FoE 新興技術プロジェクト 2015年4月17日
新たな研究がナノ物質の環境と健康へのリスクを示す

情報源:Friends of the Earth Emerging Tech Project, Apr 17, 2015
New studies show environmental and health risks of nanomaterials
http://emergingtech.foe.org.au/new-studies-show-risks-of-nanomaterials-to-human-health-and-the-environment/

掲載日:2015年6月23日
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http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/nano/FoE_au/FoE_au_150417_new_studies_show_nano_risk.html

 ナノ物質を含む製品の商品化は加速しているが、市場への投入前になされるべき環境、健康及び安全についての研究は遅々としているように見える。

 最近の二つの研究が、我々はナノ物質に関連する潜在的なリスクについていかにわずかしか知らないか、そして我々の規制当局はこれらのリスクをいかに適切に管理していないかについて示している。

 最近のアメリカのある研究は屋内環境の空中浮遊ナノ粒子への暴露と吸入の程度に目を向けている。その研究は、ナノ物質を含む消費者製品中のナノ物質の約10%が空中に浮遊し、吸入されるが、この暴露に関連する健康リスクはわからないということを発見した。この暴露は製品のライフサイクルにおける様々な段階で起こり得る。

 その研究の暴露レベルについての分析は、新興技術に関するプロジェクト(Project on Emerging Technologies)によりまとめられたデータベースを使用して得たナノ物質を含有する製品の数の推定に基づいた。フランスの義務的登録訳注1) からの2年間のデータに基づけば、これらの数値は低すぎる−すなわち、空気中浮遊状態のナノ物質への実際の暴露レベルはこの研究で推定されたものよりはるかに高いであろうということを意味する。

 その研究は、追加的な研究とデータの必要性及び”消費者製品中のナノ物質報告と表示の明確な必要性”の両方に焦点を合わせながら、多くの勧告をしている。これらの措置は、これらの物質の適切なリスク評価と、人の健康及び健康への影響の追跡のために極めて重要である。

 もうひとつの最近の研究は、排水処理施設がいかに効果的にナノ二酸化チタン(TiO2)を除去しているかを検証している。この研究は、”現実的な水処理化学の下では、ナノTiO2 の相当な放出の可能性”があることを発見した。ナノTiO2 がコーティングされ−これはよくあることであり−、天然の有機物質が存在すると−これは非常に現実的なシナリオである−、約20%のナノTiO2 が除去されずに処理後の排水中に残る。排水処理施設からのこの排出水は環境に放出されるか又は飲料水供給系に入り込むので、このことは重要である。ナノTiO2 の排水処理施設から水系への世界の放出量は、年間 1,100トンから29,200トンの間であると推定されている(訳注21)。

 ナノTiO2 に関連する潜在的な健康と環境リスクにはかなりの懸念がある。いくつかの研究は、人間への有害な健康影響を見つけており、ナノTiO2 は多くの水生生物に有害であることはよく報告されている。太陽光と反応して、生体を破壊するフリーラディカル(遊離基)を生成することが見出されている

   この研究で調査された最善のシナリオでも、ナノTiO2 のアグリゲート(凝集塊)約 5 ppm が溶液中に残留している。この研究は、これらは”増大する反応性と環境を通じての移動の可能性のために、より大きな健康と環境の懸念がある”と、言及している。

 排水から除去されたナノTiO2 であっても、排水処理で生じる下水汚泥は一般的に公共用地や農地で使用されるので、やはり環境に有害である。ナノ物質が土壌と植物の健康にかなりの影響を及ぼすという証拠がすでに出現している。

 地球の友は次のことを求めている。
  1. サプライチェーンを通じてナノ物質の追跡と、リスク評価の実施を可能とするナノ登録
  2. テストにより安全であると判定されるまで、ナノ物質を含む製品の市場へ投入の禁止(モラトリアム)
  3. 消費者の選択を可能とするのために、ナノ物質を含むすべての製品にラベル表示

訳注1:
SAFENANO 2012年3月5日 フランス 2013年にナノ物質の義務的報告を導入

訳注2:ナノサイズ・二酸化チタン


化学物質問題市民研究会
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