欧州労働組合連合(ETUC)2012年10月4日
労働者のナノからの保護は失われたのか?
欧州委員会のナノマテリアルに関する
第二次規制レビューに対する欧州労連の見解


情報源:EUropean Trade Union Confederation (ETUC), Brussels, October 4 2012
Workers' protection lost in the nano-space?
ETUC reaction to the EUropean Commission Second Regulatory Review on Nanomaterials
http://www.etuc.org/a/10394

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会
掲載日:2012年10月11日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/nano/ETUC/121004_ETUC_reaction_to_EC's_2nd_review_nano.html


 欧州委員会は、『ナノマテリアルに関する第二次規制レビュー』[1]を、安全面を含んで『ナノマテリアルのタイプと用途に関する作業用資料』[2]とともに発表した。欧州労働組合連合会(ETUC)は、欧州委員会の努力を歓迎したが、それらは、適切な労働者の保護とナノマテリアルの安全を確実にするためには十分でないことを見つけた。

 ”技術は急速に開発されているが、我々には、欧州委員会が適切に規制の枠組みに対応しているようには見えない”と、健康と安全担当のETUC連合事務局長ジュディス・キルトン-ダーリンは述べた。”予防原則は、公衆と職場の安全衛生−それは欧州委員会がEUのナノテクノロジー政策の中心にすることを確実にするための行動をとらなくてはならないこと重要事項である−を保証するために必須である”。

 欧州委員会の立場はナノテクノロジーの開発はまだ新規分野であり、安全の懸念に対応することには難しい問題があるということを示している。ナノマテリアルを検出することは困難な作業であり、曝露を調査することはもっと複雑である。労働者は、潜在的に最も高いレベルで工業用ナノマテリアルに曝露しているので、欧州労連(ETUC )は、労働安全衛生は欧州連合の戦略の中で優先事項としておかなくてはならないと信じる。

 もし、これが事実なら、化学物質に関するEUのREACH規則で開発された”ノーデータ・ノーマーケット”原則が、全てのナノマテリアルに適用されなくてはならない。不確実性があるなら、予防原則が適用され、労働者に説明されなくてはならない。

 欧州労連(ETUC )は、労働者保護と労働安全衛生に関する包括的な戦略はナノテクノロジーの真の産業利益を拡大するために必要であるということを強調する。欧州労連(ETUC )は、安全面、信頼性のあるテスト手法、及びリスク評価に関する研究がもっと必要であるとする欧州委員会の意見に同意する。

 雇用の創出に関連して、欧州労連(ETUC)は、ナノテクノロジーに関連する直接雇用がEUにおいて300,000〜400,000件であるとする統計[3]には疑問がある。欧州委員会が引用しているもともとの情報源は、どのような手法を用いてこの数値を得たのかに関して明らかにしていない。さらに、その見積りは、雇用市場における構造的な変化を含んでいない。そのことに加えて欧州労連(ETUC)は、多くの潜在的なナノテクノロジーの仕事はナノテクノロジー製品の商品化に由来するかもしれないと信じている。

 欧州委員会が強調するような強い製造業を達成するために、欧州は適切な訓練と技能を必要とする。欧州労連(ETUC)は、これらの高度に多領域な技術を取り扱う技能を持った労働者が足りないということを思い起こす[4]。第二次規制のレビューは、この本質的な面に関する条項が全く欠如している。

 欧州労連(ETUC)はまた、欧州委員会がこの規制の状況を明確にすることができる新たな要素を提供していないという事実、及び、未だにギャプの存在が対応されていないという事実に注意を向ける。欧州労連(ETUC)は、欧州委員会が2009年の決議[訳注1]で欧州議会により強調された規制の欠陥に取り組むことを期待したが、欧州委員会は明らかにその期待に応えなかった。REACHの修正は、潜在的に高いリスクのあるナノマテリアルが適切に規制されるために緊急に必要である。

[1] EC (2012) Second Regulatory Review on Nanomaterials. Brussels 03.10.2012
http://ec.EUropa.EU/nanotechnology/pdf/second_regulatory_review_on_nanomaterials_-_com(2012)_572.pdf

[2] EC (2012) Staff Working Paper. Brussels, 3.10.2012
http://ec.EUropa.EU/information_society/activities/cloudcomputing/docs/com/swd_com_cloud.pdf

[3] High Level Expert Group on ‘Key Enabling Technologies’ (2011) Final report
http://ec.EUropa.EU/enterprise/sect...

[4] EC (2012) Key enabling Technologies: A key to growth and jobs http://EUropa.EU/rapid/pressRelease...


訳注1
欧州議会プレスリリース 2009年4月24日  ナノ物質:欧州議会もっと慎重さを要求 消費者製品中のナノ物質の表示を強く求める
 ”議会は欧州委員会に対し、特に下記の観点からREEACHを見直すことの必要性を検討するよう求める”。
  • 1トン以下で製造又は輸入されるナノ物質の簡略化された登録
  • 全てのナノ物質を新規物質としてみなすこと
  • 全ての登録されたナノ物質について暴露評価を伴った化学物質安全報告書
  • それ自身、調剤中、または成型品中の市場に出される全てのナノ物質に対する届け出要求


化学物質問題市民研究会
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