2013年2月 OSHA ファクトシート
 安全にナノマテリアルを取り扱う

情報源:U.S. Department of Labor, Occupational Safety & Health Administration
OSHA Fact Sheet-Working Safely with Nanomaterials
http://www.osha.gov/Publications/OSHA_FS-3634.pdf

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2013年2月19日
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http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/nano/OSHA/OSHA_Fact_Sheet_Nanomaterials.html

 米労働安全衛生局(OSHA)は最近、”安全にナノマテリアルを取り扱う”と題するファクトシートを発表したのでその一部を紹介します。

 OSHAは、研究又は製造プロセスでナノマテリアルを使用する作業者は、吸入、皮膚接触、又は摂食を通じてナノマテリアルに曝露するかもしれないと述べています。
 OSHAは、このファクトシートが、”この急速に進展する技術に関連する潜在的な有害性の最新の理解に関する基本的な情報”を提供することを意図しているとし、作業者がナノマテリアルに曝露するかもしれない職場では、雇い主は作業者に情報と訓練を提供しなくてはならず、この情報と訓練は少なくとも下記を含まなくてはならないとしています。
  • 雇い主が使用するナノ物質とそれらが使用されるプロセス
  • 職場で実施される曝露評価から得られる全ての結果
  • 工学的及び管理的コントロール及び個人用保護具(PPE)の特定
  • 個人用保護具(PPE)の使用と限界
  • ナノ物質の漏洩又は放出発生時にとるべき緊急措置
現状のナノマテリアルへの職業曝露制限

 特定のナノマテリアルについて職業曝露制限はほとんど存在せず、ある種のナノマテリアルは(同一物質の)より大きな粒子より有害かもしれないので、ある物質のための既存の職業曝露制限は、そのような物質のナノ粒子からの適切な保護を提供しないかもしれないとしています。しかし、既存の特定の曝露制限がいくつかあるとして、次のような例を挙げています。
  • OSHA は、国立労働安全衛生研究所(NIOSH)が提案する勧告曝露限界(REL)に基づき、吸入され得るカーボン・ナノチューブとカーボン・ナノファイバーの作業者の曝露は、8時間荷重平均として 7.0 μg/m3を超えないことを勧告する。

  • OSHA は、作業者の二酸化チタンナノ粒子への曝露は、NIOSHの 0.3 mg/m3 REL を超えないことを勧告する。対照的に、NIOSH の二酸化チタン微粒子(粒子径 100 nm以上)の REL は 2.4 mg/m3 である。
 他のナノマテリアルへの曝露限界はまだ存在しないので、雇い主は作業者の曝露をハザードコントロール措置と下記に示す最良の慣行、及び“Resources”に示される参照を用いて最小にすべきである。

作業者のナノマテリアルへの曝露評価

 雇い主は、必要とされるコントロール措置を特定し、使用されるコントロールが曝露を低減するために有効かどうかを決定するために、下記により作業者のナノマテリアルへの曝露を評価すべきである。

  • 作業者がナノマテリアルに曝露するかもしれないプロセスと仕事の任務を特定し、記述すること。
  • ダスト、粉体、スプレー、又は小滴のようなナノマテリアルの物理的状態を決定すること。
  • ナノマテリアルの粒子、スラリー、浮遊物又は溶液の曝露経路(例えば、吸入、皮膚接触、又は摂食)を決定すること。
  • 量、空気中浮遊濃度、作業者のナノマテリアルへの曝露期間と頻度を決定するために最も適切なサンプリング手法を特定すること。
  • 曝露評価の結果に基づき、どのような追加的コントロールが必要かを決定し、既に実施しているコントロールの効果を評価すること。雇い主は作業者の曝露を制限するために、利用可能な最も効果的なコントロールを採用すべきである。
雇い主が作業者のナノマテリアルへの曝露を低減するために利用できる方法

 ナノマテリアルの研究と利用は拡大し続け、これらのナノマテリアルの潜在的な健康影響と曝露限界についての情報はまだは発展途上なので、雇い主は次の措置と潜在的な曝露をコンとロースするための最良の慣行の組み合わせを利用すべきである。

工学的コントロール
  • HEPAフィルターと換気設備のある密閉空間(例えば、グローブボックス、実験室フード、プロセス・チャンバー)の中でナノマテリアルを扱う。
  • 操作が密閉できない場合には、発生又は放出点で汚染物質を捕集するよう設計されたHEPAフィルターを備えた局所排気(例えば、排気フード、密閉型フード)。
管理的コントロール
  • 手洗い設備を設け衛生に心がけることを推奨すること。
  • ナノマテリアルの漏洩を浄化し、作業者の曝露を最小にするよう表面の除染に対応するための手順を確立すること。例えばナノマテリアルを含有するダストの浄化のために乾式掃除又は圧縮空気の使用を禁止し、湿式ふき取り及びHEPAフィルターを備えた真空掃除機を使用すること。
個人用保護具(PPE)
  • 保護マスク、手袋、保護衣のような適切な個人用保護具を作業者に支給すること。
医学的スクリーニングと調査
  • 適切なら、ナノマテリアルに曝露した作業者の医学的スクリーニングと調査を可能にすること。
  • OSHA 基準のもとにおける医学的調査要求を見直すこと。

わが国の職場におけるナノマテリアル曝露対策


化学物質問題市民研究会
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