BBC News  2012年10月11日
アフリカのゴールドラッシュの誘惑にかられて
子どもたちが学校を辞めていく


情報源:BBC News 11 October 2012
> Africa gold rush lures children out of school
http://www.bbc.co.uk/news/business-19870729

訳:野口知美 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2012年11月1日
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http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/mercury/news/121011_BBC_Africa_gold_rush_children.html



Photo: BBC/AFP
10歳位の子とも達が家族を養うために1日1ドル稼ぐために鉱山で働いていることが分かった。
 国連の国際労働機関(ILO)によれば、5歳から17歳までの子ども100万人が小規模採鉱に携わっており、世界中で採掘を行っている。

 アフリカでは小規模金採鉱の全労働者の30〜50%が18歳未満の子どもである、とILOは推定している。

 ここ3年間の金採掘産業のブームのおかげで、ブルキナファソはアフリカ大陸で4番目の金産出国になったが、同時にこの金採掘ブームの誘惑にかられた子どもたちが学校を辞めていくようになってしまった。

 2003年、ブルキナファソ政府は投資家の意欲を高めるために採鉱法を改正し、2007年から2011年の間、この西アフリカの国にいくつもの産業採掘場が開発された。

 「金を採掘するために学校を中退した子どもがどれだけいるか、正確な人数はまだ分かっていない」と、基礎教育・識字大臣のMoussa Ouedraogoは言う。

 「学校に通っている子どもたちの多くが年中、鉱山に入り浸って石を砕き、砂金をふるいにかけ、水を運び、料理をしながら働いているということは有名だ。学校が休みの日や長期休暇の間、鉱山に来る子どもたちもいる」。

 こうしたことは、アフリカ大陸のあちこちでよく耳にする話だ。ケニア西部のニャンザ州では、推定1万5千人の子どもたちが金鉱山で働いている。

 「学校の中退率を見てみると、学校が金鉱山に近ければ近いほど就学率は低くなっている」と、地域教育理事長のGeoffrey Cherongisは言う。

 ミゴリの児童担当官のEmily Wagaは金採掘に子どもを関わらせることについて、学生時代を無駄にするという意味においても、健康を害するという意味においても、危険をはらむことであると指摘している。

 「事実を報告するために人々の善意を当てにしているけれども、両親が子どもたちに鉱山での仕事を探すよう勧めている現状ではなかなか難しい」と、彼女は続ける。

「人々は貧困に陥ると、収入を得ることばかりで危険を顧みなくなるのだ」。

両親の承認

 西アフリカの金は南アフリカの金ほど純度は高くないが、世界市場において現在も1グラム(0.03オンス)当たり約36ドル(22£)の値段で売ることができる。

 しかし、鉱山で働く子どもたちがキラキラ輝く破片を求めて一日中川の中を探したとしても、運がよくて1.20ドルしかもらうことができないであろう。

 お腹が空いたまま学校に行くのはこりごりだと言う子どももいる。

 「この鉱山で働く方がましさ。一日の終わりにはお金をもらって、それを使うことができるんだから」と、彼は言う。

 「僕たちを雇ってくれた人はお金持ちだって聞いてる。でも僕はちょっとお金をもらって、いい服や食べ物を母さんに買ってやりたいだけなんだ」。

 彼は続ける。「うちの親たちだって、僕のやってることは正しいって言ってるよ。自分の服も買えるしね。学校に行くことに何の意味があるんだい?」

 別の10代の少年が言う。「一生懸命働いて、ツキが巡ってくるのを待たなくちゃ。何か手に入るまで、家には戻れない。だって、みんなに笑われるからね」。

 「鉱山で雇われたその晩に給料を持って帰って来ることのできる息子を学校に通わせるというのは、両親にとって難しい選択でしょう」と、ケニアのある鉱区の政府関係者のJack Omoraは言う。

 子どもたちを学校に通わせ続けるよう両親に説得してきた彼の努力は無駄に終わったそうだ。

 「教育を推進したところで、諸悪の根源である貧困の連鎖を断ち切ることがほとんど不可能なのだから、躊躇してしまうところもある」と彼は言う。

 「金採掘の影響は、教育分野だけにとどまらない」と言うのは、ブルキナファソの教育大臣のKoumba Bolyである。
 彼は、もし教育にひどく影響が及ぶようなことがあれば、国の開発全般が台無しになるのではないかと懸念しており、9月に学校が再開されたときには、いかなる子どもも採掘場に立ち入ってはならないという禁止令が発布されていたと指摘している。

女の子たちのパワー

 マダガスカルのアンカヴァンドラでは、地域の貧困と過去最高の世界の金価格とが相まって、金採掘が抗しがたい魅力となっている。学校を辞めてしまう子どもたちも出てきており、そのほとんどが女の子である。

 「どうして女の子かっていうと、男の子はたいていコブウシの世話をしなくちゃならないからさ」と、12歳の少年は言う。コブウシとは、背中が丸く盛り上がった特徴的な牛のことをいう。

 金採掘の作業は内容的にきつい。川の両岸を掘り起こし、その土や岩を木製の器に積み上げ、近くの小川まで持って行き、選鉱なべで洗い流さなければならない。

 マダガスカルには砂金を抽出する鉱山労働者が約15万人おり、年間3〜4トンの金を生産している。

 各国の平均寿命、教育、所得に基づく国連の人間開発指数で見ると、マダガスカルは169か国中135位であり、2千万人いる国民の70%近くが1日1.25ドル以下で生活していると推定されている。

 子どもたちは金を探して週に6日間働けば、14ドルも稼ぐことができる。洗濯などの雑務で稼げる額の2倍以上である。

 女の子たちは両親の承認を得て仕事をしており、その収入は服や食べ物を買うために使っていると言う。
 金採掘国の政府が子どもたちの鉱山労働を阻止する法案を具体的に示さない限り、この状況が変化する可能性はほとんどない。

 しかしながら、金採掘産業は自らの利権を守る手段も影響力も持ち合わせているため、すぐに実現するということはないであろう。


訳注:関連情報
Human Rights Watch ニュース・リリース 2011年12月6日 マリ:小規模金採鉱は金と児童労働を生み出す



化学物質問題市民研究会
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