![]() ZMWG 2011年1月 INC2 解説資料
水銀廃棄物とバーゼル条約 情報源:Zero Mercury Working Group, January 2011 INC 2 Briefing Paper Series Mercury Waste and the Basel Convention http://www.zeromercury.org/UNEP_developments/ZMWG8_Mercury_Waste_Basel.pdf 訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会) http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/ 掲載日:2011年3月28日 このページへのリンク: http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/mercury/zmwg/INC2_Briefing_Paper_Series/Mercury_Waste_Basel.html 廃棄物からの水銀放出の管理 水銀廃棄物は、使用済み製品から火力発電所やその他の大規模産業施設の汚染管理残留物まで、広範な廃棄物からなる。 これらの廃棄物は様々な方法で管理されており、もし管理が不適切なら多量の水銀放出をもたらす可能性がある。したがって、水銀廃棄物の環境的に適切な管理と処分はINCが考慮すべき重要な課題である。(廃棄物に関する議論については、ZMWGの廃棄物ファクト・シートを参照のこと)。 水銀条約廃棄物条項についてのINCの検討は、水銀廃棄物をカバーする類似の管理体系である水銀条約と有害廃棄物の国境を越える移動及びその処分の規制に関するバーゼル条約との適切な関係に目を向けるべきである。INCの課題は、水銀条約の目的を達成するためのバーゼル条約との関連を見つけることであるが、可能な場合には重複を避けることである。 有害廃棄物とバーゼル条約 バーゼル条約は有害廃棄物の国境を越える移動を管理するための世界の枠組みを確立する。バーゼル条約の主要な原則は、1)有害廃棄物生成の削減;2)有害廃棄物の国境を越える移動の削減;3)有害廃棄物はそれを発生させた国で処理し処分されなくてはならない;4)目的が処分であろうとリサイクルであろうと、特に富める国から貧しい国への有害廃棄物の投棄の禁止−である。 バーゼル条約の根底にある重要な概念は、”環境的に適切な管理(ESM)”である。有害廃棄物のESMとは、”有害廃棄物からもたらされるかもしれない有害影響から人の健康と環境を保護するような方法で廃棄物が管理されることを確実にするための全ての実行可能な措置をとること”を意味する。ESMは、廃棄物を削減する又は廃絶するために下流アプローチ(end-ofpipe technologies)と上流アプローチ(upstream solutions)の両方を視野に入れている。 バーゼル条約の下では、有害廃棄物は様々な条項1により規制されており、また同条約は、石炭火力発電所からの飛灰や産業排気ガス浄化のための汚染管理機器からの水銀含有廃棄物に関する技術指針を開発した。これらに加えて、バーゼル条約は他の水銀含有廃棄物に関する新たな技術指針の開発を立ち上げた。 バーゼル条約の限界 バーゼル条約には下記に示すようにいくつかの限界がある。
バーゼル条約はいつ水銀が商品になるのか定義していないので、水銀条約は、商品水銀が明確に廃棄物水銀と区別できることを確実にするために、この問題を明確にするかもしれない。この区別は、廃棄物としてではなく保管のための国境を越える移動の問題で重要になるであろう。 水銀保管と廃棄物 水銀の保管は、バーゼル条約と水銀条約との間にある明確にする必要のあるもうひとつの課題である。バーゼル条約は、”保管”という言葉を有害廃棄物処分のひとつの作業として定義している。 それは有害廃棄物処分の作業なので、バーゼル条約はこれらの問題についての権限を主張する。しかし、保管の全ての形態が廃棄物というわけではない。商品金属水銀はの保管は、アメリカのような国で実施されているように、この非廃棄物アプローチの例である。 さらに、金属水銀の保管を廃棄物管理とすることは、外部発生源からの廃棄物を受け入れることに関する法的制限という理由のために、政府が地域的な解決に協力するのを難しくするかもしれない。したがって、水銀を永久保管する施設を持たず、余剰水銀を早急に高価にならずに(他国での保管のために)輸送したいと望む国は、この非廃棄物アプローチをとりたいと望むかもしれない。 水銀条約とバーゼル条約の保管に対する二つの異なるアプローチを尊重して、廃棄物及び商品金属水銀の両方の保管をカバーする法的及び技術的指針は、両条約により徹底的に議論される必要がある。 水銀条約の規定 ひと口で言えば、水銀条約はバーゼル条約の欠点を回避するために優れた機会を提供する。 政府間交渉委員会(INC)は、特に締約国の目標と責任を定義するに当り、広範で包括的な展望からの水銀廃棄物問題に取り組むために最良の位置にある。何が廃棄物で何が製品水銀か、または水銀レベル又は含有量の定義に飛び込むことは魅惑的ではあるが、直ぐに水銀廃棄物の具体的な定義又は濃度レベルを詳細にする必要はない。政府間交渉委員会(INC)が次のことを規定することによって条約の政策目標を設定することの方が、より重要である。
脚注1: バーゼル条約第1条(a) は、附属書Iに掲げるいずれかの分類に属する廃棄物(附属書IIIに掲げるいずれの特性も有しないものを除く。)を適用範囲として定義している。規制される廃棄物はさらに付属書VIII及びIXに掲げるリストによって明確にされている。水銀と水銀化合物は付属書TのY29 としてリストされている。さらに水銀廃棄物は付属書VIIIで下記のコードで示されている。
訳注: 有害廃棄物の国境を越える移動及びその処分の規制に関するバーゼル条約(環境省訳) |