EST 2014年1月15日
中国のPVC製造ラインにおける水銀形成と分布
  (アブストラクト)


情報源:Environ. Sci. Technol, January 15, 2014
Mercury Transformation and Distribution across a PVC Production Line in China
Wen Ren , Lei Duan , Yuqun Zhuo , Wu Zhen Zhu , Wen Du , Yi Zhong An , Jun Ling Xu , Chi Zhang , and Changhe Chen
http://pubs.acs.org/doi/abs/10.1021/es404147c?prevSearch=
%255BCollectionKey%253A%2B%252210.1555%252Fcategory.358319304%2522%255D&searchHistoryKey=


訳:安間 武(化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2014年1月22日
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http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/mercury/news/140115_EST_Mercury_PVC_Production_China.html

 カーバイド法(訳注1)による塩化ビニル(PVC)製造は大量の水銀を含む触媒を使用するので、中国における最も重要な人間活動による水銀排出源のひとつである。PVC製造からの水銀の排出を測定するために、我々はカーバイド法のフローチャートを確立し、それにより各段階における材料/製品の水銀含有量を定量化した。

 その結果、総水銀(HgT)の71.5%は触媒から失われ、そのうち 46.0%は水銀除去装置により回収されたことが示された。我々は、総水銀(HgT)の3.7%は環境中に、その大部分は固体廃棄物及び塩酸のような副産物に放出されると決定した。PVC最終製品中からは水銀は検出されなかった。しかし、我々は全体の系を通じて水銀の78.2%だけしか把握することができず、残りの21.8%はマスバランスの中で不明であった。概略推定によれば、”不明”水銀の大部分は装置及び下流パイプラインの内面に沈殿物として付着し、大気中への放出は、総水銀(HgT)の1%以下である。水銀除去装置を備えたPVC製造ラインについて、水銀の大気への放出は4.9 g/t-PVCであると推定された。

 現在、ほとんどすべてのカーバイド法設備は水銀除去装置を備えており、それにより中国での水銀放出量を年間500トン削減しているかもしれない。


訳注1:中国におけるカーバイド法PVC製造
(アセチレン法ともいう)
訳注:水銀条約 第5条 水銀又は水銀化合物が使用される製造プロセス
IPEN 新たな水銀条約へのガイド
  • 水銀を使用する廃止されるプロセスは、塩素アルカリ製造(2025年)と触媒として水銀又は水銀化合物を使用するアセトアルデヒド製造(2018年)である。

  • 水銀を使用する制限されるプロセスは、廃止期日の規定なしに水銀使用を続けることが許される。これらには、塩化ビニル・モノマー(VCM)製造、ナトリウム又はカリウムのメチラート又はエチラート、及びポリウレタン製造がある。

  • VCM製造は、データ欠如のためUNEPの大気排出目録にはないことに留意すること。石炭と水銀触媒を使用するVCM製造は中国に特有であり、潜在的に莫大な水銀放出源である。2008年に完成した 『UNEP/AMAP Technical Background Report to the Global Atmospheric Mercury Assessment』 によれば、”中国における調査は、2004年に推定620トンの水銀需要、又はこの応用を確認した。この水銀の使用は、中国の経済ブームにより、年間25から30%増大している。・・・”。

  • 塩化ビニル・モノマー(VCM)製造、ナトリウム又はカリウムのメチラート又はエチラート、及びポリウレタン製造について、締約国は、製造単位当りの水銀使用を2020年には2010年比で50%削減することになっている。これは”施設当り”ベースで計算されており、新規施設が建設されると、総水銀使用量と総水銀放出量は増加することに留意すること。



化学物質問題市民研究会
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