国際技術評価センター 2011年12月21日 発表
消費者団体
ナノテクノロジーのリスクについて
初めて訴訟を起こす


情報源:International Center for Technology Assessment, December 21, 2011
Consumer Safety Groups File First Lawsuit on Risks of Nanotechnology
http://www.icta.org/files/2011/12/Nano-JT-PR-vFinal-December-2011.pdf

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2012年1月4日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/nano/CTA/ICTA_111221_First_Lawsuit_on_Risks_of_Nano.html


【サンフランシスコ】 消費者製品中のナノテクノロジーの規制されない使用を警告する科学的報告書が増大する中で、消費者製品の安全と環境に取り組む非営利団体の連合が本日、米・食品医薬品局(FDA)を訴えた。(http://www.centerforfoodsafety.org/wp-content/uploads/2011/12/1-Pls-Complaint.pdf)本件は、ナノテクノロジーとナノ物質の健康と環境に及ぼすリスクについての最初の訴訟である。ナノテクノロジーは、原子及び分子レベルで構造を分解し再構築するための強力な技術基盤である。工業的ナノ物質のサイズと化学的特性が独自の特性をもたらすので、これらの特性と微小なサイズ、容積に対する表面積比の著しい増大、及び表面の高い反応性もまた、独自で予測のつかない健康と環境リスクを生成することができる。

 この訴訟は、ほぼ6年前の2006年に公益組織がFDAに提出した請願書に対してFDAが対応するよう求めるものである。この連合は、原告である「地球の友(Friends of theEarth)」、「食品と水の監視(Food and Water Watch)」、「環境健康センター(The Center for Environmental Health)」、「ETCグループ」、及び「農業通商政策研究所(the Institute for Agricultural and Trade Policy)」の代理として、国際技術評価センター(ICTA)に率いられている。

 ”ナノは単に小さいだけではない。それは、根本的に異なる能力を持つ物質を意味する。ますます多くの新奇物質が新たな消費者製品中に染込ませて毎日売られているが、一方FDAは、何もしないで傍観しているだけである”とICTAの弁護士ジョージ・キンベルは述べた。”FDAの不法な遅滞は、不必要に消費者と環境をリスクに曝した”。

 80ページに及ぶ、2006年の要請書は、予測不可能な毒性と、見た限りでは無限の移動性により生じるナノ物質のリスクについての科学的な証拠を報告しており (http://www.icta.org/doc/Nano%20FDA%20petition%20final.pdf)、ナノ特化製品へのラベル表示と健康安全テスの実施の要求、及び、FDAによって承認された製品中のナノ物質の環境と健康影響の分析の要求を含む、いくつかの法的措置をFDAが実施するよう求めた。

 ナノ消費者製品市場の最大分野のひとつである日焼け止め中のナノ物質もまた、この措置の焦点である。要請者らは、FDAはナノ日焼け止めを安全であると仮定するのではなく、新規の成分としてみなして規制し、そのような日焼け止めはFDAがそれらを新規製品として承認するまで/承認しないなら、それらを市場から引き上げることを求めた。

 ”年月がたっても、FDAは最低限のことをせず、ナノ日焼け止めにラベル表示を求めることもしていない。これは基本的な消費者の権利である”と地球の友のイアン・イルミナトは述べた。”我々は、1800年代に戻ったようだ。誰も不可解な化学物質など使いたくないし、使うことを強制されるべきではない”。

 2006年以来、環境保護局(EPA)、監察総監室(OIG)、政府監査院(GAO)による機関出版物を含んで、多くの研究と報告書が、ナノ物質のヒト健康と環境に及ぼす潜在的な影響について著しいデータギャップがあることを認めている。最も心配な研究は、マウスを使った研究でナノ酸化チタンが吸入され摂取されると脳の機能に影響を与え、腫瘍の原因となり、子孫に問題を及ぼすかもしれないDNAに変化を引き起こすことができることを示していることである。

 ”消費者が毎日使用する製品中で、規制されておらずラベル表示のないナノ物質が使用されることをFDAが許し続けることは容認できない”と食品と水の監視(Food and Water Watch)のエグゼクティブ・ディレクターであるウェノナー・ヒュンターは述べた。”FDAがその使命に従い、尚物質の健康及び環境リスクを評価することによって公衆衛生を守り、消費者がこれらの新たな物質がどこで使用されているのか知ることができるようラベル表示を求める時が来ている”。

 ”科学的な合意は、ナノ物質はその新規な能力と潜在的なリスクを説明するために特定のテスト実施を求めるということである。FDAは、公衆の健康を守るために広範な規制の取り組みの中で上市前安全評価の一環としてそのようなテストをしなくてはならない”と農業通商政策研究所のスティーブ・サッパンは述べた。

さらなる情報:http://www.icta.org/about/

CTAについて  CTAは、社会に関する技術的影響の十分な評価と分析を公衆に提供する非営利、無党派組織である。CTAは、そのナノ技術プロジェクト www.nanoaction.org を通じてナノ技術の適切な監視に向けて取り組んでいる。  CTAは、その使命を達成するために、行政申し立てを含む様々な法的及び政策的ツールを用いる。これはCTAがナノ技術の健康と環境リスクに関して起こした二番目の申し立てである。2006年5月にCTAは食品医薬品局(FDA)に消費者製品、特にナノ化粧品とナノ日焼け止めに関する申し立てを起こした。CTAは、技術の応用又は技術システムの結果として生じる事があり得る経済的、倫理的、社会的、環境的、及び政治的影響を十分に精査するために取り組んでいる。CTAは、そのナノテクノロジー・プロジェクトであるナノアクション(NanoAction)を通じてナノ技術の適切な監督に向けて活動している。CTAは食品安全センター(the Center for Food Safety)と姉妹関係にある。



化学物質問題市民研究会
トップページに戻る