UNEP GC25/GMEF 2009年2月20日 ナイロビ
有毒重金属 水銀に取り組むための
歴史的な条約に青信号

環境大臣は、より持続可能な危機のない世界を推進するための
グローバル・グリーン・ニューディールと
グリーン・エコノミー・イニシアティブも支持

情報源:UNEP GC25/GMEF Concludes in Nairobi, 20/02/2009
Historic Treaty to Tackle Toxic Heavy Metal Mercury Gets Green Light
Environment Ministers Also Back Global Green New Deal and
Green Economy Initiative to Power World to More Sustainable Crisis-Free Future
http://www.chem.unep.ch/mercury/148-000000003F53D720F8C9E34FBC565730B3736318070016BCB.pdf

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2009年2月21日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/mercury/UNEP/090220_historic_treaty.html


 【ナイロビ 2009年2月20日】  有毒汚染物質である水銀に対する世界的な取締りが、国連環境計画(UNEP)管理理事会の最終日に環境大臣らによって合意された。140カ国以上によって採択されたこの画期的な決定は、数億の人々の生命を脅かす健康の脅威を解くための舞台を設定するものである。

 政府は、胎児や赤ちゃんから小規模金採掘労働者とその家族まで数百万人の健康を脅かす汚染物質の世界的な放出に対応するための国際水銀条約に関する協議を開始することについて満場一致で決定した。

 彼らはまた、人の健康と環境へのリスクは非常に著しいので、条約が成立するまでの間、自主的な世界水銀パートナーシップ(Global Mercury Partnership)が必要であることに同意した。

 8項目のパートナーシップ計画は下記を含む:
  • 国が安全に備蓄水銀を保管するための世界的な能力を向上すること
  • たとえば、この重金属の一次採鉱などからの水銀供給を削減すること
  • 推定1千万人の採掘者とその家族が暴露している原始的金採鉱場における水銀の使用を断つためのプロジェクトを実行するとともに、水銀リスクについての意識向上をはかること
  • 温度計や高輝度放電灯などの製品中の水銀、及び製紙やプラスチック製品などの製造工程中の水銀を削減すること
 国連事務次長/UNEP事務局長のアキム・シュタイナーは、”UNEPは約7年間、水銀問題にどのように最もよく対処するかに関する熱心な科学的及び政策的議論を調整し貢献してきたが、本日、世界の環境大臣らは十分な事実と十分な選択を準備して会議に臨み、議論する時は終わり、この汚染に対する行動をいま起こす時であることを決定した”と述べた。

 ”つい数週間前まで、世界中のどの国の誰をも害するこの大きな公衆健康の脅威にどのように対処するかについて意見が分かれていた。本日、我々は法的拘束力のある条約と、水銀の少ない世界への移行に向けての緊急の行動の必要性に関して団結した”と彼は述べた。

 ”私は、これは、化学物質や健康の問題のためだけでなく、生物多様性から気候変動まで我々の時代の環境に関する課題全般に通じる大きな信頼醸成の向上となると信じる”とシュタイナーは述べた。

グローバル・グリーン・ニューディール
(省略)

ガザ
(省略)

生物多様性と科学
(省略)

国際的環境ガバナンス
(省略)

記者へのノート
国連環境計画(UNEP)第25回管理理事会/グローバル閣僚級環境フォーラムに関する決議と情報: http://www.unep.org/gc/gc25/

水銀に関するいくつかの事実と数字

 水銀による人の神経系への損傷は一世紀以上にわたって知られている。不思議の国のアリスの帽子屋マッドハッターが奇妙なのは、当時の帽子屋が帽子のつばを強化するために水銀を使用していたという事実を反映していた。

 一方、マグロなどの魚の摂取に関する注意が妊婦などリスクのある人々のために多くの国で出されている。

 スウェーデンでは約 50,000 の湖のカワナマス(大型淡水魚)が国際健康基準を超えるレベルの水銀で汚染されている。

 妊娠可能年齢の女性は、カワナマス、パーチ(ヨーロッパの淡水魚)、ターボット(カレイの一種)、うなぎは食べないこと、他の魚は週に1回とすること。

 アメリカでは、12人に1人、又は500万人弱の女性が米環境保護庁(EPA)が安全であるとするレベル以上の水銀を体内に持っている。

 その他の潜在的な影響には甲状腺や肝臓の悪化、短気、震え、視覚障害、記憶障害、及びおそらく心臓血管障害などがある。

 科学者やNGOのシャークプロジェクトは現在、もうひとつの懸念、世界のある地域での増大するサメの肉の消費を警告している。

 ある見積もりによれば、これらの食物には勧告されている食品安全基準より40倍高い水銀、おそらくもっと多くの水銀を含んでいる。

 カナダとグリーンランドのある地域における北極フイリアザラシとシロイルカの水銀レベルは、過去25年間で4倍に達した。

 ヨーロッパとアメリカは数ヶ月前に水銀の輸出を禁止した。欧州連合は2011年に期限を設定した。

 一方政府はUNEPと共同して、コスト効果があり実績のある代替として広範な製品とプロセスに光をあてた。

 その他のケースは、ある製造者や経済にとっておそらく明確ではない。

 自動車産業の外で使用される高輝度放電灯、ある液晶表示ユニット、ある種のプラスチック製品などが頭に浮かぶ。

 柔軟性が示される必要がある。低水銀の将来についての明確できちっとした展望がをもつ必要あがる。

 このことは革新とコスト効果のある代替のきっかけとなるであろう。

 原始的で小規模な金採掘はおそらく特別なケースである。被害者らは世界の最も貧しい人々の中にいる。

 推定1千万人の金採掘者とその家族がブラジルやベネゼイラからインド、インドネシア、パプアニューギニア、及びジンバブエまで水銀中毒や暴露の被害を受けている。

 フィリピンミンダオ島では、金採掘者の70%は慢性的水銀中毒かも知れない。

 広範な経済的議論がなされている。UNEPは、環境から水銀を回収するのにキログラムあたり12,000ドルに値する社会的、環境的、及び人の健康への利益を見積もっている。

 一方、アジアにおける石炭燃焼が増大していることを原因の一部として、水銀汚染が上昇していることを示す証拠がある。

 年間約6,000トンの水銀が環境中に排出され、そのうち約2,000トンは火力発電所と家庭での石炭燃焼に由来する。大気中又は河川系に舞い降りて、この毒物は数百、数千マイル移動することができる。

 気候変動が北極を溶かし、氷や堆積物の中に閉じ込められていた水銀は海洋に再放出され食物連鎖中に入り込む。

 このように、管理理事会における環境大臣らによって採択された決定と、数年後にコペンハーゲンにおける国連気候変動条約会議で採択されるであろう決定の間には明確で強い関連性がある。

 今日、生きている誰でも体内にあるレベルの水銀を持っている。世界保健機関は、安全限界は存在しないと述べている。

更なる情報についての連絡先:
Nick Nuttall, UNEP Spokesperson, Office of the Executive Director, on Tel: +254 20 762 3084; Mobile: 254 733 632 755 or when travelling +41 795 965 737; E-mail: nick.nuttall@unep.org
Anne-France White at Mobile: +254 (0)728 600 494 or E-mail: anne-france.white@unep.org
Shereen Zorba at Mobile: +254 (0)721 210 571 or E-mail: shereen.zorba@unep.org


訳注:関連情報
Environment News Service (ENS) February 20, 2009 Governments Unanimous on 2009 Start to Mercury Treaty Talks



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