英国王立環境汚染委員会
プレスリリース 2008年11月21日
ナノ物質のテストと規制について
緊急の行動が求められる


情報源:ROYAL COMMISSION ON ENVIRONMENTAL POLLUTION
Press Release 12 Novemer 2008
Urgent action needed on testing and regulation of nanomaterials
http://www.rcep.org.uk/novel%20materials/Novel%20materials%20press%20release.pdf

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2008年11月21日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/nano/RC_Env/RC_press_081112.html

 2008年11月12日に影響力のある英国王立環境汚染委員会(RCEP)(脚注1)によって発表された報告書(訳注1)によれば、急速に展開しているナノ物質の分野の管理のために、もっと多くのテスト、既存の管理体制の拡大、そして新たな取り決めを作り出すことについて緊急の必要性がある。

 新奇物質に関する最新の研究(脚注2)の中で、英国王立環境汚染委員会は急速に拡大する新たな技術の典型としてナノ物質に焦点を当てた。

 委員会はナノ物質による健康と環境への危害の証拠は見つけていないが、新たなナノ物質が開発され市場に出されるスピードは潜在的な環境影響を適切に管理するための既存のテストと規制のための対応能力を超えていると委員会は信じる。潜在的なリスクの評価において重要なことは、ナノ物質のサイズ自体ではなく、それらの機能、それらが何をするのか、どのように振舞うのかについて評価することの必要性であると委員会は結論付けた。

 ナノ物質は既存の技術の能力を改善したり、新たな技術を可能にするために重要である。医療関連で、例えばドラッグ・デリバリー・システムを通じて、多くのことがめざましい改善をもたらすことに関わっている。環境的な課題に合致するという点で、例えばもっと安い又はもっと効率的な太陽パネルの開発という点で多くのことが重要である。

 委員会議長ジョン・ロートン卿は、”我々は、ナノ物質の環境と人の健康への影響に関する不確実性に目を向けるために英国政府やOECDのような組織によってとられている行動を歓迎するが、なすべきことはもっとはるかに多く、とりわけこの分野の革新の速度はリスクに対応する我々の能力をはるかに超えている”と述べた。ナノ物質についてのもっと多くの研究とテストが緊急に必要である。欧州連合の化学物質の既存の規制の枠組み(REACH)の中で、範囲を拡張することが必要である。このことは緊急に進められなくてはならない。

 ”我々はまた、もっと精巧な後世の製品が、化学物質又は化学物質の混合としてそれらを取り扱うことができないような問題を引き起こすことを懸念している。現状のテスト方法と既存の諸規則は不適切である。委員会は、新たな管理の仕組みが、この分野における現在及び将来の革新によって課せられる課題に対処するために重要であると強く信じる。”

 王立委員会の研究で、我々はナノ物質が人の健康又は環境に危害を及ぼすという証拠を熱心に探したが、そのような証拠は見つからなかった。しかし、この技術の開発はまだ非常に初期であり、テストの実施量も比較的限られている。我々はいくつかのナノ物質に関する実験室でのテストが懸念を引き起こす可能性のある特性を持つことを示唆していることを承知している。このことが、これらの理論的リスクは現実であるかどうかを評価するために、そして環境中でのそれらの挙動を監視するために、テストの量とタイプを増やすという我々の主張を強化するものである。総合的に判断して、委員会はナノ物質に関して全面禁止又はモラトリアムの根拠はないと結論付けた。

 委員会の勧告は三つの主要な優先事項を反映している。

  • 機能:我々は、有機体及び環境中での挙動を理解するための原動力として、単一の分類としてナノサイズの全ての物質を取り扱うよりもむしろ、特定のナノ物質の特性と機能に焦点を合わせる必要がある。
  • 情報:リスク評価とリスク管理戦略を特徴付けるために、ナノ物質の特性と機能に関する方向性をもった本質的な研究プログラムが緊急に確立されなくてはならない。そのような方向性をもったプログラムのひとつの本質的な部分は、特定のナノ物質の存在を環境中で検出できる技術の開発であろう。

  • 適応管理:政府は緊急にこの分野における未知と不確実性の程度と、それらに目を向けるために要する時間を認識する必要がある。政府は、一般的には新興技術のため、そしてとりわけナノ物質のための、適切な管理を可能とする柔軟性と弾力性のある管理方式を開発する必要がある。

脚注1:王立環境汚染委員会は、女王、政府、議会、及び公衆に環境問題について助言するために1970年に設立された独立機関である。環境食糧地域省(DEFRA)から資金が出ているが、王立委員会は政府省庁から独立している。

脚注2:環境中の新奇物質:ナノ物質の場合は王立委員会の第27次報告書である。委員会はまた、主要な勧告を含む短い概要報告書を発行した。完全版報告書と概要の両方は印刷物として又は委員会のウェブサイト http://www.rcep.org.uk から入手可能である。完全版報告書のコピーは Stationary Office Bookshops (Cm 7468, price £26.60)で入手することができる。概要は王立委員会事務局(RCEP)から無料で入手できる(tel: 020 7270 8159, fax 020 7270 8303, email: enquiries@rcep.org.uk)。


訳注1:オリジナル報告遺書
訳注2:関連記事


化学物質問題市民研究会
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