FoE 2006年12月1日 ICON アジア会議配布資料
ナノテクノロジー 小さな科学、大きな疑問

情報源:Friends of the Earth Australia 2006年12月1日 ICON アジア会議配布資料
FoEが英語版オリジナルを日本語化したもの
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Friends of the Earth (FoE) Nanotechnology Project

掲載日:2006年12月2日
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http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/nano/FoE_au/FoE_au_big_questions.html

ナノテクノロジー産業のブーム

 「ナノテクノロジー」は、原子や分子レベルで行う物質操作技術を意味します。ナノテクノロジーという用語は、100ナノメートル(nm)以下の大きさの物質を製造・利用する際、使用されます。1ナノメートルは1メートルの10億分の1の長さに相当します(参考までに赤血球は直径約7,000ナノメートル、人間の髪の毛は直径約80,000ナノメートルあります)。

 元来ナノサイズの粒子は火事・火山活動・エンジン燃焼や高熱を用いた溶接・研削などの高温利用産業活動による副生成物でしかありませんでした。しかし今日ではより高い反応性を持つ工業用触媒、透明の日焼け止めや化粧品類、自己清浄機能つき便器、「利口な」監視設備、ターゲット薬剤輸送や「栄養強化」食品など、さまざまな製品を製造する目的で、科学者によって意図的に操作されるようになりました。

 ナノ物質を含む製品の世界販売高は、2005年に総額32億米ドルを記録しました。IBM、トヨタ自動車、デュポン、ネスレ、クラフト、モンサントなどさまざまな企業や世界中の政府機関によって、非常に多額な資金が「次世代の産業革命」として推進される本技術に投入されており、この産業は2011〜2015年までには、1兆〜2.6兆米ドルほどの価値を持つようになるまで成長する可能性があります。


ナノテクノロジー関連語諸問題としては、どのようなものがあるのでしよう?

Friends of the Earth Australia は、ナノテクノロジー関連の問題をいくつか指摘しています。
  • ナノテクノロジーの導入が地域内の全住民に大きな影響を及ぼすにもかかわらず、政府機関は一般市民による意思決定への参加を推進していない。

  • ナノテクノロジーは経済の全ての面を変容させ、大規模な社会混乱を引き起こすと予想されている。しかし「証拠に基づく」毒性リスクをどう管理すべきか、という視点からナノテクノロジー問題の核に迫る議論を制限する動きがある。「なぜ他の技術でなく、ナノテクノロジーなのか」、「ナノテクノロジー利用により誰が利益をこうむるのか、また誰がコストを負担するのか」、「誰がナノテクノロジーを管理し、誰が意思決定に参加できるのか」と言った核心的な疑問の議論の場がない。代わりに「どうすれば毒性リスクを管理できるか」と言った疑問に関する議論に主として制限されている。

  • 安全に関する懸念も検討不十分である。人間の健康や環境に対してナノ物質は深刻なリスクを与えかねないと指摘する、ナノ物質の毒性に関する文献出版数が増加している。しかし世界中のどこにもナノ物質を含有する製品がその製造者、その利用者である消費者、その廃棄物が排出される環境系に対して安全である事を確認した安全基準や法律が確立されていない。

  • ナノ物質を含有することを明記したラベルの貼付が義務付けられていないため、消費者が製品を選択する際、ナノ物質が含有されているかどうかを理解した上で選択することができない。

  • 倫理的に重要な質問が未解決である。収斂ナノスケール技術は新生命体の創造や、人であるということにどういう意味があるのかと言った概念を再び定義しなおすことまで可能とする。ナノ監視は個人のプライバシーに大きなな影響を与える。ナノテクノロジーは、より高度な破壊力を持つ大量破壊兵器の開発を可能とする。


販売延期の必要性

 Friends of the Earth Australia は操作済みナノ物責を含有する製品に関して、専門家による評価を受けた十分な公開安全性試験が終了し、一般市民、同製品を製造する人々、廃棄物の排出先である環境系を保護するための対策が施行されるまでは販売延期を行うよう訴えています。またナノテクノロジーがコミュニティ全体に及ぼす重大な影響を認識した上で、技術導入について一般市民による意思決定参加を義務付けるペきであると考えます。

詳細情報については http://nano.foe.org.au/ 覧頂くか、
またはジョージア/ミラー georgia.miller@foe.arg.au までEメールをお送り下さい。



化学物質問題市民研究会
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