ZMWG 2011年1月 INC2 解説資料
水銀の大気汚染
情報源:Zero Mercury Working Group, January 2011
INC 2 Briefing Paper Series
Global Mercury Supply
http://www.zeromercury.org/UNEP_developments/ZMWG3_Supply_FS0111_03.pdf

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2011年3月31日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/mercury/
zmwg/INC2_Briefing_Paper_Series/Global_Mercury_Supply.html


 
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 元素としての水銀は、環境中で自然に生じる。しかし、産業革命以来、人間の活動が世界の水銀汚染に著しく寄与している。大気に放出される水銀は、その放出源から遠く離れた場所に長距離移動することができる。一度環境中に出ると、水銀はメチル水銀に変換することができるが、それは食物連鎖中で生物濃縮される。その結果、直接的水銀汚染源ではない北極のような場所でも、水銀汚染は世界の食料供給の一部である海洋哺乳類や魚類の体内に危険なレベルにまで蓄積する。

水銀の大気放出源

 化石燃料の燃焼が、世界中の人間活動による水銀大気放出の主要な源である。石炭、天然ガス、その他の石油燃料は天然の不純物として水銀を含んでいる。大量の水銀が、石炭焚き火力発電所、産業用ボイラー、住宅暖房から大気と環境中に放出されている。金属鉱石及び石灰岩もまた、天然に生じた水銀を含んでおり、金属精錬・精製、及びセメント製造で放出される。水銀はまた、意図的にある種の製品に加えられ、それらが焼却されると大気中に放出される。


Arctic Monitoring and Assessment Programme/United Nations Environment Programme Chemicals Branch, Technical Background Report to the Global Atmospheric Mercury Assessment, Requested by UNEP Governing Council decision 24/3, 2008, Table 3.13.

水銀条約による対応

 水銀条約は、水銀の大気への放出を削減するために、化石燃料製造及び燃焼、金属鉱石精錬・精製、セメント製造、廃棄物焼却のような主要な放出源に焦点を合わせつつ、法的拘束力のある措置を含まなくてはならない。条約は、新規及び既存の両方の放出源を管理するために、最良の環境に適切な実施(BEP)を促進するとともに、最良の利用可能な技術(BAT)を求めるべきである。

 新設の設備とともに既存の設備を管理することは、多くの産業設備の長期寿命を考えれば、放出を削減するために必要なことである。例えば、アメリカのモンタナのあるセメント工場は、操業100年を祝ったばかりである1。4つの主要な源における既存設備空の放出(下記表を参照)は、2005年では約1,356トンであると見積もられている2。予想される経済成長の下では、これらの4つの分野で2020年までに年間放出は1,771トンになると推定されている。放出管理をすることにより、既存及び新規の源から年間放出量を約790トンにまで削減することができるであろう。これは、年間ほぼ1000トンの削減である。

水銀放出(トン)
  化石燃料
燃焼
金属精錬
精製
セメント 廃棄物
焼却
合計
2005年 880 252 189 35 1356
2020年
(現状のまま)
1201 252 283 35 1771
2020年
(管理された場合)
545 155 83 7 790
AMAP/UNEP, 2008. Technical Background Report to the Global Atmospheric Mercury Assessment.
Arctic Monitoring and Assessment Programme/UNEP Chemicals Branch. 159 pp.

 放出管理の効果は、連続放出監視システム(CEMS)を使用して監視されるべきである(本件に関するZMWGの解説シリーズを参照のこと)。


脚注:
  • 1 Malby, A. “Cementing a Century: Trident Plant marks 100 years,” The Belgrade News Sept 24,2010.
  • 2 AMAP/UNEP, 2008. Technical Background Report to the Global Atmospheric Mercury Assessment. Arctic Monitoring and Assessment Programme/UNEP Chemicals Branch. 159 pp.


化学物質問題市民研究会
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