Distribution, Elimination, and Toxicity of Silver Nanoparticles and Silver Ions
in Rats after 28-Day Oral Exposure
Meike van der Zande †*, Rob J. Vandebriel ‡, Elke Van Doren §, Evelien Kramer †, Zahira Herrera Rivera †, Cecilia S. Serrano-Rojero †, Eric R. Gremmer ‡, Jan Mast §, Ruud J. B. Peters †, Peter C. H. Hollman †, Peter J. M. Hendriksen †, Hans J. P. Marvin †, Ad A. C. M. Peijnenburg †, and Hans Bouwmeester †
† RIKILT-Wageningen University & Research Centre, 6700 AE Wageningen, The Netherlands
‡ National Institute for Public Health and the Environment, 3721 MA Bilthoven, The Netherlands
§ CODA-CERVA-Veterinary and Agrochemical Research Centre, 1180 Uccle, Belgium
http://pubs.acs.org/doi/abs/10.1021/nn302649p

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2012年9月10日
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http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/nano/acs/
120802_nanosilver_in_rats_after_28-day_oral_exposure.html



 我々は、非コーティング銀ナノ粒子、径20nm以下、又はPVP(訳注1)コーティング銀ナノ粒子、径15nm 以下、[Ag] = 90 mg/kg body weight (bw)、又は 硝酸銀(AgNO3 )(訳注:無色結晶)[Ag] = 9 mg/kg bw、又はキャリアー溶液へのラットへ28日経口曝露調査の結果を報告する。
 1又は8週間のウォッシュアウト期間(訳注2)を設け、29日目に解剖を行なった。銀は検証した全ての臓器中に存在し、全てのナノ銀について肝臓と脾臓が最も高いレベルであった。
 臓器中の銀濃度は銀ナノ粒子混濁液中の銀イオンの量に非常に関連しており、主に銀イオンが、また、はるかに低い程度で銀ナノ粒子が、銀ナノ粒子に曝露したラットの腸を通過したことを示した。
 全てのグループの銀は投与後8週間でほとんどの臓器から消失したが、驚くべきことに脳と睾丸からは消失しなかった。
 単粒子・誘導結合プラズマ(ICP)質量分析装計を用いて、銀ナノ粒子に曝露したラットから銀ナノ粒子が検出されたが、注目すべきことには硝酸銀(AgNO3)に曝露したラット中からも銀ナノ粒子が検出された。これにより、恐らく銀化合物のイオンからのナノ銀の形成をインビボで実証したことになる。
 血中のバイオケミカルマーカーと抗体レベル、リンパ球増殖とサイトカイン(訳注3)放出、及びNK細胞(訳注4)活性は、銀曝露による肝毒性又は免疫毒性を示さなかった。結論として、銀ナノ粒子の経口曝露は、銀化合物への曝露と非常によく似ている。しかし、インビボで銀ナノ粒子が形成されるということ、及び脳と睾丸に銀が長期間残留するといいうことの重要性は、銀ナノ粒子のリスク評価で考慮されるべきである。

キーワード:silver nanoparticles; oral exposure; in vivo; distribution; elimination; toxicity


訳注1:PVP
ウイキペディア/ポリビニルピロリドン
 ポリビニルピロリドン(Polyvinylpyrrolidone、略称PVP、ポビドンともいう)は、N-ビニル-2-ピロリドンの重合した高分子化合物である。CAS登録番号は[9003-39-8]。多くの合成高分子化合物と異なり水によく溶解するので、この性質を利用して様々な用途に用いられる。工業用には水に溶けにくい物質を溶解・分散させるための溶解補助剤・分散剤として用いられる。

訳注2:ウォッシュアウト期間
治験ナビ/ウォッシュアウト期間
 治験を開始するに当たり、それまでに投与していた薬(前治療薬)の影響を排除するために、治験薬投与前に「休薬期間」(薬を何も投与しない期間)を設けること。

訳注3:サイトカイン
ウイキペディア/サイトカイン
 サイトカイン (cytokine) とは、免疫システムの細胞から分泌されるタンパク質で、特定の細胞に情報伝達をするものをいう。多くの種類があるが特に免疫、炎症に関係したものが多い。また細胞の増殖、分化、細胞死、あるいは創傷治癒などに関係するものがある。

訳注4:NK細胞活性
ウイキペディア/ナチュラルキラー細胞
 ナチュラルキラー細胞(-さいぼう、NK細胞)は、自然免疫の主要因子として働く細胞傷害性リンパ球の1種であり、特に腫瘍細胞やウイルス感染細胞の拒絶に重要である。細胞を殺すのにT細胞とは異なり事前に感作させておく必要がないということから、生まれつき(natural)の細胞傷害性細胞(killer cell)という意味で名付けられた。形態的特徴から大形顆粒リンパ球と呼ばれることもある。



化学物質問題市民研究会
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