EPA 2012年4月11日
水銀と大気汚染物質基準(MATS)
クリーンな火力発電所

情報源:EPA Website April 11, 2012 Mercury and Air Toxics Standards (MATS)
Cleaner Power Plant

http://www.epa.gov/mats/powerplants.html
訳:安間 武/化学物質問題市民研究会
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2013年8月27日
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http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/mercury/US/120411_EPA_Cleaner_Power_Plants.html

 2011年12月16日、米環境保護庁(EPA)は、石炭及び石油燃焼火力発電所からの水銀とその他の有害大気汚染物質を削減するために初めて国家基準を取りまとめた。1990年の大気浄化法改正後20年以上経過しているが、いくつかの火力発電所(EGUs)は、汚染管理技術が広く利用可能であるにもかかわらず、有害汚染物質の排出を管理していない。

 これらの基準の対象となる600の発電所に、約1,400の石炭及び石油燃焼火力発電所がある。それらは、水銀、非水銀有害金属、酸性ガス、及びダイオキシン類などの有機大気汚染物質等の有害汚染物質を排出する。

 アメリカでは現在、火力発電所が支配的な排出源であり、全体に対する排出割合は水銀(50%)、酸性ガス(75%以上)、様々な有害金属(20%〜60%)である。

 新しい火力発電所や多くの古い火力発電所は、水銀、重金属、酸性ガスの排出をすでに抑制しているが、現在、火力発電所の約40%はまだ先進的な汚染抑制設備を持っていない。

 他の大きな水銀排出源はすで にこれらの排出を削減している。

 1990年には、アメリカの総水銀排出の約3分の2を3つの分野が占めていた。医療廃棄物焼却炉、自治体廃棄物焼却炉、及び火力発電所である。最初の二つの分野は、長年排出基準の対象となっており、その結果、その水銀排出を95%以上削減した。さらに、セメント製造所、製鉄所、及びその他の多くがその排出源からの水銀排出を削減した。

アメリカにおける水銀排出源
分野 1990年排出量
(トン/年)
2005年排出量
(トン/年)
削減率
火力発電所 59 53 10%
自治体廃棄物
焼却炉
57 2 96%
医療廃棄物
焼却炉
51 1 98%

 最終規則は、水銀、酸性ガス、非水銀有害金属についての火力発電所排出基準を確立したが、それは次のような結果をもたらすであろう。火力発電所で燃焼される石炭中の水銀約90%が大気に放出されるのを防ぐこと;火力発電所からの酸性ガスの排出を88%削減すること;州間大気汚染規定により期待される削減を越えて火力発電所からの二酸化硫黄の排出を41%削減すること。

制限値に合わせるための管理は広く利用可能である

 水銀と大気汚染物質基準は、火力発電所に規制的確実性を提供する。さらに、これらの基準は、全ての火力発電所が新しい発電所ですでに達成されているレベルに水銀排出を制限するよう土俵を公平にする。

 広く利用可能な管理技術の利用は有害な大気汚染物質を削減し、その多くが50年以上経過した旧式の火力発電所を近代化するのに役立つであろう。

水銀とその他の大気汚染物質を削減する広く利用可能な技術
対象汚染物質 有害汚染物質に対応するための既存技術
水銀 排ガス脱硫装置(FGD)を備えた選択的触媒削減法(SCR)、活性炭素注入法(ACI)、繊維フィルタ(FF)又は静電気集塵機(ESP)を備えたACI
非水銀金属 繊維フィルタ(FF)又は静電気集塵機(ESP)
ダイオキシン類
及びフラン類
作業実施基準(最適の燃焼を得るための点検、調整、保守、修理)
酸性ガス 排ガス脱硫装置(FGD)、乾式溶剤注入法(DSI)、及び繊維フィルタ(FF)又は静電気集塵機(ESP)を備えた乾式溶剤注入法(DSI)
二酸化硫黄 排ガス脱硫装置(FGD)、乾式溶剤注入法(DSI)

有害大気汚染物質のための排出制限の設定

 水銀と大気汚染物質基準(MATS)は、25メガワット以上の能力を持つ石炭及び石油燃焼火力発電所から排出される全ての有害大気汚染物質(HAPs)を対象とする。これらは有害大気汚染物質のための国家排出基準((NESHAP)と呼ばれ、また最大達成可能管理技術(MACT)としても知られる。石炭及び/又は石油燃焼発電施設は、大気浄化法にリストされている187の有害大気汚染物質の多くを排出する。

 有害物質プログラムの下に規定される排出基準は、個別の施設が定められた期日までに達成しなくてはならない連邦大気汚染制限である。新たな排出源のための最大達成可能管理技術(MACT)は、少なくとも、同様の排出源に対する最良の遂行によって達成された排出削減と同等の厳格さがなくてはならない。既存の排出源についての最大達成可能管理技術(MACT)は、少なくとも最良に管理された上位12%の平均によって達成される排出削減と同等の厳格さがなくてはならない。これらの基準は、排出源カテゴリーから排出される全ての有害大気汚染物質に対応しなくてはならない。

 最大達成可能管理技術(MACT)基準は、二段階のプロセスからなる。

 
  • ”最大達成可能管理の最低限度”(”MACT floor”) は排出源によって現在達成されているものに基づいて確立される。−コストは考慮されないかもしれない。

  • EPAは、正当性があれば、最低限以上(beyond the floo)で規制するかもしれない。−コストとその他の課題が考慮される。
火力発電所は基準に合うようにするための時間がある

 既存排出源は、一般的に水銀と大気汚染物質基準(MATS)を遵守するためにもし必要なら、最大4年間、猶予期限が与えられる。
  • これは、大気浄化法によって全ての排出源に与えられる3年を含む。これは全てではなくても、ほとんどの排出源が遵守するために十分な期間であることをEPAの分析が示している。
  • 大気浄化法のもとで、州の認可当局は、技術的設置に必要とされる1年の追加を与えることができる。EPAは、この選択肢が広く利用可能となることを期待する。
 EPA はまた、信頼性が求められる重要装置が遵守を達成するために最大1年の追加のスケジュールを得るための経路を提供している。この経路は、別の強制実施文書の中で述べられている。EPAは、この経路を必要とする状況は、あったとしても少ないと信じている。

 時宜にかなって遵守することができないその他の状況が生じる、ありそうもない、大気浄化法の下に長年の歴史的実施手法と首尾一貫した出来事においてEPAは、適切な対応と解決を決定するために、適切な時期に、一件づつ個々の状況をに対応するであろう。

信頼性のあるエネルギー

 EPAの40年の歴史の中で、大気浄化法は、米国全土の地域社会に電気を維持する電力会社の能力に影響を及ぼしてこなかった。EPAの分析は、水銀と大気汚染物質基準(MATS)規定と州間大気汚染規定は、地域社会のどの地域においても、資源の妥当性に悪い影響を与えないであろうことを示している。さらなる情報はEPAの資源妥当性分析の中で入手できる。

 エネルギー省の報告書を含んで、多くの他の分析がEPAの分析と一致する結論に達している。



化学物質問題市民研究会
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