PubMed 2014年2月14日
思春期前発達中の銀ナノ粒子への日常的暴露は
おとなの精子と生殖パラメータを低下させる

アブストラクト

情報源:PubMed 2014 Feb 17
Daily exposure to silver nanoparticles during prepubertal development
decreases adult sperm and reproductive parameters.
Mathias FT1, Romano RM, Kizys MM, Kasamatsu T, Giannocco G,
Chiamolera MI, Dias-da-Silva MR, Romano MA.Abstract:
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24533579

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2014年3月10日
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http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/nano/PubMed/140217_silver_nano_decreases_sperm.html

アブストラクト

 銀ナノ粒子(AgNPs)は、抗菌特性を持ち、ある抗生物質の活動を増進するので、医療及び非医療の両方の用途で広く使用されている。この研究では、思春期前のオスのウイスターラットに 15又は30μg/kg/dayのAgNPsが、出生後23日(PND23)から PND58まで経口投与され、PND102で解剖された。先体(acrosome)(訳注1)の健全性、細胞膜(plasma membrane)の健全性、ミトコンドリア(訳注2)活動及び精子の形態変化が分析された。性パートナー選好性、性行動、卵胞刺激ホルモン(FSH)(訳注3)、黄体形成ホルモン(LH)(訳注4)、テストステロン(男性ホルモンの一種)及びエストラジオール(訳注5)の血清濃度もまた記録された。

 適切な統計学的分析の後に結果が評価され、グループ間の相違は p 値が0.05 より小さい時に有意であるとみなされた。AgNPs は、両方の投与グループについて、先体と細胞膜の健全性を低減し、ミトコンドリア活動を低減し、精子の異常を増大させた。また、どちらの投与グループにも体の成長に変化は観察されなかったが、AgNPs 暴露は思春期の開始を遅らせた。動物たちは性行動又は血清ホルモン濃度に変化は示さなかった。

 この研究は、思春期前の AgNPs 暴露がおとなの精子パラメータに変化を引き起こすことを初めて示したものである。重要なことは、 AgNPs 有害影響に精子は感受性がより高い様に見え、低用量への暴露でも有害影響を示したことである。従って、AgNPs の精子への影響は、これらの粒子の使用のための安全限界を確立するために考慮されるべきである。


訳注1
ウイキぺディア/先体(acrosome)
 先体(せんたい、英: acrosome)は、精子核の周囲を帽子状に取り囲むものであり、精子細胞(en:Spermatid)が精子に変形する過程において、ゴルジ装置から作られた袋状の構造物。先体内には脂質糖タンパク質複合体の先体物質(ヒアルロニダーゼ(en:Hyaluronidase)、アクロシン(en:Acrosin))が含まれている。先体反応を起こし、卵子内に侵入する。

訳注2
ウイキぺディア/ミトコンドリア
 ミトコンドリア(mitochondrion、複数形: mitochondria)は真核生物の細胞小器官である。二重の生体膜からなり、独自のDNA(ミトコンドリアDNA=mtDNA)を持ち、分裂、増殖する。mtDNA は ATP合成以外の生命現象にも関与する。酸素呼吸(好気呼吸)の場として知られている。また、細胞のアポトーシスにおいても重要な役割を担っている。mtDNA とその遺伝子産物は一部が細胞表面にも局在し突然変異は自然免疫系が特異的に排除する。ヤヌスグリーンによって青緑色に染色される。

訳注3
ウイキぺディア/卵胞刺激ホルモン
 卵胞刺激ホルモンまたは濾胞刺激ホルモン(Follicle stimulating hormone, FSH)は下垂体前葉の性腺刺激ホルモン産生細胞で合成・分泌されるホルモンである。卵巣内でFSHは未成熟の卵胞の成長を刺激し成熟させる。卵胞は成長するとインヒビンを分泌しFSH産生を遮断する。男性において、FSHは精巣のセルトリ細胞のアンドロゲン結合タンパク質の産生を増幅し、これは精子形成に重要である。

訳注4
ウイキぺディア/黄体形成ホルモン
 黄体形成ホルモンまたは黄体化ホルモン(Luteinizing hormone, LH)は下垂体前葉の性腺刺激ホルモン産生細胞から分泌される性腺刺激ホルモンである。その他の性腺刺激ホルモンには卵胞刺激ホルモン(Follicle stimulating hormone, FSH)がある。

訳注5
ウイキぺディア/エストラジオール
 エストラジオール(英Estradiol:E2)はエストロゲンの一種。エストロンとの可逆反応により、またはテストステロンから不可逆に生成する。顆粒細胞、莢膜細胞、胎盤、副腎皮質、精巣間質細胞などが産生する。


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Silver nanoparticle exposure in young males affects sperm
27 February 2014 / Brazil,Risk assessment
http://chemicalwatch.com/18538/silver-nanoparticle-exposure-in-young-males-affects-sperm


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