ZMWG 2011年1月 INC2 解説資料
製品中の水銀

情報源:Zero Mercury Working Group, January 2011
INC 2 Briefing Paper Series
Mercury in Products
http://www.zeromercury.org/UNEP_developments/ZMWG5_Products_FS0111_04.pdf

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2011年4月6日
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http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/mercury/zmwg/INC2_Briefing_Paper_Series/Mercury_in_Products.html


水銀はどのように使用されているか
 水銀は温度計から小型電池まで広範な製品で使用されている。現在、水銀を必要とするほとんど全ての製品について水銀を使用しない代替品があるが、その移行の速さと容易さは製品のカテゴリーによって異なる。製品中で使用される水銀の65〜75%は、電池、測定制御機器、電子機器である。これらの3種類の製品の全ては、水銀を使用しない代替製品が広く使用されており、したがって短期的な条約管理措置に適している。

 他の製品カテゴリーについては、使用されている水銀の量は少ないが、人への曝露は著しいものがある。例えば、水銀添加石けん及び化粧品(美白クリーム)は皮膚から水銀が吸収され、健康影響を及ぼす。同様に水銀含有の局所的消毒(訳注:マーキュロなど)は皮膚を通じて不必要な曝露を引き起こす。ポリウレタンエラストマー製造での水銀使用は、体育館の床材やその他の用途で子どもやその他の人々に曝露をもたらす。

 塗料と農薬は歴史的に水銀を大量に使用している。水銀含有農薬と塗料がまだどのくらい製造されているのか、特に開発途上国では明かでないが、たとえそのような使用が減少していても、条約にそれらを含めることで再び使用されることを防止することができる。

条約管理措置

 水銀を使用しない代替製品が効果的で経済的に実行可能なら、その廃止を明確に義務付けなくてはならない。実行可能で現在入手可能な代替製品がなけば、条約は定期的な見直しを行い、その時点で入手可能である適切な代替を特定できるようAnnexを最新にすべきである。

カテゴリー 主要製品 2005年
世界需要
(トン)
主要な事実 解決
電池
訳注1
・ボタン電池
(時計、おもちゃ、補聴器)
・円筒電池
(懐中電灯、電子機器)
300-600 ・腐食低減のために水銀使用
・ボタン電池は最大の水銀使用電池
・中国での限定的製造を除いて、円筒電池には最早水銀は使用されていない
・世界中で水銀を使用しない非腐食性ボタン電池が開発されている
・世界の水銀を使用しない製品の増加を促進するために水銀廃止政策が必要
測定/制御
機器
医療機器
(体温計、血圧計、気圧計、液体比重計)
150-350 ・このカテゴリー中での水銀使用は医療機器が最大
・非水銀機器は有効であることが立証されており、広く入手可能
・水銀製品を廃止するためにWHO-HCWHの世界的取り組みが保健省と保健機関にツールとリソースを提供
・高品質非水銀製品の製造を促進するために、いくつかの国では能力向上を図ることが必要
電子機器 スイッチ、
リレー
(ポンプ回路、サーモスタット、制御盤等の部品)
150-350 ・有効な非水銀電子代替製品があり、広く入手可能 ・EUのRoHS指令はこれらの製品中での水銀使用を制限
・多くの国がこのような制限を課そうとしている
電灯 蛍光灯 100-150 ・製造技術の向上でランプ毎の水銀使用量は著しく減少
・多くのランプ応用で経済的に実行可能な非水銀代替はまだ入手可能ではない
・LEDランプ又はその他の技術がいずれ水銀ランプに置き換わることが期待される
・継続的技術改善及び最大限の水銀含有量制限が、過渡期に水銀使用を最小にし、時代遅れのランプや製造技術をなくす
歯科利用 詰め物としての水銀アマルガム 240-300 ・非水銀製品がほとんどのケースで有効であるが、途上国では利用可能性とコストが課題 ・歯科での水銀使用を禁止している国がある
・WHOは虫歯予防と教育、及び水銀使用の低減を推進
可塑剤 ポリウレタン製造での触媒 100-115* ・水銀触媒が体育館の床材などの最終製品中に出る
・ほとんど全ての応用に水銀代替が存在する
EUは他の地域よりもこの使用に関し多くのデータを持っている
塗料と農薬 水銀は抗菌剤/殺生物剤として使用される 4-10
(EU需要)*
・非水銀代替が広く使用されている ・水銀含有農薬の在庫が非常に多量にあり、販売又は輸出される可能性がある ・多くの国で禁止されている
石けん
化粧品
局部的消毒
・石けん中の消毒剤
・化粧品中の保存剤
1.1-2.5
(EU需要)*
・非水銀代替品が広く使用されている ・多くの国で禁止
* Figures for 2007 consumption in DG ENV, 2008. Options for reducing mercury use in products and applications, and the fate of mercury already circulating in society. COWI AS and Concorde East/West Sprl for the European Commission, Dec. 2008, Brussels.
UNEP, 2006. Summary of supply, trade and demand information on mercury. Analysis requested by UNEP Governing Council decisions 23/9 IV. United Nations Environment Programme, Chemicals Branch, Geneva.
+ http://ec.europa.eu/environment/waste/weee/index_en.htm


訳注1水銀電池/ウィキペディア
 特性が優れているため、古くからボタン型電池として、1970年代までのカメラ(露出計や電子シャッターなど)や補聴器用などに広く用いられてきたが、地球環境保護の観点から水銀の使用を廃止する傾向にあり、日本では1995年から製造を中止、欧州もRoHSにて5ppm以上の水銀を含有する電池の流通を規制しているが[1]、市場にはほとんど流通しておらず入手は困難である。使用済みの水銀電池は、小売店により回収されリサイクルされる。



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