IPEN 重金属WG 2009年11月
水銀条約のための
第1回政府間交渉会合に向けた準備
バンコク会議の報告

情報源:IPEN Heavy Metals Working Group (HMWG): November 2009
Preparing for the first Intergovernmental Negotiation Committee for the Mercury Treaty:
Post-Bangkok, Thailand Debrief
http://www.ipen.org/ipenweb/work/hg.html#mtpost
訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2009年12月22日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/mercury/IPEN/preparing_for_INC1.html


 最近、タイのバンコクで開催された水銀アドホック公開作業グループ会合(AHOEWG)(訳注1)に多くのIPENの代表者らが参加した。この会合は、2010年6月にスウェーデンのストックホルムで開催予定の水銀に関する世界的に法的拘束力のある文書を準備するための第1回政府間交渉会合(INC1)に向けて全ての利害関係者が準備するために有益であった。

 バンコクでの水銀アドホック公開作業グループ会合(AHOEWG)に先立ち、IPENは、”世界水銀条約に関するIPENの見解(IPEN Views on a Global Mercury Treaty)”と題する文書を作成した。

 アドホック公開作業グループ会合(AHOEWG)からのひとつは重要な成果は手続きの規則のための勧告であり、それは今後締結される水銀条約の起草と実施へのNGOの参加を確実にするものである。さらに、政府は地域代表はそのプロセスに寄与するために選定されるべきと示唆した。

 水銀は、ヒト健康と生態系に著しい危害を及ぼす世界が懸念する有毒物質である。水銀が環境に放出されると、気流に乗って移動し、その後再び地上に落ちるが、ある場合には最初の放出地点の近くに、ある時には非常に離れた場所である。水銀は土壌から排出され、小川、河川、湖、そして海に流れ込み、さらに海流と回遊魚によって移動する。水銀が水生環境に入り込むと、微生物によってもっと毒性の高いメチル水銀になる。この状態で食物連鎖に入り込み、魚類や貝類を含む水生生物やまた鳥類、哺乳類、そしてそれらを食べる人間、などの体内に蓄積し生物濃縮する。

 ”魚は、太平洋諸島の多くの人々、さらには世界の沿岸地域の人々の主要な食物である。実際に、魚を食べることが、漁業を生計とする多くの人々にとって唯一の蛋白源である。水銀は世界中の魚を汚染し続けているので、我々の昔からの食物源が我々の管理できないやり方で有害影響を受けている。我々は我々の文化遺産と食物供給を守る世界水銀条約に期待している”とクック島のアイランド・サステイナビリティ・アライアンスのイモゲン・プラ・イングラムは述べた。

 水銀はそれがメチル水銀になるとヒトに対して非常に有毒である。水銀は神経系統の発達を阻害するので、ヒトの胎芽、胎児、幼児、そして子どもは特に水銀に対して脆弱である。この暴露は、子どもの認識と思考能力、記憶、注意力、言語習得、運動能力、視覚空間能力を損なうことがある。

 ”最近、メキシコで開催された全国病院水銀代替会議の開会式で、メキシコ市の保健局のアーマンド・アウド博士は、メキシコ市の公共医療機関の水銀温度計と水銀血圧計を代替するという約束を確認した。これらの医療機関には29の病院といくつかの公共健康センターが含まれ、メキシコにおける安全な医療にとって大きな前進である。我々はそれが、世界中で全ての水銀含有製品の代替モデルとなることを希望する”とメキシコのヘルスケア・ウイズアウト・ハームのプロジェクト・コーディネータで有毒物質代替分析行動センターのフェルナンド・ベジャラノ G. は述べた。

 水銀は水銀含有製品、工業プロセス、採鉱活動、燃焼、廃棄物、その他の排出源から環境に放出される。”製品中の水銀は、特にそのライフサイクルの最終段階に達し廃棄物になる時に大きな脅威となる。我々は条約がこの点及びその他の潜在的な重金属問題に目を向けることを期待する”とインドのトクシック・リンクのラビ・アガルワルは述べた。

 第1回政府間交渉会合(INC1)に向けての準備期間中にIPENが注力する点は:

  • 水銀によって及ぼされる有毒な脅威について及び条約の重要性について、水銀の影響を受けるコミュニティ、労働者とその家族を含んで一般大衆を教育し参加させること。
  • 世界中のNGOsの基礎を築き、国際的及び国内両方における彼らの交渉プロセスへの積極的な関与を促進すること。
  • 健康、気候、廃棄物、労働の分野及び、先住民族における姉妹組織と連携すること。
 IPENは、水銀条約は有毒な重金属の脅威に光を当てるひとつの機会であるとみなしている。我々にとって、水銀は優先的課題である。それはヒトの健康と我々の地球の健康に対する深刻な脅威であるだけでなく、それは本質的に社会正義とび環境正義、そして世代間の公平の問題であり、それは長い道のりである。


訳注1
環境省報道発表資料/平成21年10月26日/「UNEP水銀に関するアドホック公開作業グループ会合」の結果について(お知らせ)
(上記報道資料より)
 ”10月19日から23日まで、バンコクにおいて「UNEP水銀に関するアドホック公開作業グループ会合」が開催されました。今回の会合では、水銀規制に関する条約について議論するために来年以降開催が予定されている政府間交渉委員会(INC)の準備に関する議論やUNEP水銀プログラムによる活動報告等がなされました。
 ”議論の結果、今後の交渉に向けて、条約で定めるべき内容についてUNEP事務局が選択肢を記した資料を準備することや、政府間交渉委員会の手続規則の案などについて合意されました。なお、第1回INCは、2010年6月7日〜11日にストックホルム(スウェーデン)において開催することになりました。 ”


化学物質問題市民研究会
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