Club of Mozambique 2012年5月2日
研究者等 水銀を使用しない金採鉱に光を当てる

情報源:Club of Mozambique, May 2, 2012
Researchers highlight mercury free gold production
http://www.clubofmozambique.com/solutions1/
sectionnews.php?secao=mining&id=24712&tipo=one


オリジナル論文:
Mercury-free, small-scale artisanal gold mining in Mozambique: utilization of magnets to isolate gold at clean tech mine by: Kevin Drace, Adam M. Kiefer, Marcello M. Veiga, Matt K. Williams, Benjamin Ascari, Kassandra A. Knapper, Kaitlyn M. Logan, Vanessa M. Breslin, Ashley Skidmore, Daniel A. Bolt, Grant Geist, Lorlyn Reidy, James V. Cizdziel
http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0959652612001564

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2012年5月3日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/mercury/news/120502_mercury_free_ASGM_Mozambique.html


[2012年5月2日] 学術誌”Journal of Cleaner Production”のひとつの記事が、中央モザンビークのマニカ州の小規模金採鉱で水銀の代わりに磁石を使用する方法に光をあてている。

 ケビン・ドレイスらによるこの記事は、ほとんど全ての小規模金採鉱者らは金を他の物質から分離するためのアマルガム化に水銀を使用するということを指摘している。そして水銀を加熱して蒸気で飛ばし、純金を得る。

 この方法は、比較的安価であり容易に利用できるという理由で用いられている。しかし、水銀の不適切な取扱いと使用は世界中で環境と健康の懸念を引き起こしている。

 この論文は、どのようにしてプロセスから水銀を排除することができるかの一例として、マニカ州のクリーン・テク・マイン社を取り上げ、この会社が作業者と周辺コミュニティに対して責任を負っていることを賞賛している。

 この比較的ローテクなアプローチでは、金を含む鉱石は粉状に粉砕され、遠心分離機を用いて分離され、金以外の金属は音楽用スピーカーからリサイクルした磁石を用いて除去されている。

 論文によれば、2002年には小規模菌採鉱は、世界の金の年間生産量3,0000トンの4分の1を占めていた。それ以来、金価格が高騰したので、小規模金採鉱活動は劇的に増大した。

 著者等は、世界中で450万人の女性と60万人の子どもたちが実質的な金採鉱者として働いており、さらに多くの人々が水銀やシアン化合物のような有毒物質を使用する採鉱現場の周辺で採鉱には直接関連しない活動を行なっている。

 水銀を吸入すると、記憶喪失、調整能力と運動機能の障害、そして最終的には死にいたる。環境中の水銀はまた、深刻な疾病ををもたらす。

 モザンビークでは推定6万人の人々が小規模金採鉱に従事しており、金鉱山の多くはマニカ州とソファラ州にある。

 モザンビークでは、採鉱における水銀の使用は違法であるが、ほとんど全ての金採鉱で使用されている。さらに、この報告書は、”モザンビークの採鉱者のほとんどは村落の風下の1カ所で水銀を加熱するのではなく、しばしば彼等の生活区域で、女性や子どもたちの近くで、水路の近くで焼却する”と述べている。

 これとは対照的に、ジンバブエとの国境の近くのペンハロンガにあるクリスペン・エリアス・チバイアが経営するクリーン・テク・マイン社は、金採鉱プロセスから水銀の使用を排除した。

 著者等は、”クリーン・テク・マイン社のモデルは全ての小規模金採鉱現場に汎用的に適用することはできないが(特に様々な役に立たない岩石を含んでいたり、大量の非磁性体不純物を含んでいる場合)、それは、現地の実施方法が金採鉱産業で成功するよう努力している周辺のコミュニティにどのようにして大きな影響及ぼすことができるかを示す貴重な事例である”と、述べている。

 クリーン・テク・マイン社による現地案内では、この地域のほとんどの小規模金採鉱とは異なり、坑道の柱は丸太で強化されていることが著者等に示された。その丸太は地域の樹木から取り出され、クリスペン・エリアス・チバイアは切り出した樹木を補い、また更なる収入をも得るために苗木畑を開いた。彼はまた建設用のブロックを作り、販売するために廃鉱石を利用した。

 研究者等は、クリーン・テク・マイン社の作業環境は、他に比類のない採鉱現場のひとつであると報告している。作業日(月曜日から金曜日)には毎日、全ての採鉱者に朝食と昼食が提供される。安全は常に最優先であり、作業者の安全を確実にするためにクリーン・テク・マイン社はヘルメット、手袋、長靴、及び作業服を全ての従業員に支給している。

 さらに、”クリーン・テク・マイン社は、採鉱者が給料で働くモザンビークでは数少ない小規模金採鉱のひとつであり”、従って1週間の金生産量に依存しない。

 結論として、欧州連合の水銀貿易禁止が発効し、アメリカの2008年水銀禁止法は2013年に発効するので、世界の水銀供給は高騰し、確保することが難しくなると著者等は報告している。これらの規制が及ぼす小規模金採鉱への影響はまだ完全には現れていないが、クリーン・テク・マイン社はこれらの政策からの影響をほとんど受けずに金採鉱を続けることができる戦略的に優位な立場にある。プロセスでの水銀使用に依存する金採鉱者らは、採鉱を継続するために追加的なリソースと技術を得なくてはならない。(SOURCE: AIM)


訳注:参考ビデオ
Prosperity Journey: Illegal to Legal Gold Mining
(成功への道:非合法から合法の金採鉱へ モザンビーク) 音声は聞こえないが、字幕で理解できる。



化学物質問題市民研究会
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