国際環境法センター (CIEL)ニュース
2012年2月6日
ナノ物質
EUの規則 REACHの外で


情報源:Center for International Environmental Law (CIEL) , February 6, 2012
Nanomaterials "Just Out of REACH" of European Regulations
http://www.ciel.org/Chem/JustOutofREACH_Feb2012.html

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2012年2月16日
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http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/nano/CIEL/CIEL_120206_News_Just_Out_of_REACH.html


【ジュネーブ】 欧州連合の化学物質に関する主要な規則であるREACHは、ナノ物質を特定する、又は管理することに失敗しつつある。これが、非営利団体である国際環境法センター(CIEL)の新たな報告書『ナノ物質:REACHの外で REACHはナノ物質を規制することにどのように失敗しており、どのようにそれを直すことができるのか』の結論である。驚くべき特性を備えた微細な人工の粒子であるナノ物質は、化粧品、衣料品、家電製品、その他の製品中の成分要素として急速に使用されるようになっている。

 この報告書の主著者であるCIELのデービッド・アゾレイによれば、”3年前、欧州委員会は、REACHは理論的にナノ粒子をカバーできると宣言した。しかし、REACHの’ノーデータ・ノーマーケット’原則に反して”、ナノ物質はそれらの潜在的なリスクに関してほんのわずかな情報しかないのに、あるいは全くないのに、市場に導入され続けている。問題は、REACH規則が法的なギャップを含んでおり、ナノ物質について完全に無力なままにさせていることにある”。

 この報告書は、化学物質の製造者と輸入者に健康と安全に関わる重要な情報を提供することを求める本質的に重要な段階であるREACHの登録におけるナノ物質にとっての4つの主要なギャップについて記述している。

  • REACHはナノ物質を定義しておらず、ナノ物質に特化した条項を何も含んでいない。
  • ほとんどのナノ物質は、2018年まで登録を逃れることができ、現在もEU市場に出すことができる。
  • REACHの登録スケジュールは、対象化学物質の量に依存するので、一般的に非常に少量で製造される全てのナノ物質は本質的に登録の機会を失う。
  • REACHのテスト指針はナノ物質の特別の特性を考慮していない。
 この報告書”REACHから切り離せ”はまた、これらの抜け穴をふさぐために可能な修正を探求している。あるものについては、ナノテクノロジーに関する特別の条項を追加してREACHを再調整することを示唆している。しかし、それは政策的に不可能であり、むしろ現状の規則をさらに弱めることになりかねない。そのほかには、技術的ガイダンスを変更することの可能性も示唆しているが、この報告書はそのような解決では既存の法的ギャップを埋めることはできないことを示している。

 この報告書は、REACHを再検討するよりむしろ、REACHと注意深く整合性をもたせながら、しかし具体的にナノ物質に合わせた、独立した規則を開発することを提案している。アゾレーによれば、”REACHは、これらの本質的な抜け穴をふさぐナノの”つぎあて(ナノ−パッチ)”を伴うならナノ物質をもっとよく理解し、規制する有用なツールであることを証明することができる”。そのような規則は、明快で法的拘束力のあるナノ物質のための条項を確立し、EUにおけるナノ物質の安全な製造と使用のための透明で予測可能な法的環境を作り出すであろう。

 この解決は、ナノ物質が将来REACHに追加的な変更を求めることなく、よりよく理解されるよう、柔軟性があり、将来の調整を可能とするようにすべきである。”柔軟性はナノ物質を規制する取り組みにおいて重要な特性に違いない”と、アゾレーは述べている。”我々の理解は、まだ非常に限られているが、それは今後さらに展開し、法的対応もまたそうなるであろう。REACHの”ナノのつぎあて”は、REACHに柔軟性を加えるであろう。

メディアへの連絡先:
David Azoulay, Geneva office Managing Attorney
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Just Out of Reach How REACH Is Failing to Regulate Nanomaterials and How it Can Be Fixed
6 February 2012 David Azoulay,
Managing Attorney, Geneva Office, Switzerland
The Center for International Environmental Law (CIEL)


化学物質問題市民研究会
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