IPEN 2017年9月18日 プレスリリース
新たな調査が、世界各地で妊娠可能年齢の女性の
体内水銀が危険なレベルにあることを明らかにする

情報源:IPEN Press Release, September 18, 2017
New Study Reveals Dangerous Levels of Mercury in Women
of Childbearing Age Across Global Regions
http://www.ipen.org/news/new-study-reveals-dangerous-levels-mercury-
women-childbearing-age-across-global-regions


訳:安間 武 化学物質問題市民研究)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2017年9月21日
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http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/mercury/IPEN/IPEN_Press_170918_
New_Study_Reveals_Dangerous_Levels_of_Mercury_in_Women_of_Childbearing_Age.html

【ヨーテボリ、スウェーデン】IPEN (公衆の健康と環境に関する世界ネットワーク)と生物多様性研究所(BRI)により実施された新たな調査によれば、神経毒性金属の水銀が世界各地で妊娠可能年齢の女性の体内に高いレベルで発見されている。

 太平洋諸島、及びインドネシア、ケニア、ミャンマーの金採鉱現場近辺の地域社の女性の平均水銀レベルは、米国環境保護庁(EPA)の健康助言レベルより何倍も高いことが発見された。

 研究『25か国の妊娠可能年齢女性の体内水銀(Mercury in Women of Child-bearing Age in 25 Countries)』は、神経系及び器官にダメージを引き起こすことがあり得るレベルの水銀体内汚染の蔓延を調べるために実施された。母親の体内の水銀は、妊娠期間中に胎児に移行することができ、発達中の胎児に対して強力な神経毒素を暴露させることがあり得る。その調査は、多くの諸国/地域からサンプルを抽出し、妊娠可能年齢の女性に注目しており、この種の調査の最初のものである。

 IPEN の研究者らは、6大陸、25か国、37箇所の妊娠可能年齢の女性1044人から髪の毛のサンプル収集をした。BRI により実施された分析は、サンプル収集された女性の42%は、それ以上のレベルでは脳損傷、IQ 低下、腎臓及び心血管系の損傷が起こるかもしれないとする米国EPAの健康助言レベルである 1ppm 以上の平均水銀レベルであった。さらに調査された全女性の55%が、胎児の神経系損傷の発症に関連する水銀レベル 0.58ppm 以上であったことが発見された。

 同調査は、水銀汚染の三つの主要な原因に関連する世界の多くの地域で、女性の毛髪中の水銀濃度が著しく高いことを発見した。すなわち、石炭炊き火力発電所(魚に蓄積する水銀で海洋を世界的に汚染する源のひとつ)、零細小規模金採鉱(ASGM)、及び水銀を土壌、水及び大気に放出している様々な産業である。

重要な発見:
  • 全ての工業的水銀汚染源から離れているが、主要な食料源として人々が魚を食べる太平洋諸島では、測定した女性の 85.7%が 1 ppm 閾値を超えており、ほとんどの女性がその EPA 基準の3倍であった。

  • インドネシ、ケニア、ミャンマー、及びパラグアイで調査された女性の半分以上が 1 ppm を超えていたが、彼女らの地域社会は小規模金採鉱で生計を立てていた。パラグアイを除いて、魚は主要たんぱく源ではなく、女性の 81%が 1 ppm 以上であり、インドネシアの2箇所の女性らは EPA 基準の3〜9倍の値であった。

  • 重工業地域の近くのコミュニティに住む女性5人に1人は 1 ppm を超える水銀レベルであった。これは、ネパール、ナイジェリア、及びタイを含むが、そこでは汚染された場所が、地域の土地、水路、及び食料源を汚染していた。さらに、アルバニア、チリ、カザフスタン、ネパール、及びウクライナの汚染地域の近くの女性は平均レベルが 0.58ppm 以上であった。
 ”この調査は、世界的な水銀汚染の脅威が、多くの太平洋諸島国の女性や子ども達、そして小規模金採鉱に関わる多くの女性に拡がっていることを示している”と、この調査の主調査者であるIPENのリー・ベルは述べた。”これらの女性のほとんどから検出された非常に高いレベルの水銀は、二つの最も顕著な水銀汚染の原因である、石炭炊き火力発電所と小規模金採鉱に水銀を供給する国際的な水銀貿易を止めるための行動の緊急な必要性を示している”。

 来週、世界中からの政府がスイスのジュネーブに参集し、新たな国際的な法的拘束力のある水銀に関する水俣条約のための次なるステップを討議する。

 この調査は、水銀汚染場所を特定し、水銀の体内汚染を監視し、石炭炊き火力発電所やASGMのような主要な水銀汚染源を削減するための行動をとるためのガイダンスの必要性を強調するものである。

 IPEN の ASGM/採鉱問題の主担当であり、ゴールドマン賞を授与されたユーユン・イスマワティは次の様にコメントした。”水銀を用いる金採鉱を行っている地域社会の数百万人の女性と子ども達は、水銀が成人の健康を害し、彼らの子どもたちの発達中の脳にダメージを与えるという将来を運命づけられている。水銀貿易が続く限り水銀の悲劇は終わらない”。

 ”この調査は、全世界が協力して水銀汚染に対応することの重要性を強調している”と、 BRI の実行ディレクターで、主任科学者であり、この調査の共同著者であるデビッド・エバー博士は述べた。”水銀汚染は世界中の海や淡水系で起きている。生物学的な水銀高汚染場所は世界中にあり、様々な人間の活動に関連している。したがって、水俣条約の効果を評価するために、地域社会及び環境への潜在的な影響を追跡するための生物監視の取組みを継続することが重要である”。

 島嶼持続可能連合のクック島民イモゲン・イングラムは、自分自身の水銀レベルが米国EPAの健康勧告閾値の2.5倍であることを知った。”有害な水銀の体内レベルがそのように高いことをあなたが知れば非常に驚くであろう。もしそのことを知らなければ、水銀をあなたの子どもに引き渡すことになる”と彼女はコメントした。”魚を食べる太平洋諸島で水銀汚染が広範囲に及んでいる。しかし、私は魚を食べるなと言われたくない。海洋の主要な水銀汚染源のひとつである石炭炊き火力発電所が真の犯人である。もう、それは廃止すべき時である”。

連絡先:
Lee Bell, IPEN Mercury Policy Advisor, (+61 417196604 or skype westtoxl, leebell@ipen.org)
Laura Vyda, IPEN Communications Director, (+01 5103871739), lauravyda@ipen.org)

 研究担当者とのインタビューをお望みの記者及び編集者は連絡ください。

 IPEN は、有害化学物質による人の健康と環境への危害を削減し、廃絶するために100か国以上で活動する非政府組織のネットワークである。http://www.ipen.org/

 生物多様性研究所(BRI)の使命は、共同研究を通じて野生生物と生態系に生じている脅威を評価し、環境意識の向上を図り、政策決定者に情報を提供するために科学的な発見を利用することである。



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