英国王立化学会 2010年6月14日
欧州議会委員会 RoHS指令修正案を採択
ナノ銀と多層カーボンチューブを禁止
全てのナノ物質の表示義務

サラ・ホールトン

情報源:Royal Society of Chemistry 14 June 2010
EU ministers call for nanomaterial ban
By Sarah Houlton
http://www.rsc.org/chemistryworld/News/2010/June/14061001.asp

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2010年6月19日
更新日:2010年8月19日
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/nano/RSC/100614_RoHS_nano.html

 欧州議会はナノ銀と長い多層カーボンナノチューブは電気・電子製品中で禁止されるべきと要求している。EU環境委員会の議員らは、提案された有害物質規制指令(RoHS指令)に対する修正に賛成投票してこの要求を示した。

 ナノ物質に関する彼らの立場は、これらの二つのナノ物質を禁止するよう求めるとともに、どのような特性であってもナノ物質を含むどのような電気・電子材料もそのように表示されるべきであると彼らは述べた。製造者らは使用しているナノ物質に関する安全性データを欧州委員会に提供せざるを得なくなるであろう。

ナノ ナンセンス?
 議員らがナノ物質をどのように思っているのか正確にはわからない。もし彼らが新規食品指令(the Novel Foods directive)で用いられている定義に従うなら、少なくとも一次元が100nm以下の加工された又は製造された全ての物質ということを意味するであろう。しかし、このことは全ての電子製品にラベル表示を求めることになる。”コンピュータ・チップ内のことごとくのトランジスターは有害物質を含むことになる”と国際ナノテクノロジー産業協議会のディレクター・ジェネラルであるステフィ・フリードリッヒは説明する。”ラベリングは消費者の要求として理解できるが、それは現実的であることが必要であり、コンピュータ・チップの全てにラベリングすることはばかげたことである”。

 ナノ銀が環境にダメージを与えるということはほとんど疑いないが、そのためにはまず環境に到達しなくてはならないとデンマーク大学環境エンジニアリング部門のスッテフェン・フォス・ハンセンは言う。”最終的に環境にいたるためには、まずそれが廃棄物になり、そして電気・電子機器廃棄物(WEEE)の回収政策(a take-back policy)があるので、私は、これらの使用から環境中に到達するかどうか疑問がある”と彼は言う。”環境中に到達することを我々が知っている身の回り用品に目を向ける方がもっと効果的であろう”。

 長い多層カーボンチューブを禁止する背景はもっと明確である。例えば、吸入するとアスベストのように振舞うかもしれないことを示すいくつかの証拠がある。しかし、そうであっても、ナノチューブは自由に吸入できなくてはならず、もし電子製品中に固定されているなら、そのようなケースにあたらない。”個々の材料は用途にしたがって、そしてひとつずつ、評価されなくてはならい”とフリードリッヒは言う。最終製品中では、カーボンナンチューブへの曝露の可能性は無視できる。そして製造段階及び調合プロセスにおいては、安全基準を遵守することが本質的である。しかし、我々は、カーボンナンチューブの環境、健康、安全に対する更なる研究を支援する”。

 提案に対する採決は10月に実施される予定である。


参考資料

■Nanotechnology Law Blog
EP Committee Adds Nanosilver and Carbon Nanotubes to Proposed RoHS Recast
Posted on June 8, 2010 by Lynn L. Bergeson
http://nanotech.lawbc.com/2010/06/articles/international/ep-committee-adds-nanosilver-and-long-multiwalled-carbon-nanotubes-to-proposed-rohs-recast/
 2010年6月2日、欧州議会(EP)環境・公衆健康・食品安全委員会は、提案された電気・電子機器中の有害物質の規制に関する指令(RoHS)の修正案を、賛成55、反対1、棄権2で承認した。同委員会は、ナノ銀と多層カーボンナノチューブ(MWCNT)を Annex IV に加えることを採択したが、当初の提案にはナノ物質は含まれていなかった。事実上、ナノ銀又は多層カーボンナノチューブ(MWCNT)を検出可能なレベルで含んでいるなら、上市禁止に関する閾値はない。同委員会はまた、ナノ物質を含む機器にはラベル表示を求めており、製造者は欧州委員会(EC)にナノ物質に関する安全データを提供することが求められる。同委員会は、特に除外規定がなければ、RoHSは全ての電気機器に適用することを意味する”オープンスコープ”を採択した。修正提案に関する欧州議会の採決は2010年7月に予定されている。

■J-Net 21ここが知りたいRoHS指令
改正RoHS指令の議会の審議動向(10.06.11)
http://j-net21.smrj.go.jp/well/rohs/column/100611.html

■議会での採決10月に延期
Vote on RoHS recast put back
http://www.element-14.com/community/community/legislation/blog/2010/06/29/vote-on-rohs-recast-put-back
Posted by Gary Nevison on Jun 29, 2010 3:45:25 PM
The vote of the full European Parliament on the RoHS recast has been put back to October.This allows time for the Environment Committee and Council to agree on what they agree on as it were before the full vote.
If they can agree it will help the process.


化学物質問題市民研究会
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