NRDC ジェニファー・サスのブログ記事 2007年12月12日
ナノ概観

情報源:NRDC Jennifer Sass's Blog, December 12, 2007
Nano overview
Jennifer Sass
http://switchboard.nrdc.org/blogs/jsass/nano_overview.html
Natural Resources Defense Council (NRDC)

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2007年1月1日
このページへのリンク

 ナノ技術は強大な力を提供すると共に大きな責任を負っている。それは、がん治療のように重要なことがらや宇宙旅行のように興奮させることがら、ネクタイの汚れ防止、顔のクリーム、化粧品のようなありふれたことがらにいたるまで、産業のあらゆる分野に革命をもたらすことを約束している。ナノ技術は新しいものではないが、ナノスケールで物質を精密に取り扱うための能力は新しく、ナノ対応の科学的進歩の新たな波を先導するものである。

 ナノ技術は、生物学、化学、及び情報学をナノスケールで凝集させたものである。これらの技術から得られる製品はナノ物質と呼ばれており、ナノ粒子(一次元又はそれ以上の次元が1〜100ナノメートル)、及びナノスケールより大きいかもしれない構造にグループ化されたナノ粒子からなる。

 ナノスケール物質は通常のサイズの物質とは溶解特性、磁気特性、化学物質に対する反応特性、光の屈折又は反射特性等が異なる。ナノ物質を商業的に望ましい特性にするまさにそのことが、通常サイズの同一物質にはない有毒性をもたらすことがあり得る。それらは非常に小さいので−ピンの頭は100万ナノメートルである!−、ナノ物質は極端に移動性があり、吸入されたり飲み込まれたり、あるいは皮膚に塗布されたりすると、血流中に容易に入りこむかも知れない。

 体内に一度入ると、脳をはじめ、ほとんど全ての組織や器官に入り込むことができるように見える。ナノ物質が母親の血流から胎児に、又は母乳を通じて乳児に、移動するかどうかはまだ分らない。意図的に作られたナノスケール物質の潜在的毒性はまだ調査研究中であるが、非意図的なナノスケール大気汚染物質の健康影響に関する研究はナノ物質と関連がある。これらのデータはナノサイズの化学汚染物質の吸入は、ぜん息の発作、心臓疾患、脳卒中、呼吸器疾患と関係があることを示している。

 それでは、政府は何をしているのか? 現時点では、製品に関する健康と安全情報を、可能なら市場に出す前に、提出することを企業に勧める自主的な企業推進プログラム(corporate stewardship programs)以上のものをは政府当局は推進していない。NRDC は、科学者、企業、連邦政府規制当局がナノ物質の人の暴露と環境放出に注意を払い、責任をもって行動し、それらが安全に実施されることを我々が知るまで、制限又は防止することを求めてきた。

 NRDC(Natural Resources Defense Council)は、有毒物質を管理するために予防的アプローチに基づき、ナノ物質を規制するための3つの部分からなる枠組みを提案する。
  • テストされていない又は安全ではないナノ物質の使用を禁止すること。予備的なデータがすでに潜在的な有毒性を示しているので、安全ではない、又はテストされていないナノ物質は、その物質のライフサイクルを通じて人の暴露又は環境放出をもたらすようなやり方で用いられるべきではない。

  • 商業化するための必須条件として、環境、健康、安全に関する全ライフサイクル影響評価を実施すること。開発の初期段階で潜在的なリスクを特定するために、ナノ物質の全ライフサイクルについて厳格なテストが緊急に求められる。テスト結果は公表されなくてはならない。

  • ナノ技術開発と管理に対し、完全で意味のある公衆の参加を促進すること。ナノ技術の社会的及び倫理的影響を考慮すること。ナノ技術は地球規模で社会的、経済的、及び政治的展望変えてしまう可能性があるので、このことは、ナノに関する意思決定の場を企業の重役会議室から公衆の領域に移さなくてはならないことを意味する。
 EPAは、基本的データであっても”企業秘密情報”であると主張する企業を法的に保護しているために、限定された情報しか公衆が入手可できないにもかかわらず、15種の新たなナノスケール化学物質の商業化を認可している。ナノスケール物質の名前及び製造者の名前すら公表を差し控えている。ナノ物質生成技術を管理するために、そして商業化する前に消費者と労働者の安全を確実にするために、これらのまだテストされていない潜在的に有害なナノ物質の予防的規制が早急に策定されなくてはならない。


化学物質問題市民研究会
トップページに戻る