欧州委員会共同研究センター (JRC)2017年2月6日
カーボンナノチューブを含んだ及び含まない ダストの毒性比較 情報源:JRC News, 6 Feb 2017 Comparing toxicity of dusts with and without carbon nanotubes https://ec.europa.eu/jrc/en/news/comparing-toxicity-dusts-and-without-carbon-nanotubes-0 紹介:安間 武 (化学物質問題市民研究会) http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/ 掲載日:2017年2月14日 このページへのリンク: http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/nano/JRC/ JRC_170206_Comparing_toxicity_of_dusts_with_and_without_carbon_nanotubes.html
ナノ物質の製造は急速に増大しているにもかかわらず、これらの物質に関連する可能性ある健康影響についての我々の知識はまだ限られている。ナノ物質の毒性学的特性に関して数千の科学論文が発表されているにもかかわらず、実際の使用で生じるのと類似の条件下で製品から放出される形でナノ物質を取り扱った論文は非常に少ない。従って、第 7 次欧州研究開発フレームワーク計画(FP7)のプロジェクトである ”NanoSustain” を通じて、指導的な欧州の研究機関の連合体はカーボンナノチューブ(CNT)エポキシ複合材の機械的な摩耗によって生成されるダストの毒性に関連するデーターギャップに目を向けた。 ナノ複合材を形成するために CNTs がエポキシ樹脂に組み込まれると、製品の重量の低減と強度の強化を併せもつというような性能向上が得られる。やすり掛け又はのこ引きなどによるナノ複合材の加工中に CNTs は自由ナノ粒子として又は基盤に埋め込まれた粒子として放出されるかもしれない。 毒性テスト(訳注:オリジナル論文によればマウスの気管からの注入)の結果は、 (訳注:オリジナル論文によれば、CNTs 含有/非含有のエポキシはともに肺組織に炎症及 DNA 損傷を誘発するが、)CNTs 含有エポキシからのダストは、CNTs を含有しないエポキシからのダストと比べて、肺の炎症又は DNA 損傷をより増加させることはなかった。しかし、CNTs 含有エポキシからのダストは、純粋なエポキシ樹脂だけからの場合には生じなかった肝臓の炎症及び壊死を誘発し、それらはエポキシ基盤がない場合の同じ CNTs への暴露後の反応に類似していた。これらの結果は、日常的な使用条件下での消費者製品中のナノ物質の健康リスクを理解する上で重要な一歩を示した。 (訳注:オリジナル論文のアブストラクトからの引用) CNTとエポキシダストの両方は、気管内注入後3日までに肺組織に DNA ダメージを誘発したが、肝臓組織には誘発しなかった。エポキシ樹脂に CNT を加えても肺の評価項目についてはどの様な付加的な影響もなかった。 CNT とエポキシダストを注入されたマウスの肝臓には、CNTs 炎症及び壊死性の組織学的病変が観察されたが、CNT を含まないエポキシダストが注入されたマウスには観察されなかった。 さらなる情報は下記論文を参照のこと。 A.T. Saber et al:, “Epoxy Composite Dusts With and Without Carbon Nanotubes Cause Similar Pulmonary Responses, but Differences in Liver Histology in Mice Following Pulmonary Deposition”, Particle and Fibre Toxicology 13 (2016) 37, doi:10.1186/s12989-016-0148-2 |