ANSES プレスリリース 2014年5月15日
あるナノ物質の毒性を強調しつつ
フランス食品環境労働衛生安全庁(ANSES) は
より強いナノ物質規制の枠組みを求めている


情報源:ANSES - French Agency for Food, Environmental and
Occupational Health & Safety, Press Release, May 15, 2014
Highlighting the toxicity of certain nanomaterials,
ANSES is calling for a stronger regulatory framework
http://www.anses.fr/en/content/highlighting-toxicity-certain-nanomaterials-
anses-calling-stronger-regulatory-framework


訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2014年6月15日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/nano/ANSES/
140515_ANSES_calls_for_stronger_nano_framework.html


 日常生活において広い範囲でのナノ物質と、それを取り巻く多くの疑問に直面して、フランス食品環境労働衛生安全庁(ANSES)は本日、工業ナノ物質に関連する健康と環境に関する入手可能な文献のレビュー(pdf;仏文)を発表した。これは、科学的理解を明確にし、あるナノ物質の生物や環境への有害影響を示すのに役に立つであろう。それはまた、人や環境が暴露している様々な状況を理解することの複雑さ及び、既存のリスク評価手法の限界を強調するものである。この複雑さのために、ナノ物質に関連する具体的なリスクを評価することは難しい。それには時間がかかるのだから、ANSES は、欧州レベルでのより強い規制の枠組みを通じてリスク管理を改善する措置を直ちに実施することを勧告する。

 いくつかの”古い”ナノ物質は一世紀近くも周囲に存在し、あるナノ物質はまた天然に作られることがある。しかし、産業的応用の広い多様性をもたらした技術的発展が出現したのは1990年代の後半からであった。ナノ物質は現在、多くの日用品中に見出される。化粧品、衣料品、塗料、医療用途などである。この技術的発展は、それらの潜在的な健康影響に関する研究を伴ったが、健康と環境に関するそれらの影響に関しては、多くの疑いが残っている。この不確実性が、これらのリスクが管理される程度と適切な規制の枠組みについての疑問をもたらしている。

現在の知識の問題と最新情報

 従って ANSES はナノ物質の調査に高い優先度を置き、この課題に非常に多大な専門的評価作業を実施している。同時に NSES はまた、ナノ遺伝子毒性共同作業(Nanogenotox Joint Action)(訳注1)をコーディネートしたが、その科学的目的は欧州委員会と加盟国に対し、工業ナノ物質の潜在的な遺伝子毒性を検出するための堅固で信頼性のある手法を提供することにあった。

 2012年に ANSES は、ナノ物質への暴露に関連する健康と環境の問題について継続的に最新情報を得ることを使命として、恒久的な専門家グループを設立し、また関心をもつ利害関係者も含む”ナノ物質と健康”に関する会話委員会(dialogue committee )も設立した。

 最終的に ANSES は、ナノ物質の健康に及ぼす影響及び、国内及び国際レベルの両方において対応する規制と社会的文脈の現状の知識を更新するため国向け要求を発信した。この作業の結果はこの新たな報告書の中で発表された。

 この報告書における知識のまとめは、科学的知識の進歩にもかかわらず、ナノ物質の健康と環境に及ぼす影響についての主要な不確実性は依然として残ったままであることを示している。それは、広い様々な有害特性(hazard characteristics)を特定し、人と環境の暴露状況を理解するのに大きな複雑さが関わっており、したがってそのことが具体的なリスク評価を実施することを困難にしていると述べている。そのような評価をするのに時間がかかるなら、ANSES は欧州レベルでより強い規制の枠組みを通じて、リスク評価を改善するための措置を遅滞なく実施することを勧告する。

ナノ物質の生物へのある影響

 世界中で利用可能な全てのデータと科学的出版物のレビューを利用しながら、この報告書は生物に及ぼすことが特定された影響を報告する。生体外(in vitro)及び生体内(in vivo)での動物テストに基づき、報告書は、ナノ物質が生理学的なバリアを通過する能力を初め論証し、疫学的研究の欠如のために現在はヒトに直接的に関連するデータはないと言及しつつ、あるナノ物質の毒性を強調した。

 これらの要素があり、この課題の複雑さに直面しているので、ANSESは、我々の知識の中にある多くの科学的不確実性を減らし、人と環境をよりよく保護する規制と基準を開発するための研究を促進するという展望を持って、いくつかの勧告を発表した。

ANSES の勧告

 研究に関してANSES は、製品の全ライフサイクルを通じて、ナノ物質の特性と有害性(hazards)の知識を開発するために、多領域プロジェクトを実施することを勧告している。これは主に、市場に出すことを意図したナノ物質を含む製品の健康リスクを評価するための適切な安全テストの開発を促進することに関わっている。

 さらに、製品の全ライフサイクルを考慮して、各物質とその用途をよりよく特性化するために、ANSES は、欧州レベルで工業ナノ物質のための規制の枠組みを直ちに強化することを求めている。

 ANSES は、あるナノ物質の毒性に関する利用可能な一連の科学的データは、欧州CLP(物質及び混合物の分類、ラベル表示及び包装に関する規則)及びREACH(化学物質)規則に従ってそれらを規制するこことを検討するために十分であると信じている。この文脈の中で、ANSES は最近、ナノ物質の具体的な特性を考慮するために REACH 規則を適合させる勧告を発表した(原注1)。

 この規制の枠組みは、主に集団の暴露の特性化の改善への展望、及び実施されるべきリスク評価のより良い目標をもって、消費者製品で使用されることが意図されているナノ物質の製造から流通までの追跡性を強化するであろう。これらのリスク評価は、REACH 規則の枠組みの中で、ナノ物質の使用に関する制限、又はそれらの禁止さえもたらすことがあるであろう。

原注1: ANSES Opinion on the modification of the REACh annexes with a view to taking nanomaterials into consideration
 更なる情報
Read the Opinion and Report "ANSES Opinion and Report on the assessment of the risks associated with nanomaterials - Issues and update of current knowledge" (in French)

Read the press kit "Assessment of the risks associated with nanomaterials, issues and update of current knowledge"

Read our close-up on Nanomaterials

Find out more about the dialogue committee on "Nanomaterials and health"

Read the final report from the Nanogenotox research project

Read our article on the REACh regulation

Read the Opinion on the modification of the REACh annexes with a view to taking nanomaterials into consideration (in French)

Visit the R-Nano website


訳注1:Nanogenotox Joint Action
Nanogenotox Final Report now available (SAFENANO News, 26 Jul 2013)



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