UNEP(DTIE)/Hg/INC.5/4 2012年10月15日
INC5 施設の大気排出の閾値及び
陸地や水への放出に関する情報

水銀に関する法的拘束力のある協定書に関する
政府間交渉委員会第5回会合(INC5)
2013年1月13日(日)〜1月18日(金) ジュネーブ(スイス)

情報源:UNEP(DTIE)/Hg/INC.5/4, 15 October 2012
Air emission thresholds for facilities and information on releases to land and water
Intergovernmental negotiating committee to prepare a global legally binding instrument on mercury
Fifth session Geneva, 13 - 18 January 2013
http://new.unep.org/hazardoussubstances/Portals/9/Mercury/Documents/
INC5/5_4_emissions_advance.pdf


訳:野口知美 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載:2012年12月 1日
更新:2012年12月14日 付属書T 追加
更新:2013年 1月 5日 付属書U 追加
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/mercury/INC5/INC5_emission_release.html

事務局による覚書
序文

1. 政府間交渉委員会は第4回会合において、水銀に関する法的拘束力のある国際協定を策定するために、排出及び放出に関するコンタクト・グループの共同議長が付属書 Fの発生源カテゴリーごとに閾値案を作成し、第5回会合で政府間交渉委員会がこれを検討するということに合意した。排出施設の規模を考慮して、閾値案以下の場合は水銀協定書の規定が適用されない可能性もある。さらに、各国政府は共同議長の閾値案作成を手助けするために、国内レベルで水銀を規制する際に使用している閾値に関する情報など、あらゆる関連情報を2012年8月31日までに事務局に提出するよう要請された。各国政府はまた、陸地や水への水銀の排出源や放出源に関する追加情報をすべて同じ期日までに事務局に提出することも求められている。事務局は、政府間交渉委員会が第5回会合でこうした情報を検討することができるよう、情報を編集することを要請された。

2. 本覚書には、各国政府が提出した大気への水銀排出の閾値に関する情報と、陸地や水への水銀の排出源や放出源に関する追加情報の概要が示されている。大気への水銀排出の閾値案は政府間交渉委員会が第5回会合で検討することになるであろうが、この閾値案に関する共同議長の提案は付属書Tに示されており、陸地や水への水銀の排出源や放出源に関する情報の概要は付属書Uに詳細に示されている。

受け付けられた提案

3. 31カ国と1つの地域経済統合機関からの提案が受け付けられた。提案をした国のリストは文書(UNEP(DTIE)/Hg/INC.5/INF.1)に記されており、各国の提案は水銀ウェブサイトにて閲覧することができる(原注1)

原注1
http://www.unep.org/hazardoussubstances/Mercury/Negotiations/INC5/tabid/3471/Default.aspx

提出された水銀の大気排出に関する情報

4. 一定規模以上の施設の規制に関する詳細な情報が2つの提案によって示された。規制対象となる活動の多くには適用可能な閾値がないが、こうした(鉱油や鉱物性ガスの精製、金属鉱石の焙焼や焼結、鉱石・精鉱・2次原料からの非鉄粗金属の生産などの)活動を行っている施設はすべて規制対象になるということが示唆されている。一方、別の国の提案では、水銀排出を管理する具体的な規制措置は何一つないけれども、他の汚染物質を管理する規制が水銀規制の参考になる可能性があるということが示唆されている。

5. 多くの国がいかなる工業施設の閾値も規定していないことを明らかにしており、ケースバイケースで規制をするか、各施設が排出限度基準を遵守するよう求めている。排出限度を設定する方法は数多くあるかもしれない。例えば、水銀排出の年間限度や排煙に適用される濃度限度などである。許容限度の範囲はかなり広いけれども、そのほとんどが0.01から 0.2 mg/m3までの範囲に収まっていた。

陸地や水への排出源や放出源に関して提出された情報

6. 国連環境計画(UNEP)の「水銀放出の特定と定量化のためのツールキット」には、大気や陸地、水への年間推定排出・放出量などが掲載されており、多くの国がこれを利用して予備目録あるいは完全目録の作成に着手し、その結果を提出した。その他の国は、国内の報告義務または汚染物質排出・移動登録に基づいて集められた結果を提出した。こうした結果の概要は、付属書Uに示されている。

7. 提出された情報によれば、大量の鉱石抽出などの採掘活動は採掘後、尾鉱が採掘現場に堆積するため、陸地と水の両方への主要な放出源になっているとのことであった。しかし、UNEPのツールキットは金含有鉱石からの水銀放出量を過大評価しているため、この設定値を利用して出された結果は非常に高い数値になると思われるという指摘も提出された。水へのその他の放出源には下水・排水処理などがあり、歯科用アマルガムや水銀含有製品による影響が有名だ。土壌への放出には、塩素アルカリ工場、(都市廃棄物を含む)廃棄物の埋め立て、墓地周辺の地域の汚染が関与している。

8. 数多くの提案では、放出の制御レベルや飲料水などの水の許容レベルも定められている。放出の許容レベルは、0.001 mg/Lから0.05 mg/Lまでの範囲であった。

9. 陸地や水への排出源や放出源に関して提出された情報によれば、主要な放出カテゴリーとは、議長のドラフト・テキストの付属書Gに記載されているものと、議長のドラフト・テキスト第13条に示されている水銀廃棄物の環境に適切な管理のための要件に含まれる廃棄物管理活動のことである。

結論

10. 施設の閾値に関する共同議長の提案は本覚書の付属書Tに示されているが、政府間交渉委員会が排出に対する適切な措置に関する交渉の一環として、これを検討することを望む可能性がある。

11. 政府間交渉委員会は、陸地や水への放出に対する適切な措置を検討する中で、水や陸地への排出源や放出源に関して提供された情報やそのような放出の程度に関する情報を考慮に入れることを望む可能性がある。


付属書T

共同議長による施設の推定閾値の提案

1. 政府間交渉委員会は、第4回会合において排出と放出に関する話し合いをする中で、付属書Fに示されている大気への排出源カテゴリーのリスト案を検討し、リストの改訂版を準備した。また共同議長に対し、施設の規模を考慮して推定閾値を用意するよう要請した。

閾値設定の根拠

2. 第4回会合においてこの件に関する詳細な議論は行われなかったが、代表団はなぜ適切な閾値を設定することができるのか、その大まかな根拠を2つ特定した。

(a) 閾値を設定することによって、規制当局が大規模な発生源の規制と監視に資金を集中させることができるようになる。政府間交渉委員会はこの点について、具体的な根拠はないが、排出を規制するための最も効果的な資金の使い方になるであろうと考えている。

(b) 利用可能な最善の手法を小規模発生源などに適用することは、費用対効果が高いとは言えない。

3. それゆえ、潜在的な発生源を扱う割合をさらに減らすことによって水銀排出の大部分に対処し、利用可能な資金を用いて環境上及び健康上の最大利益を得ることを目指すことになるであろう。

閾値の提案

4. われわれは各国政府が事務局に公表した情報を活用した。推定閾値を提案した国もあれば、国内では全般的な規制やケースバイケースの評価に基づく施設の規制を用いて別のアプローチを取っているということを明らかにした国もあった。しかし、その大部分が非常に限られた特殊な情報であったため、以下に示す提案は政府間交渉委員会第5回会合における議論を促し、最終決定に役立てるための仮提案とする。

水銀の排出源

5. 議長の支持を得て議論を促進させるため、閾値案では第4回会合の結論における排出源ではなく、議長のテキスト(UNEP(DTIE)/Hg/INC.5/3, annex II)(訳注:日本語訳版)における排出源が用いられていることに注目すべきである。

石炭火力発電所と工業用ボイラー

6. 自国の管轄内では石炭火力発電所への熱入力に基づき50メガワットの閾値を用いていると表明した政府もあったが、発電出力の閾値を25メガワットと特定した政府もあった。この2つの閾値は、高効率の新しい発電所の発電閾値とほぼ等しいかもしれないが、低効率の古い発電所にとって熱入力が50メガワットというのはより厳しい値となる。別の提案では、伝熱面積あるいは石油換算した燃焼能力に基づき汚染物質が規制されることもあるということが示された。熱容量に基づく閾値が最も直接的な測定値であると思われるため、下の表ではこの閾値が提案されている。工業用ボイラーの場合も発電所と同様の閾値が提案されているのは、追加情報がないためである。

非鉄金属の生産施設

7. 非鉄金属の生産施設に関して、以下のものを含む数多くの選択肢が提示された。

(a) 鉱石からの粗金属の生産については閾値なし(規制対象は全ての施設)
(b) 溶解能力は、鉛の場合1日当たり4トン、その他の金属の場合1日20トン
(c) 原料の処理能力は1時間当たり1トン

このより広範なカテゴリーで提案された選択肢をほぼ全て網羅するために、「1日当たりのトン」で表される閾値をたたき台として示している。

8. 金属鉱石の焙焼と焼結に関する閾値を示していない提案もあったが、1時間当たり1トンの生産能力との提案をするものもあった。銑鉄や鋼鉄の生産については、1時間当たり2.5トンを超える能力とするものもあれば、バーナーの燃焼能力に関して表された閾値とするものもあった。さらに、製造施設に関する一般的な項目について提案することよって、1時間当たりのトンに基づいた閾値を設定しようとするものもあった。

廃棄物焼却施設

9. (原文は"8."となっている。) 廃棄物焼却施設に関する提案には、全てのカテゴリーの廃棄物の焼却能力を1時間当たり200キロ以上とするものや、無害廃棄物の場合は1時間当たり3トンとするもの、有害廃棄物の場合は1時間当たり10トンとするものなどがあった。

セメント生産

10. セメント生産に関して、われわれは生産能力に基づいて閾値を設定することを提案したが、石油燃焼との比較に基づいた熱容量を基に規制を検討することを提案するものもあった。われわれはセメント生産で利用され得る燃料の範囲を考慮に入れ、生産能力に基づいた閾値を用いることによって、実施を円滑化するよう提案した。生産能力は決定しやすく、一定で変わらない基準となるからである。

ガス及び石油生産

11. 石油及びガス生産施設に関して、産業排出物の規制が適用されないことを示唆する提案や、バーナーの燃焼能力に基づいた閾値案を示す提案があった。われわれはこの項目に関して閾値を提案していない。

総体的なコメント

12. 政府間交渉委員会が協定書の付属書Fの閾値を盛りこむことにした場合、協定書の実施後のいかなる段階においても、締約国会議は議長のドラフト・テキスト第28条に示されている手続きに従いこれを修正することができる。それゆえ、技術の発展に鑑みて閾値を修正したり、より多くの発生源に対処するために使える資金が増えたことにより閾値を修正したりすることも可能になるであろう。

13. 議長のドラフト・テキストは、締約国が国内政策の問題として閾値以下の発生源に対し規制措置を適用することを妨げるものではないということにも留意しなければならない。

項目案
閾値案
石炭火力発電所 定格熱入力50メガワット
石炭燃料工業用ボイラー 定格熱入力50メガワット
右記の能力を持つ鉛生産施設 鉱石からの金属生産:1日当たり1トン
溶融及び合金:1日当たり4トン
a
右記の能力を持つ亜鉛生産施設 鉱石からの金属生産:全ての施設が規制対象
溶融及び合金:1日当たり20トン
右記の能力を持つ銅生産施設 鉱石からの金属生産:全ての施設が規制対象
溶融及び合金:1日当たり20トン
右記の能力を持つ産業用金生産施設 鉱石からの金属生産:全ての施設が規制対象
溶融及び合金:1日当たり20トン
[右記の能力を持つマンガン生産施設] 鉱石からの金属生産:全ての施設が規制対象
溶融及び合金:1日当たり20トン
右記の能力を持つ廃棄物焼却施設 無害廃棄物の場合、1日当たり35トンの焼却能力;
有害廃棄物の場合、1日当たり10トンの焼却能力
右記の能力を持つセメント生産施設 1日当たり50トンの生産能力
[右記の能力を持つ製鉄施設][、二次製鉄所を含む] 鉱石からの金属生産:1日当たり1トン
銑鉄または鋼鉄生産:1時間当たり2.5トンの生産能力
鉄合金製造工場の運転:1日当たり20トンの製造能力
[石油及びガスの生産・精製施設] 現時点では提案なし
[水銀添加製品の製造施設] 現時点では提案なし
[付属書Dに記載されている製造プロセスにおいて水銀または水銀化合物を使用している施設] 現時点では提案なし
a 鉛の1日当たりの量に関係しているのは、水銀排出というより鉛の毒性への懸念なのかもしれないが、いくつかの司法管轄区で現在課されている規制との整合性を有したものが記載されている。


付属書U (13/01/05)

事務局に提供された陸地や水への排出及び放出に関する情報の概要

ボリビア(多民族国)
 特定された主要な水銀汚染源は、輸送、及び取り扱い中を含む水銀を使用した人力小規模金採鉱、アマルガム化における水銀の使用、精錬による放出であった。放出量の推定値は出されていないが、水銀レベルは河川堆積物が0.3 から11.4 mg/gまで、魚が0.1から0.2 mg/gまでの範囲であることが示唆された。

ボツワナ
 推定排出・放出量の初期目録が提出された。水への放出量は年間1,990kg、土壌への放出量は年間46,780kgと推定されている。主な放出源は(水銀を使用しない)金採鉱・処理による水銀副産物であり、これにより水への放出量が年間989kg、土壌への放出量が年間44,500kgになった。その他の放出源には、精鉱からの銅抽出、廃棄物の管理・焼却、水銀添加製品の使用・処理、エネルギーの生成、セメントの生産などがある。

ブラジル
 塩素アルカリ工場からの放出量に関する情報が提供された。水への水銀の年間放出量は、2007年から2010年にかけて3.7kgから12.4kgにまで増えたとのことである。工場の固形廃棄物から放出された水銀の量は、2007年には3.3kg、2009年には3.9kg、2010年には1.9kgになった。港の堆積物の水銀レベルに関する独自の調査から、水銀濃度は7つの港が0.3 mg/kg未満、4つの港は約1 mg/kgであることが分かった。

カナダ
 国内汚染物質排出目録により、2010年の水や陸地への水銀放出源・放出量が明らかになった。水への合計放出量が259kg、陸へは99kgで、同時期の大気への放出量(5,222kg)に比べて格段に少なかった。水への主な放出源は「上下水道その他のシステム」などの一連の活動で、131kgを放出しており、続いて紙パルプ・板紙工場が80kgを放出している。土壌への主な放出源は金属鉱物採鉱で、96kgを放出している。その他、水、陸地またはその両方への放出源として特定されたのは、アルミナとアルミニウムの製造・加工、セメント・コンクリート製品の製造、発電・送電・配電、鋳造工場、製鉄所と製鋼所、鉄合金の製造、非鉄製造・加工(アルミニウムを除く)、石油・石炭製品の製造、水上輸送支援活動などである。

中国
 陸地や水への水銀の放出量に関する情報は提供されていない。汚染物質排出基準が水への放出に適用されていることに関する情報は提出された。それによれば、鉛・亜鉛産業排出基準は0.03mg/L、銅・ニッケル・コバルト産業排出基準は0.05 mg/Lとのことである。都市の下水処理場の汚染物質排出基準の閾値は0.001 mg/L、下水の総合排出量基準は0.05mg/Lであった。

コスタリカ
 提出された予備目録の結果によれば、環境への水銀放出は年間でおよそ31,000 kgにのぼり、このうち大気への排出が93%、水への放出が約1.5%(年間465 kg)を占めていたが、陸地への放出については特に記述がなかった。

クロアチア
 クロアチアの水法(OG 150/2005)に記載された4つの河川水辺もしくは海への2010年の放出量に関する情報が提出された。廃水や公共下水道から年間0.07 kg、産業用地からは年間2.33 kgが放出されたが、その放出源は製造プロセス、化石燃料の獲得・流通、希釈装置その他の製品の使用などであった。2010年の土壌への放出量に関しては何も報告されていない。

ガボン
 提出された目録の概要によれば、水への合計放出量は年間89,630kgであり、そのうちの89,204 kgは水銀を含有する美白クリームや石けんから放出されているとのことであった。さらに、その他の水銀含有製品、燃料生産、人力小規模金採鉱も放出に寄与しているという。土壌への合計放出量は年間4,970kgで、そのうちの4,695kgは水銀を含有する美白クリームや石けんから放出されており、その他の水銀含有製品、墓地、人力小規模金採鉱も放出に寄与していた。

グルジア
 放出量に関する詳細な情報は出されなかったが、(2003年2月24日に公布された保健・労働・社会政策省令38号により定められた)地表水における水銀の最大許容濃度は0.0005mg/Lと定められている。

グアテマラ
 詳細情報の提出はなかったが、予備目録の結果によれば、最も重要な排出源はエネルギー生産、水銀含有製品、廃棄物燃焼とのことであった。

日本
 陸地や水への水銀の放出量に関する情報は、環境汚染物質排出・移動登録を通じて集められた。2010年の陸地への放出量に関する報告はなかったが、水への放出量の範囲は年間1kgから118 kgであり、これに最も大きく寄与したのは下水処理場であった。

レバノン
 陸地や水への主な放出源は、温度計、血圧計、歯科用アマルガム、省エネランプ、圧力スイッチ、気圧計であると特定された。

マダガスカル
 マダガスカルが提出した目録の結果によれば、76,328kgから93,471kgの水銀が環境に放出されているとのことであった。そのほとんどが廃棄物の埋設によるものであるが、焼却によるものもあり、製品・火葬場・墓地の使用やエネルギーの生産もこれに寄与している。水への放出量は8,000kgから21,000kg、土壌への放出量は11,400kgから12,700kgと推定されている。

マレーシア
 マレーシアは実際の放出量に関する情報を提供しなかったが、排出基準を満たすことを義務づけられ、規制を受けている産業のリストは提出した。その中には、発電所、セメント産業、石炭加工業、石油化学製品産業、紙パルプ工業、鉄鋼産業、天然油と天然ガスの採取・精製、主要な鉄合金の製造が含まれている。2009年から適用されている規制では、工業用地からの最大放出量の基準は0.005 mg/L もしくは 0.05 mg/L、廃棄物処理場や廃棄物埋め立て場から排出された浸出液の最高値は0.005 mg/Lと定められている。

モーリシャス
 提出文書によれば、水や陸地への放出量の数値は出されていないが、その放出源は大気への排出源と同様と思われ、主に石炭火力発電、医療廃棄物焼却炉、石炭を燃料とする繊維工業、宝飾品セクターであるという。陸地や水への放出量は規制されており、飲料水は0.001 mg/L、内陸地表水は100 mg/L、給水源は0.005 mg/L、海洋に排出される廃水は10,000 mg/Lと定められている。灌漑で使用する廃水の基準は最大0.02 mg/L、沿岸の水質は0.0005 mg/Lとなっている。2000年の食品法では、魚における水銀の限界値は1ppmであった。

モナコ
 提出文書によれば、モナコで水銀は工業的に利用されていないとのことであったが、水銀添加製品は使用後に回収されている。モナコでは水銀含有温度計は販売されていない。

モンゴル
 提出された目録報告書によれば、陸地や水への主な放出源は第一次金属の生産(アマルガム化ではない)であり、水への放出量は年間10,842 kg、土壌への放出量は年間485,960kgであった。水に関してその他の放出源には、廃水処理(年間621 kg)、歯科アマルガム充填材の使用・廃棄(年間136 kg)、他の製品の使用・廃棄(年間78 kg)などがある。陸地へのその他の放出源には、一般廃棄物の非公式な廃棄(2,190 kg)や他の製品の使用・廃棄(年間241 kg)などがあった。モンゴルはツールキットの既定値を利用したことを明らかにしており、そこでは金含有鉱石に関する既定値が非常に高いと見なされていたため、この目録では第一次金属の生産に関連する水銀排出量・放出量が過大評価されていると示唆している。

モロッコ
 実際の放出レベルに関する情報は提供されなかったが、排出の規制管理レベルは0.01 mg/L から0.05 mg/Lであり、地表水や飲料水における水銀の許容レベルは1 mg/L未満とされている。

ミャンマー
 陸地や水への放出に関していかなる情報提供もなかったが、提出文書によれば、ミャンマーでは陸地や水への水銀放出は禁止されているとのことであった。

ノルウェー
 水への放出は、陸上または沖合、廃水処理の場合など、ケースバイケースで規制されている。2011年の推定合計放出量は、陸上が12.7 kg、沖合が14.7 kgであった。2010年の廃水処理による放出量は5.2 kgと推定されている。陸地への活発な放出源は存在しない。

パナマ
 目録報告書が提出された。水への主な放出源は実験装置(年間230 kg)や温度計(年間最大222 kg)、土壌への主な放出源はスイッチ(年間最大158 kg)や墓地(年間最大54 kg)であった。

ペルー
 エネルギー鉱山省の報告によれば、採掘活動や化石燃料セクターから水への水銀放出量は管理されているとのことであった。

セネガル
 セネガルの鉱業セクターでは、金抽出における水銀の使用が水銀の主な放出源になっている。健康・環境影響に関する鉱業セクターの報告書が2009年に公表されたものの、限られた情報しか得られていない。

セイシェル
 提出文書によれば、水や土壌への放出量は計測管理されていないが、飲料水は定期的に検査され、通常1リットル当たり1マイクログラム未満という結果を出しているため、環境水と同じレベルと見なされているとのことであった。

スリナム
 水や陸地への放出源は、産業活動(採掘、発電、人力採掘、小規模金採鉱・精錬)、廃棄物処理、医学的・歯科的使用、その他の人為的活動だとされているが、詳細情報は得られていない。

アメリカ合衆国
 提出文書によれば、陸地への放出量が計測管理されていなければ、陸地への放出量に関する報告メカニズムを利用しても有意義な推定を行うことはできないとのことであった。地表水への放出量‐公営処理場への届出排出量及び直接排出量‐は年間約1.56トンと推定されている。 ウルグアイ
 作成された目録によれば、主な放出源は塩素アルカリ生産や歯科用アマルガム廃棄物であり、これらから特に水に放出されているとのことであった。水銀の主な放出源としてはその他に一般廃棄物があり、これには水銀含有製品も含まれる場合もある。この放出ルートについては、廃棄物の量が多いことが非常に懸念されている。

欧州連合
 放出量に関するデータは提出されなかったが、加盟国は環境汚染物質排出・移動登録を通じて放出量を報告しているということが確認された。報告を義務づけられているのは、水及び/または陸地への放出量が年間1kgを上回り、規則155/2006の付属書Tに記載されている施設である。

その他の組織
 資料UNEP(DEPI)/MED IG 20/INF.12には、地中海諸国における水銀の排出制限値や利用可能な最善の手法に関する情報が記載されている。この排出制限値は2015年に実施されることになっており、工業排出源に関しては0.05 mg/Lと定められている。参加している12カ国のうち9カ国が2019年の排出制限値を0.005 mg/Lとすることを支持しており、2カ国が2015年レベルを維持することを求めていた。1カ国は、新たなレベルを設定する前に2015年レベルの遵守状況を評価するよう要請した。参加国はボスニア・ヘルツェゴビナ、キプロス、フランス、イスラエル、イタリア、レバノン、マルタ、モナコ、モロッコ、シリアアラブ共和国、チュニジア、トルコである。



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