IARC 出版ニュース 2017年5月19日
いくつかのナノ物質及び繊維状物質−
ヒトに対する発がん性リスクの評価に関する
IARC モノグラフ Volume 111


情報源:IARC Publication News 19/05/2017
Some Nanomaterials and Some Fibres - IARC Monographs
on the Evaluation of Carcinogenic Risks to Humans Volume 111
http://publications.iarc.fr/Book-And-Report-Series/Iarc-Monographs-
On-The-Evaluation-Of-Carcinogenic-Risks-To-Humans/Some-Nanomaterials-And-Some-Fibres-2017


訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2017年5月29日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/nano/IARC/170519_IARC_Some_Nanomaterials_and_Some_Fibres.html

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 本書 IARC モノグラフ(第 111 巻)は、フルオロエデナイト(fluoro-edenite fibrous amphibole)、シリコンカーバイド繊維及びウィスカー(silicon carbide fibres and whiskers)、並びに単層及び多層タイプを含むカーボンナノチューブ(carbon nanotubes)の発がん性評価を提供する。これらの物質のいずれも、 IARC モノグラフ作業部会により以前に評価されたことはない。

 作業部会は、イタリアのシチリア島ビアンカヴィッラの地域住民に中皮腫を引き起こすと報告されている環境汚染物質であるフルオロエデナイト(fluoro-edenite fibrous amphibole)に暴露した人に及ぼす発がん性ハザードを評価する疫学的研究に主に依拠した。

 シリコンカーバイド繊維は、アスベストプロセスによるシリコンカーバイド粒子の製造副産物である。シリコンカーバイド・ウィスカーは他のプロセスによって生成される。その繊維及びアチソン法に関連する職業暴露の評価は主に疫学研究に依拠しているが、一方、ウィスカーの評価は疫学データがないので、発がん性のバイオアッセイ(訳注:微生物や実験動物などを利用して化学物質が及ぼす影響を調べる方法)及びそれらの物理的特性の検討に基いた。

 カーボンナノチューブに関する疫学的研究がなく、機械論的なデータから利用可能なデータは限定的なので、単層及び多層カーボンナノチューブの評価は発がん性バイオアッセイに依拠した。


訳注:参考資料
 本書の内容については、本書作成のための IARC の作業部会に参加された小林憲弘氏(国立医薬品食品衛生研究所)及び森本泰夫氏(産業医科大学)による下記の解説が参考になる。また本書対象物質の発がん性評価については参考資料1の 表1 を参照のこと。
  1. ナノ材料のリスク評価の国際動向/小林憲弘(国立医薬品食品衛生研究所)
    (引用)・・・IARC は,2014 年 10 月に幾つかのナノ材料と繊維状物質の発がん性評価文書(第 111 巻)作成の ための会合を開催した。筆者は,発がん性評価の専門家として本会合に招かれ,これらの物質の評価に 携わった。本会合では,カーボンナノチューブ(CNT),フルオロエデナイト,シリコンカーバイドの 3 物質を対象とし,最終的な発がん性分類は表 1 のように決定された。これらの評価結果の中で,特に 大きな議論となったのは,CNT を MWCNT と SWCNT の 2 つに分類して評価することが適切である かどうかということと,CNT の発がん性メカニズムの証拠の強さであった。特に,MWCNT-7 は動物 実験で複数の陽性所見があることからエビデンスレベルを「強い」とすべきであるとの意見が出され たが,現状では物理化学的特性の多様性や慢性試験の結果が少ないことからデータギャップがあり, 発がんメカニズムの把握が困難であることから,最終的にはエビデンスレベルは中等度と判断された。 表1
    IARC_Monographs_Volume_111.gif(31562 byte)

  2. 国際がん研究機関(IARC)におけるカーボンナノチューブを含む つかの繊維状物質の発がん性評価/森本泰夫(産業医科大学)、小林憲弘(国立医薬品食品衛生研究所)




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