UNEP(DTIE)/Hg/INC.5/7 2013年3月14日
水銀に関する世界的な法的拘束力のある文書を作成するための
政府間交渉委員会第5回会合報告書
付属書 水銀に関する水俣条約ドラフト


情報源:UNEP(DTIE)/Hg/INC.5/7 14 March 2013
Report of the intergovernmental negotiating committee
to prepare a global legally binding instrument on mercury
on the work of its fifth session
Annex Draft Minamata Convention on Mercury
http://www.unep.org/hazardoussubstances/Portals/9/
Mercury/Documents/INC5/5_7_REPORT_ADVANCE.pdf


掲載:2013年4月13日
更新:2013年5月1日

安間武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/mercury/INC5/
Draft_Minamata_Convention_on_Mercury.html


訳注1:報告書は、INC5での議論を詳細に記した本文(39頁)と、水銀条約の全条文及び関連付属書を記した付属書(30頁)からなる。ここでは、付属書を日本語で順次紹介する。
訳注2:下記の条約見出しリスト及び最初の”条約序文”という見出しは原文にはなく、読者の便を図るために、訳者が設けたものである。

付属書
条約序文
第1条 目的
第2条 定義
第3条 水銀供給源と貿易
第4条 水銀添加製品
第5条 水銀又は水銀化合物が使用される製造プロセス
第6条 要求に基づく締約国に利用可能な免除
第7条 人力小規模金採鉱
第8条 排出
第9条 放出
第10条 廃棄水銀以外の水銀の環境的に適切な暫定的保管
第11条 水銀廃棄物
第12条 汚染サイト
第13条 財源とメカニズム
第14条 能力構築、技術的援助、及び技術移転
第15条 実施及び遵守委員会
第16条 健康面
第17条 情報交換
第18条 広報、意識向上、教育
第19条 研究、開発、監視
第20条 実施計画
第21条 報告
第22条 効果の評価
第23条 締約国会議
第24条 事務局
第25条 紛争解決
第26条 条約の改正
第27条 付属書の採択と改正
第28条 投票の権利
第29条 署名
第30条 批准、受諾、承認又は加入
第31条 発効
第32条 留保
第33条 脱退
第34条 寄託
第35条 正文

付属書 A 水銀添加製品
付属書 B 水銀又は水銀化合物が使用される製造プロセス
付属書 C 人力小規模金採鉱
付属書 D 水銀及び水銀化合物の大気への排出点源リスト
付属書 E 仲裁・調停手続き (英文)

付属書


条約序文

 本条約の締約国は、

 水銀は、その大気での長距離移動、人間活動により放出された場合の環境中での残留性、生態系での蓄積性、そしてヒト健康と環境への著しい有害影響のために、世界的に懸念される化学物質であることを認めつつ、

 効率的で効果的で首尾一貫した方法で水銀を管理するための国際的な行動を起すための国連環境計画管理理事会の2009年2月20日決議25/5を想起しつつ、(訳注3
訳注3http://www.chem.unep.ch/mercury/GC25/GC25Report_English_25_5.pdf
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/mercury/UNEP/GC_Decision_25_5_Mercury.html

 人の健康と環境へのリスクに目を向けた水銀に関する世界的な法的拘束力のある文書に関する交渉の成功裏の成果を求める国連会議の成果文書”我々が望む将来”の第221項を想起しつつ、(訳注2
訳注4http://sustainabledevelopment.un.org/futurewewant.html

 特に、共通なしかし差異のある責任を含んで、環境開発会議リオ宣言の諸原則(訳注5)についての持続可能な開発に関する国連会議による再確認を想起しつつ、また諸国のそれぞれの状況と能力及び世界的行動の必要性を認めつつ、
訳注5http://www.env.go.jp/council/21kankyo-k/y210-02/ref_05_1.pdf

 特に発展途上国における、脆弱な集団、特に女性、子ども、及び彼等を通じての将来の世代の水銀への曝露によりもたらされる健康への懸念を認識しつつ、

 水銀の生物濃縮性と伝統的食物の汚染による北極の生態系と先住民コミュニティの特別の脆弱性に留意しつつ、そして、水銀の影響に関しては先住民コミュニティについてもっと一般的に懸念しつつ、

 水俣病の本質的な教訓、特に水銀汚染からもたらされる重大な健康と環境影響、及び水銀の適切な管理と将来におけるそのような事故の防止を確実にする必要性を認めつつ、

 水銀管理のための国家能力を強化し、条約の効果的な実施を促進するために、特に発展途上国及び移行経済国における財政的、技術的、科学技術的、及び能力構築支援を強調しつつ、

 また、水銀に関連する人の健康の保護における世界保健機関の活動と、関連する多国間環境協定、特に「有害廃棄物の国境を越える移動及びその処分の規制に関するバーゼル条約」(訳注6)及び、「国際貿易の対象となる特定の有害な化学物質及び駆除剤 についての事前のかつ情報に基づく同意の手続に関するロッテルダム条約」(訳注7)の役割を認めつつ、
訳注6http://www.env.go.jp/recycle/yugai/law/conv_j.pdf
訳注7http://www.meti.go.jp/policy/chemical_management/int/pic.html

 本条約と、環境及び貿易の分野における他の国際的協定は相互に支え合うということを認めつつ、

 本条約のなにものも、他のどのような既存の国際的な協定に由来する締約国の権利と義務に影響を及ぼすことを意図しないことを強調しつつ、

 上述の説明は、本条約と他の国際的な文書の間に階層を作り出すことを意図しないことに留意しつつ、

 本条約のなにものも、人の健康と環境を水銀への曝露から守るための取り組みにおいて、適用可能な国際的な法の下における、その締約国の他の義務に従い、締約国が本条約の条項と矛盾しない追加的な国内措置をとることを妨げないことに留意しつつ、

 以下について合意した。


第1条 目的

 本条約の目的は、人の活動に由来する水銀及び水銀化合物の排出及び放出から人の健康と環境を守ることである。


第2条 定義

本条約にとって:

(a) ”人力小規模金採鉱(Artisanal and small-scale gold mining)”は、個人採鉱者又は小企業により、限られた資本投資と生産をもって実施される金採鉱を意味する。

(b) ”利用可能な最良の技術(Best available techniques)”は、ある締約国又はその締約国の領土内にある施設について経済的及び技術的考慮を払いつつ、全体として、水銀の大気、水、陸への排出と放出及び、そのような排出と放出の環境への影響を防ぎ、それが現実的ではない場合には削減する最も効果的な技術を意味する。この脈絡において:

(@) ”最良(Best)”は、全体として環境保護の高い一般的レベルを達成するために最も効果的であることを意味する。

(A) ”利用可能な(Available)”技術は、ある締約国とその締約国内のある施設に関して、締約国により決定されたように施設の管理者がこれらの技術を利用できるなら、その技術が当該締約国の領土内で使用される又は生成されるかどうかにかかわらず、コストと便益を考慮しつつ、経済的に及び技術的に実行可能な状況の下に、関連する産業分野で実施できる規模で開発される技術を意味する。

(B) ”技術(Techniques)”は、使用されるテクノロジー、運用方法、及び設置が設計され、構築され、維持され、運転され、解体される方法を意味する。

(c) ”環境のための最良の慣行(Best environmental practices)”は、環境規制措置と戦略の最も適切な組み合わせの適用を意味する。

(d) ”水銀(Mercury)”は、元素水銀(Hg(0)、CAS No. 7439-97-6)を意味する。

(e) ”水銀化合物(Mercury compounds)”は、化学反応によってのみ異なる化合物に分離することができる、水銀及び、ひとつ又はそれ以上の他の化学的元素の同一分子からなる物質を意味する。

(f) 水銀添加製品(Mercury-added product)”は、意図的に加えられた水銀又は水銀化合物を含む製品又は製品要素を意味する。

(g) ”締約国(Party)”は、本条約によって拘束されることに同意し、条約が効力を有する国家又は地域経済統合機関を意味する。

(h) ”出席し、かつ投票する締約国(Parties present and voting)”は、締約国会議に出席し、賛成又は反対票を投じる締約国を意味する。

(i) 一次水銀採鉱(Primary mercury mining)は、得ようとする主要な物質が水銀である採鉱を意味する。

(j) ”地域経済統合機関(Regional economic integration organization)”は、本条約によって支配される事柄に関し加盟国が権限を委譲し、内部の手続きに従い、本条約に(を)署名、批准、容認、加入することの権限を正式に与えられた、ある地域の複数の主権国家よって構成されるひとつの組織を意味する。

(k) ”許容される用途(Use allowed)”は、締約国による水銀化合物の第3条、第4条、第5条、第6条、及び第7条と矛盾しない用途を含み、しかしそれに限らない用途を意味する:


第3条 水銀供給源と貿易

1. この条項の目的のために:
(a) ”水銀”への言及は、少なくとも重量で95パーセント以上の水銀濃度である、水銀合金を含んで、他の物質との水銀の混合物を含む。

(b) ”水銀化合物”とは、塩化水銀(I) 別名カロメル、酸化水銀(II)、硫酸水銀(II)、硝酸水銀(II)、 辰砂鉱石及び硫化水銀を意味する。

2. この条項の規定は下記に適用してはならない。
(a) 実験室規模の研究又は参照標準のために使用される量の水銀又は水銀化合物

(b) 石炭、又はこれらの物質から生じる産出物、及び化学製品中の非意図的な少量物を含んで、非水銀金属、鉱石、又は鉱物のような産出物中に存在する自然に生ずる少量の水銀又は水銀化合物

(c) 水銀添加製品

3. 各締約国は、その国にとっての条約の発効日に、その領土内で実施されていなかった一次水銀採鉱を許してはならない。

4. 各締約国は、その国にとっての条約の発効日にその領土内で実施されていた一次採鉱だけ、その日から15年後までの期間、許さなくてはならない。この期間、そのような採鉱からの水銀は、回収、リサイクル、再生利用、直接再利用、又は代替使用されない操作を用いて、第4条に従う水銀添加製品の製造、第5条に従う製造プロセス、又は第11条に従う処分にのみ、使用されなくてはならない。

5. 各締約国は下記をしなくてはならない:
(a) その領土内に存在する、年間10トンを超える在庫を生成する水銀供給源とともに、50トンを超える水銀又は水銀化合物の個別在庫を特定するよう努力しなくてはならない。

(b) 塩素アルカ施設の解体から生じる余剰水銀が利用可能であることを締約国が決定する場合、その水銀は、回収、リサイクル、再生利用、直接再利用、又は代替使用されない操作を用いて、第11条の第3項(a)で参照されている環境的に適切な管理のためのガイドラインに従い、処分されることを確実にするための措置をとらなくてはならない。

6. 各締約国は下記を除いて、水銀の輸出を許してはならない。

(a) 輸出締約国に書面による同意書を発行した締約国への輸出であり、かつ下記の目的の場合のみ。

(@) 本条約の下に輸入締約国に許容される用途。又は
(A) 第10条に示されるように環境的に適切な処分。又は

(b) 輸出締約国に書面による下記を示す証明書を含む同意書を発行した非締約国への輸出。

(@) その非締約国は、人の健康と環境の保護を確実にし、第10条と第11条の規定を遵守することを確実にするための措置を適切にとっている。
(A) そのような水銀は、本条約の下に全ての締約国に許容されている用途のため、又は第10条に規定されている環境的に適切な暫定的保管のためにのみ、使用されるであろう。

7. 輸出締約国は、第6項により求められる書面による同意として、輸入締約国又は非締約国による事務局への一般的通知に依存してもよい。そのような一般的通知は、輸入締約国又は非締約国がその同意を与える全ての取引条件を規定しなくてはならない。締約国又は非締約国は、その通知をいつでも取り消してよい。事務局は、全てのそのような通知を公開登録しなくてはならない。

8. 各締約国は、もし非締約国がその水銀が第3項又は第5項(b)の下に許されない供給源からのものではないとする証明書を供給していないなら、書面による同意を与えるであろう非締約国からの水銀の輸入を許してはならない。

9. 第7項の下に一般的同意通知を提出する締約国は、もし水銀の輸出に関する包括的な制限をしており、また輸入される水銀が環境的に適切な方法で管理されることを確実にするための国内措置を適切に持つなら、第8項を適用しないと決定してもよい。締約国は、非締約国から輸入される水銀の量と生産国名に関する情報はもとより、その輸出制限と国内規制措置を記述する情報を含んで、そのような決定の通知を事務局に供給しなくてはならない。事務局は、全てのそのような通知を公開登録しなくてはならない。実施遵守委員会は、そのような通知と第15条に従う支援情報の全てをレビューし、評価しなくてはならず、また必要に応じて、締約国会議に勧告をしてもよい。

10. 第9項に規定されている手順は、締約国会議の第2回会合の結論まで利用可能でなくてはならない。その後は、もし締約国会議が、出席し、かつ投票する締約国の単純過半数で決定しないなら、締約国会議の第2回会合以前に第9項の下に通知していた締約国を除き、利用は停止されなくてはならない。

11. 各締約国は、第21条に従い提出する報告書の中に、この条項の要求が満たされていることを示す情報を含めなくてはならない。

12. 締約国会議は、この条項に関して、特に第5項(a)、第6項、及び第8項に関して、その第1回会合で更なるガイダンスを提供しなくてはならず、第6項(b)及び第8項で言及されている証明書の要求される内容を開発し、採択しなくてはない。

13 締約国会議は、特定の水銀化合物の貿易が本条約の目的を損なっていないかどうか、及び特定の水銀化合物が第27条に従い採択される追加的付属書の中にリストされることにより、第6項及び第8項の対象となるようにすべきかどうかを、検討しなくてはならない。


第4条 水銀添加製品

1. 各締約国は、付属書 AのパートTにリストされている水銀添加製品の製造、輸入、又は輸出を、除外することが付属書 Aに規定されているか又は締約国が第6条に従い免除を登録している場合を除いて、適切な措置をとることにより、これらの製品のために規定されている廃止期日後は許してはならない。

2. 締約国は、第1項の代案として、 批准の時又はその国にとっての付属書 Aの修正の発効時に、付属書 AのパートTにリストされている製品に対応するための異なる措置又は戦略を実施することを示してもよい。締約国は、付属書 AのパートTにリストされている製品の大部分の製造、輸入、及び輸出を既に些細(デ・ミニミス)なレベルに削減しており、また、この代案を使用するという決定を事務局に通知した時点では付属書 AのパートTにリストされていなかった追加製品中の水銀の使用を削減するための措置又は戦略を実施しているということを示すことができる場合にのみ、この代案を選択してもよい。さらに、この代案を選択する締約国は:

(a) 締約国会議への最初の機会に、達成された削減量を含んで、実施された措置又は戦略の記述を報告しなくてはならない。

(b) 些細(デ・ミニミス)な値にまだ至っていない付属書 AのパートTにリストされているどのような製品中の水銀の使用を削減するための措置又は戦略を実施しなくてはならない。

(c) 更なる削減を達成するための追加的な措置を検討しなくてはならない。

(d) この代案が選択されたどのような製品カテゴリーについても、第6条に従い免除を主張する資格はない。

 条約の発効後5年以内に締約国会議は、第8条の下におけるレビュー・プロセスの一部として、この項の下にとられた措置の進捗と効果をレビューしなくてはならない。

3. 各締約国は、付属書 AのパートUにリストされている水銀添加製品のための措置を、そこに規定されている条項に従い、とらなくてはならない。

4. 事務局は、締約国により提供される情報に基づき、水銀添加製品及びそれらの代替品に関する情報を収集し維持しなくてはならず、そのような情報を公的に利用可能となるようにしなくてはならない。事務局はまた、締約国により提出される他のどのような関連情報も公的に利用可能となるようにしなくてはならない。

5. 各締約国は、この条項の下に、その製造、輸入及び輸出が許されない水銀添加製品の、組み立て製品への導入を防止する措置をとらなくてはならない。

6. 各締約国は、製品のリスクと便益の評価が環境的又は人の健康的便益を示さないかぎり、締約国のための本条約の発効日前に、水銀添加製品のどのような既知の用途にもカバーされない水銀添加製品の製造と商業上の流通をさせないよう働きかけなくてはならない。締約国は、適切なら、事務局に環境的及び人の健康的リスクと便益に関するどのような情報をも含んで、全てのそのような製品に関する情報を提供しなくてはならない。事務局は、そのような情報を公的に入手可能となるようにしなくてはならない。

7. どのような締約国も付属書C(訳注:付属書 A ではないか?)に水銀添加製品をリストするための提案を事務局に提出してもよい。それは、第4項に従う情報を考慮しつつ、水銀を使用しない代替製品の利用可能性、技術的及び経済的実行可能性、及び環境的及び人の健康的リスクと便益に関連する情報含まなくてはならない。

8. 条約の発効日から5年以内に締約国会議は、付属書 Aをレビューしなくてはならず、第27条に従い、その付属書の修正を検討してもよい。

9. 第8項に従う付属書 Aのレビューにおいて、締約国会議は少なくとも下記を検討しなくてはならない。

(a) 第7項の下に提出される全ての提案
(b) 第4項の下に公的に利用可能とされる情報
(c) 環境及び人の健康リスクと便益を考慮しつつ、経済的及び技術的に実行可能な水銀を使用しない代替の締約国にとっての利用可能性


第5条 水銀又は水銀化合物が使用される製造プロセス

1. この条項と付属書 Bの目的のために、水銀又は水銀化合物が使用される製造プロセスは、水銀添加製品を使用するプロセス、水銀添加製品を製造するプロセス、又は水銀含有廃棄物を処理するプロセスを含んではならない。

2. 各締約国は、付属書 BのパートTにリストされている製造プロセス中で水銀又は水銀化合物の使用を、締約国が第6条に従い免除を登録している場合を除いて、適切な措置をとることにより、個々のプロセスのために規定されている廃止期日後は許してはならない。

3. 各締約国は、付属書 BのパートUにリストされているプロセス中での水銀又は水銀化合物の使用を制限するための措置を、そこに規定されている条項に従い、とらなくてはならない。

4. 事務局は、締約国が提供する情報に基づき、水銀又は水銀化合物を使用するプロセス及びそれらの代替プロセスに関する情報を収集し維持しなくてはならず、そのような情報を公的に利用可能となるようにしなくてはならない。締約国はまた、他の関連情報を提出してもよく、事務局は公的に利用可能となるようにしなくてはならない。

5. 付属書 Bにリストされている製造プロセス中で水銀又は水銀化合物を使用するひとつ又はそれ以上の施設をもつ各締約国は、:

(a) これらの施設からの水銀又は水銀化合物の排出及び放出に対応するための措置をとらなくてはならない。

(b) 第21条に従い提出される報告書に、この項に従って取られた措置に関する情報を含めなくてはならない。

(c) 付属書 Bにリストされているプロセスで水銀又は水銀化合物を使用する領土内の施設を特定し、その国にとっての条約発効日から3年以内に、そのような施設の数とタイプ、及びそれらの施設で使用される水銀又は水銀化合物の年間使用量の見積りに関する情報を事務局に提出するよう努力しなくてはならない。事務局は、そのような情報が公的に入手可能となるようにしなくてはならない。

6. 各締約国は、その国にとっての条約発効日前には存在しなかった施設で、付属書 Bにリストされている製造プロセスを使用して、水銀又は水銀化合物の使用を許してはならない。そのような施設に免除は適用されない。

7. 各締約国は、製造プロセスが著しい環境及び健康の便益を提供し、そのような便益を提供する技術的及び経済的に実行可能な水銀を使用しない代替がないことを示して締約国会議を満足させることができないかぎり、本条約の発効日前に存在していなかった、水銀又は水銀化合物が意図的に使用される他の製造プロセスを用いるどのような施設をも開発させないよう働きかけなくてはならない。

 締約国は、適切なら、事務局に環境的及び人の健康的リスクと便益に関するどのような情報をも含んで、全てのそのような製品に関する情報を提供しなくてはならない。事務局は、そのような情報を公的に利用可能となるようにしなくてはならない。

8. 締約国は、関連する新たな技術的開発、経済的及び技術的に実行可能な水銀を使用しない代替、及び付属書 Bにリストされている製造プロセス中での水銀及び水銀化合物の使用、及び水銀及び水銀化合物の排出と放出を削減し、実行可能な場合には廃絶するための、可能な措置と技術に関する情報を交換することを推奨される。

9. どのような締約国も、水銀又は水銀化合物が使用される製造プロセスをリストするために、付属書 Bを修正するための提案を事務局に提出してもよい。それは、水銀を使用しない代替プロセスの利用可能性、技術的及び経済的実行可能性、及び環境及び健康リスクと便益に関連する情報を含まなくてはならない。

10. 条約の発効日から5年以内に締約国会議は、付属書 Bをレビューしなくてはならず、第27条に従い、その付属書の修正を検討してもよい。

11. 第10項に従う付属書 Bのレビューにおいて、締約国会議は少なくとも下記を検討しなくてはならない。

(a) 第9項の下に提出される全ての提案

(b) 第4項の下に公的に利用可能とされる情報

(c) 環境及び人の健康リスクと便益を考慮しつつ、経済的及び技術的に実行可能な水銀を使用しない代替の締約国にとっての利用可能性


第6条 要求に基づく締約国に利用可能な免除

1. どのような国家も地域経済統合機関も、付属書 A又は付属書 Bにリストされている廃止期日からのひとつ又はそれ以上の免除(以降、免除という)を、事務局に書面で下記を通知することによって登録してもよい。

(a) 本条約の締約国になること;又は

(b) 付属書 Aの修正により加えられる水銀添加製品の場合、又は付属書 Bの修正により加えられる水銀が使用される製造プロセスの場合には、少なくともその締約国にとって適用可能な修正の発効日以前(に通知して免除を登録)。

そのような登録はどれでも、締約国の免除の必要性を説明する記述が伴わなくてはならない。

2. どのような免除も付属書 A又は付属書 Bにリストされているカテゴリーについて、又はどのような国家又は地域経済統合機関により特定されるサブカテゴリーについて、登録することができる。

3. 免除をひとつ又はそれ以上持つ各締約国は、登録の中で特定されなくてはならない。事務局はその登録を維持し、公的に利用可能としなくてはならない。

4. 登録は下記を含まなくてはならない。

(a) 免除をひとつ又はそれ以上持つ締約国のリスト

(b) 各締約国のために登録されているひとつ又はそれ以上の免除

各免除の失効期日

5. 締約国による登録の中で、より短い期間が示されていなければ、第1項に従って、全ての免除は、付属書 A又は付属書 Bにリストされる関連する廃止期日から5年後に、失効しなくてはならない。

6. 締約国会議は、締約国の要求により、その締約国がもっと短い期間を要求していなければ、5年間免除を延長することを決定してもよい。この決定において、締約国会議は下記を考慮しなくてはならない。

(a) 免除の延長の必要性を正当化し、実行可能な限り速やかにその延長を廃止するためにとられ、計画されている活動の概要を示す締約国からの報告書

(b) 水銀を使用しない又は免除されているものより水銀消費量が少ない代替製品及び代替プロセスの利用可能性を含んで、利用可能な情報

(c) 環境的に適切な水銀の保管及び水銀廃棄物の処分のために計画されている又は現在とられている活動

どのような免除も廃止期日毎、製品毎に1回だけ延長できる。

7. 締約国は、事務局への書面で通知することにより、いつでも免除を撤回してよい。免除の撤回は通知に示されている期日に発効しなくてはならない。

8. 第1項にもかかわらず、ひとつ又はそれ以上の締約国が第6項に従う延長を受けており、その製品又はプロセスの免除を登録したままということでないなら、どのような国家も地域経済統合機関も、付属書 A又は付属書 Bにリストされている関連製品又はプロセスのための廃止期日から5年後には、免除のための登録をすることができない。そのような場合、国家又は地域経済統合機関は、第1項(a)及び(b)に示めされている時に、その製品又はプロセスの免除を登録してもよいが、それは関連する廃止期日から10年後には失効しなくてはならない。

9. どの締約国も付属書 A又はBにリストされる製品又はプロセスのための廃止期日から10年後には免除を受けることができない。


第7条 人力小規模金採鉱

1. この条項及び付属書 C の措置は、鉱石から金を抽出するために水銀アマルガム化が用いられている人力小規模金採鉱及び処理に適用しなくてはならない。

2. 領土内にこの条項の対象となる人力小規模金採鉱及び処理装置をもつ各締約国は、そのような採鉱及び処理装置での水銀及び水銀化合物の使用、及びそれらから環境への水銀の排出と放出を削減し、実行可能なら廃絶するための措置をとらなくてはならない。

3. 締約国は、領土内の人力小規模金採鉱及び処理が些細なものではない(more than insignificant)ということを決定したら、いつでも事務局に報告しなくてはならない。そのように決定する締約国は下記を行なわなくてはならない。
(a) 付属書 C にしたがって国家行動計画を策定し実施しなくてはならない。
(b)その国にとっての条約発効後3年以内、又は事務局への通知後3年後のどちらか遅い方までに、事務局に国家行動計画を提出しなくてはならない。
(c) その後は、この条項の下における義務に合致するための進捗のレビューを3年毎に行ない、第21条に従って提出する報告書にそのようなレビューを含める。

4. 締約国は、この条項の目的を達成するために、必要に応じて、お互いに、そして関連する政府間組織及びその他の組織と協力してもよい。そのような協力は下記を含むかもしれない。
(a) 水銀及び水銀化合物の人力小規模金採鉱及び処理での使用のための転用を防ぐための戦略の開発。
(b) 教育、支援、能力構築の取り組み。
(c) 持続可能な水銀を使用しない代替方法の研究の促進。
(d) 技術的及び財政的援助の提供。
(e) この条項の下における約束の実施を支援するためのパートナーシップ。
(f) 環境的に、技術的に、社会的に、及び経済的に実行可能な知識、環境的に最良の慣行、及び代替技術を促進するための既存の情報交換メカニズムの利用。


第8条 排出

1. この条項は、付属書 D にリストされているカテゴリーにある点源からの排出を制御するための手段を通じて大気への、しばしば”総水銀”と表現される水銀又は水銀化合物の排出を管理し、実行可能な場合には、削減することに関係している。

2. 本条項の目的のため:

(a)“排出(Emissions)”は、水銀又は水銀化合物の大気への排出を意味する。

(b)“関連排出源(Relevant source)”は、 付属書 D にリストされている排出源カテゴリーのひとつに該当する排出源を意味する。各締約国は、もしそう決めるなら、どのようなカテゴリーのための基準も、そのカテゴリーからの排出の少なくとも75%を含む限り、付属書 D にリストされている排出源カテゴリーにカバーされる排出源を特定するための基準を確立してもよい。

(c) “新たな排出源(New source)”は、下記期日の少なくとも1年以上後に、建設又は実質的な改造が始まった関連排出源を意味する。

(@) その締約国にとっての条約発効。又は
(A) 排出源が、付属書 D の修正によってのみ条約の規定の対象となるような修正の、当該締約国にとっての発効。

(d) ”実質的な改造(Substantial modification)”は、排出に著しい増加をもたらす関連排出源の改造を意味し、副産物回収からの排出についてはどのような変化をも除外する。ある改造が実質的であるかどうかは、締約国が決定することがらでなくてはならない。

(e) “既存排出源(Existing source)”は、新たな排出源ではない関連排出源を意味する。

(f) “排出制限値(Emission limit value)” は、点源から排出される水銀又は水銀化合物の濃度、質量、又は排出速度に関する制限を意味し、しばしば”総水銀”と表現される。

3. 関連排出源を持つ各締約国は、排出を管理するために措置をとらなくてはならず、排出を管理するためにとられるべき措置、その期待される目的、目標、及び結果を述べる国家計画を策定してもよい。どのような計画も、その締約国にとっての条約の発効日後4年以内に締約国会議(COP)に提出されなくてはならない。もし、ある締約国が第20条に従って実施計画を開発するなら、その締約国は、この項に従い準備された計画をその中に含めてもよい。

4. 新規排出源については、各締約国は、排出を管理し、実行可能な場合には削減するために、可及的速やかに、しかし各締約国にとっての発効後5年以内に、利用可能な最良の技術(BAT)と環境のための最良の慣行(BEP)の利用を求めなくてはならない。締約国は、利用可能な最良の技術(BAT)の適用と矛盾しない排出制限値を使用してもよい。

5. 既存排出源については、各締約国は、国家の事情、経済的及び技術的実行可能性、及び措置の実行可能性を考慮しつつ、可及的速やかに、しかし各締約国にとっての発効後10年以内に、下記の措置のひとつ又はそれ以上をどのような国家計画の中にも含めなくてはならず、実施しなくてはならない。

(a) 関連ある排出源からの排出を管理し、実行可能なら削減するための定量的目標。
(b) 関連ある排出源からの排出を管理し、実行可能なら削減するための排出制限値。
(c) 関連ある排出源からの排出を管理するための利用可能な最良の技術(BAT)と環境のための最良の慣行(BEP)の利用。
(d) 水銀排出の管理のために共通の利益をもたらすであろう多種汚染管理戦略(Multi-pollutant control strategy)。
(e) 関連ある排出源からの排出を削減するための代替措置。

6. 締約国は全ての排出源カテゴリーに同じ措置を適用してもよいし、又は異なる排出源カテゴリーに関しては異なる措置を採用してもよい。その目的は、長期にわたり排出削減に合理的な進捗を達成するための締約国により適用されるこれらの措置のためのものでなくてはならない。

7. 各締約国は、可及的速やかに、そしてその国にとっての条約の発効日から5年以内に、関連排出源からの排出目録を確立し、その後、保守しなくてはならない。

 締約国が、どのような排出源に関しても多種汚染管理戦略を適切にとる場合には、その戦略のより広い目的を考慮しつつ、環境的便益と資金源の利用を最適にするために、それが排出源からの排出を管理するための利用可能な最良の技術及び環境のための最良の慣行を決定するかもしれないし、又は、目標又は排出制限を適用するかもしれない。

8. 締約国会議は、最初の会合で、次のガイダンスを採択しなくてはならない。

 新規及び既存の排出源の間の相違と媒体間影響を最小にする必要性を考慮しつつ、利用可能な最良の技術及び環境のための最良の慣行に関するガイダンス。

 第5項に示される措置の実施、特に目標の決定と排出制限値の設定についての締約国の支援に関するガイダンス。

9. 締約国会議は、可及的速やかに次のガイダンスを採択しなくてはならない。

(a) 第2項(b)に従い締約国が開発するかもしれない基準。

(b) 排出目録を準備するための方法論。

10. 締約国会議は、第8項及び第9項に従い開発されたガイダンスをのレビューを続け、必要に応じて更新しなくてはならない。締約国は、この条項の関連規定を実施するに当り、このガイダンスを考慮しなくてはならない。

11. 各締約国は、この条項の実施に関する情報、特に締約国が第4項から第7項に従ってとった措置、及びその措置の効果に関する情報を、第21条に従い提出される報告書に含めなくてはならない。


第9条 放出

1. この条項は、本条約の他の規定で対応されていない関連点源から陸及び水への、しばしば”総水銀”と表現される水銀又は水銀化合物の放出を管理し、実行可能な場合には、削減することに関係している。

2. 本条項の目的のため:

(a)“放出(Releases)”は、水銀又は水銀化合物の陸又は水への放出を意味する。

(b)“関連放出源(Relevant source)”は、本条約の他の規定で対応されていない、締約国により特定された、全ての著しい人の活動に由来する放出点源を意味する。

(c) “新たな排出源(New source)”は、当該締約国にとっての条約発効の少なくとも1年以上後に、建設又は実質的な改造が始まった関連放出源を意味する。

(d) ”実質的な改造(Substantial modification)”は、放出に著しい増加をもたらす関連排出源の改造を意味し、副産物回収からの放出についてはどのような変化をも除外する。ある改造が実質的であるかどうかは、締約国が決定することがらでなくてはならない。

(e) “既存放出源(Existing source)”は、新たな放出源ではない関連放出源を意味する。

(f) “放出制限値(Release limit value)” は、点源から放出される水銀又は水銀化合物の濃度又は質量に関する制限を意味し、しばしば”総水銀”と表現される。

3. 各締約国は、その国にとっての条約発効日後3年以内に、その後は定期的に、関連点源カテゴリーを特定しなくてはならない。

4. 関連放出源を持つ各締約国は、放出を管理するために措置をとらなくてはならず、放出を管理するためにとられるべき措置、その期待される目的、目標、及び結果を述べる国家計画を策定してもよい。どのような計画も、その締約国にとっての条約の発効日後4年以内に締約国会議に提出されなくてはならない。もし、ある締約国が第20条に従って実施計画を開発するなら、その締約国は、この項に従い準備された計画をその中に含めてもよい。

5. その措置は、必要に応じて、下記の措置のひとつ又はそれ以上を含めなくてはならず、実施しなくてはならない。

(a) 関連ある放出源からの放出を管理し、実行可能なら削減するための放出制限値。
(b) 関連ある放出源からの放出を管理するための利用可能な最良の技術(BAT)と環境のための最良の慣行(BEP)の利用。
(c) 水銀排出の管理のために共通の利益をもたらすであろう多種汚染管理戦略(Multi-pollutant control strategy)。
(d) 関連ある放出源からの放出を削減するための代替措置。

6. 各締約国は、可及的速やかに、そして、その締約国にとっての条約の発効日後5年以内に、関連する放出源からの放出目録を確立し、その後、保守しなくてはならない。

7. 締約国会議は、可及的速やかに次のガイダンスを採択しなくてはならない。

(a) 新規及び既存の排出源の間の相違と媒体間影響を最小にする必要性を考慮しつつ、利用可能な最良の技術及び環境のための最良の慣行に関するガイダンス。

(b) 放出目録を準備するための方法論。

8. 各締約国は、この条項の実施に関する情報、特に締約国が第3項から第6項に従ってとった措置、及びその措置の効果に関する情報を、第21条に従い提出される報告書に含めなくてはならない。


第10条 廃棄水銀以外の水銀の環境的に適切な暫定的保管

1. この条項は、第11条に示される水銀廃棄物の定義範囲に入らない第3条に定義される水銀及び水銀化合物の暫定的な保管に適用されなくてはならない。

2. 各締約国は、本条約の下に締約国に許容される用途が意図されたそのような水銀と水銀化合物の保管が、どのようなガイドラインをも考慮しつつ、また第3項に従い採用されるどのような要求にも従いつつ、環境的に適切な方法で行なわれることを確実にする措置をとらなくてはならない。

3. 締約国会議は、有害廃棄物の国境を越える移動及びその処分の規制に関するバーゼル条約及びその他の適切なガイダンスの下に開発されたどのような関連するガイドラインをも考慮しつつ、そのような水銀と水銀化合物の環境的に適切な保管に関するガイドラインを採用しなくてはならない。締約国会議はまた、第27条に従い、本条約の追加的な付属書中の暫定的な保管のための要求を採用してもよい。

4. 締約国は、そのような水銀と水銀化合物の環境的に適切な暫定的保管のための能力構築を強化するために、必要に応じて、お互いに、そして関連する政府間組織及びその他の組織と協力しなくてはならない。


第11条 水銀廃棄物

1. 有害廃棄物の国境を越える移動及びその処分の規制に関するバーゼル条約の関連ある定義は、バーゼル条約の締約国のために、本条約の下にカバーされる廃棄物に適用されなくてはならない。バーゼル条約の締約国ではない本条約の締約国は、本条約の下にカバーされる廃棄物に適用されるガイダンスとして、これらの定義を使用しなくてはならない。

2. 本条約の目的のために、水銀廃棄物とは下記の物質又は物体を意味する。

 バーゼル条約の関連組織と協力して、調和の取れた方法で、締約国会議により定義された、関連閾値を超える量であり、処分される、又は処分することが意図されている、又は国内法の規定又は本条約により処分することが求められている
(a) 水銀又は水銀化合物からなる物質又は物体。
(b) 水銀又は水銀化合物を含む物質又は物体。
(c) 水銀又は水銀化合物で汚染されている物質又は物体。

 この定義は、、締約国会議により定義される閾値以上の水銀又は水銀化合物を含んでいないなら、一次水銀採鉱を除く、採鉱からの表土、廃棄岩及び尾鉱を除外する。

3. 各締約国は、水銀廃棄物が下記のように扱われるよう、適切な措置をとらなくてはならない。

(a) バーゼル条約の下に開発されるガイドラインを考慮しつつ、及び第27条に従い、締約国が採択しなければならない追加的な付属書中の要求に従い、環境的に適切な方法で管理されること。

 要求を開発するにあたり、締約国会議は、締約国の廃棄物管理規制とプログラムを考慮しなくてはならない。

(b) 本条約の下に締約国に許容される用途のために、又は第3項(a)に従う環境的に適切な処分のためにだけ、回収され、リサイクルされ、再生利用され、又は直接再使用されること。

(c) バーゼル条約の締約国について、この条項及びその条約に従って、環境的に適切な処分の目的を除いて、国際的な国境を超えて輸送しないこと。バーゼル条約が国際的な国境を越える輸送に適用しないという状況においては、締約国は、関連する国際的な規則、標準、及びガイドラインを考慮した後にのみ、そのような輸送を許さなくてはならない。

4. 締約国会議は、第3項(a)で参照されているガイドラインのレビュー及び更新をする時に、必要に応じて、バーゼル条約の関連組織と密接な協力を行なわなくてはならない。

5. 締約国は、環境的に適切な方法による水銀廃棄物の管理のための世界的、地域的、及び国家の能力を開発し維持するために、必要に応じて、お互いに、そして関連する政府間組織及びその他の組織と協力することを推奨される。


第12条 汚染サイト

1. 各締約国は、水銀又は水銀化合物で汚染されたサイトを特定し、評価するための適切な戦略を開発するよう努力しなくてはならない。

2. そのようなサイトにより引き起こされるリスクを低減するためのどのような行動も、必要に応じて、サイトが含む水銀及び水銀化合物からの人の健康と環境へのリスクの評価を反映しつつ、環境的に適切な方法で、なされなくてはならない。

3. 締約国会議は、下記の方法とアプローチを含むかもしれない汚染サイト管理のガイダンスを採択しなくてはならない。

(a) 汚染サイトの特定と特性化
(b) 公衆の関与
(c) 人の健康と環境リスク評価 (d) 汚染サイトにより及ぼされるリスク管理のためのオプション
(e) 便益とコストの評価
(f) 結果の確認

4. 締約国は、汚染サイトを特定し、評価し、優先付け、管理し、必要に応じて、汚染サイトを修復するための戦略を開発し、行動を実施することに、協力することが奨励される。


第13条 財源とメカニズム

1. 各締約国は、その国家政策、優先度、計画及びプログラムに従い、その能力の範囲内で、この条約を実施するために意図されたこれらの国家行動に関する限り、資源を提供することを引き受ける。そのような資源は、関連する政策、開発戦略、及び国家予算を通じての国内資金調達、及び民間分野の参加はもちろん、二国間及び多国間の資金調達をも含むかもしれない。

2. 開発途上締約国によるこの条約の実施の全体的な効果は、この条項の効果的な実施に関連するであろう。

3. 財源、技術援助、及び技術移転に関連する開発途上締約国の条約実施を支援して、水銀に関する彼等の活動を強化し、増大させるために、能力構築及び技術移転はもちろん、財政的及び技術的援助のための多国間、地域、及び二国間の財源が緊急に促進される。

4. 締約国は、資金調達に関連して、小島嶼開発途上国又は後発開発途上国である締約国の特別の必要と特別の環境を十分に考慮しなくてはならない。

5. 適切で、予測可能で、時宜を得た財源供給のためのメカニズムは、これによって定義される。そのメカニズムは、開発途上締約国及び移行経済締約国が、この条約の下における彼等の義務を実施するのを支援することである。

6. そのメカニズムは下記を含まなくてはならない。

(a) 地球環境ファシリティ信託基金(Global Environment Facility Trust Fund)、及び
(b) 能力構築と技術援助を支援するための特定の国際的プログラム

訳注:GEFとは開発途上国や経済移行国において、国や地域、あるいは地球規模のプロジェクトが、地球環境問題の解決に貢献しようとした際に新たに必要となる追加費用として、多国間資金を無償で提供する国際的な資金メカニズム。その必要性が審査されて決定されれば、先進国から拠出した資金がGEF運営戦略に基づき原則無償提供される。次の多数国間条約がGEFを資金メカニズムとしている。(ウイキペディア)。

生物の多様性に関する条約(CBD)
気候変動枠組条約(UNFCCC)
オゾン層保護基金(モントリオール議定書)
残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約(POPs条約)
砂漠化対処条約(UNCCD)

7. 地球環境ファシリティ信託基金は、締約国会議で合意されたように、この条約の実施の支援にあたり、コストに合う新たな、予測可能な、適切な、そして時宜を得た財源を提供しなくてはならない。この条約の目的のために、地球環境ファシリティ信託基金は、締約国会議のガイダンスの下に、締約国会議に説明責任をもって、運用されなくてはならない。締約国会議は、全体的戦略、政策、プログラム優先度、及び財源へのアクセスと利用の資格に関するガイダンスを提供しなくてはならない。さらに締約国会議は、地球環境ファシリティ信託基金からの支援受けることができる活動を示唆するリスト(indicative list)に関するガイダンスを提供しなくてはならない。地球環境ファシリティ信託基金は、合意された地球環境的便益の増加コスト及び合意されたある活動を容易にすための全コストに見合う財源を提供しなくてはならない。

8. ある活動のための財源の供給にあたり、地球環境ファシリティ信託基金は、そのコストに比例する提案された活動の潜在的な水銀削減を考慮すべきである。

9. この条約の目的のために、第6項(b)で言及されているプログラムは、締約国会議のガイダンスの下に、締約国会議に説明責任をもって、運用されるであろう。締約国会議は、その最初の会合で、そのプログラムの主催機関を決定しなくてはならず、それは既存の主体であり、それに期間を含んだガイダンスを提供しなくてはならない。全ての締約国及びその他の関連利害関係組織は、自主的にそのプログラムに財源を提供するよう要請される。

10. 締約国会議とそのメカニズムを構成しているひとつ又はそれ以上の主体は、締約国会議の最初の会合で、上述の項目を有効にするための手はずに合意しなくてはならない。

11. 締約国会議は、その第3回会合より遅れることなく、その後は定期的に、資金供給のレベル、この条項の下に確立されるメカニズムを運用できるようにすることを委託された主体に締約国会議により提供されたガイダンス、その有効性、及び開発途上締約国及び移行経済締約国の変化する必要性に対応するための能力をレビューしなくてはならない。そのようなレビューに基づき、締約国会議はメカニズムの効果を改善するための適切な行動をとらなくてはならない。

12. 全ての締約国は、その能力の範囲内で、そのメカニズムに貢献するよう、要請される。そのメカニズムは、民間分野を含む他の源からの財源の提供を促進しなくてはならず、そのような財源とそれが支える活動との相乗効果を求めなくてはならない。


第14条 能力構築、技術的援助、及び技術移転

1. 締約国は、それぞれの能力の範囲で、この条約の下における彼等の義務の実施を援助するために、発展途上締約国、特に後発開発途上締約国(LDCs)又は小島嶼開発途上締約国(SIDS)、及び移行経済締約国に、時宜を得た、適切な技術援助及び能力構築を提供するために協力しなくてはならない。

2. 第1項及び第13条に従い、能力構築と技術援助は、地域、準地域、及び国家の計画を通じて、既存の地域及び準地域センターを含んで、他の多国間及び二国間手段を通じて、また民間部門の参加するパートナーシップを含んで、パートナーシップを通じてもたらされるかもしれない。他の化学物質及び廃棄物の分野における多国間環境協定との協力と調整が、技術援助とその効果を増大するために、求められるべきである。

3. 先進締約国及びその他の締約国は、その能力範囲内で、発展途上締約国、特に後発開発途上締約国(LDCs)又は小島嶼開発途上締約国(SIDS)、及び移行経済締約国に対し、条約を効果的に実施するための彼等の能力を強化するために、適切なら民間分野及びその他の関連利害関係者の支援の下に、最新の環境的に適切な代替技術の開発、移転、普及、及びアクセスを促進し、容易にしなくてはならない。

4. 締約国会議は、その第2回会議までに、そしてその後は定期的に、第21条の中で規定されるもの、及び他の利害関係者によって提供される情報を含んで、締約国からの提出と報告を考慮しつつ、次のことをしなくてはならない。

(a) 代替技術に関連する既存の取り組み、及び、なされた進捗に関する情報の検討
(b) 締約国、特に発展途上締約国の代替技術の必要性の検討
(c) 技術移転において締約国、特に発展途上締約国が経験した課題の特定

5. 締約国は、この条項の下に、どのようにして能力構築、技術援助及び技術移転をさらに強化することができるかの勧告しなくてはならない。


第15条 実施及び遵守委員会

1. この条約の全ての規定の実施を促進し、遵守を見直すために、締約国会議の下部組織としての委員会を含んで、ひとつのメカニズムがここに確立される。そのメカニズムは委員会を含んで、本質的に促進的なものでなくてはならず、締約国のそれぞれの国家能力と状況に特に注意を払わなければならない。

2. 委員会は、この条約の全ての規定の実施を促進し、遵守を見直さなければならない。委員会は、個別の及び系統的な遵守問題の両方を検証し、必要に応じて締約国会議に勧告しなくてはならない。

3. 委員会は、国連の5つの地域グループの地理的均等性のある代表であることを十分考慮して、締約国により推薦され、締約国会議で選ばれる15人のメンバーから構成されなければならず;最初のメンバーは締約国会議の第1回会合で、その後は、第5項に従い締約国会議により承認された手続きの規則に従い選ばれなくてはならなず;委員会のメンバーは、この条約に関連する分野の専門性を持ち、専門性の適切なバランスを反映しなくてはならない。

4. 委員会は下記をベースに問題を検討してもよい。
(a) 全ての締約国からの自身の遵守に関する書面による提出
(b) 第21条に従う国家報告書
(c) 締約国会議からの要求

5. 委員会は、手続きを入念に策定しなくてはならず、それは締約国会議の第2回会合による承認対象としなくてはならなず;締約国会議は委員会へのさらなる委託事項を採択してもよい。

6. 委員会は、合意の下にその勧告を採択するよう、あらゆる努力をしなくてはならない。もし合意のための全ての努力が失敗し、合意に達することができなければ、そのような勧告は最後の手段として、メンバーの3分の2を定足数として、出席し投票するメンバーの4分の3以上の賛成で採択されなくてはならない。


第16条 健康面

1.締約国は、下記を実施することが推奨される。

(a) リスクある集団、特に脆弱な集団を特定し保護するための戦略とプログラムの開発と実施を促進すること。それらは、公衆衛生とその他の関連分野の参画の下に、水銀と水銀化合物への曝露に関連する科学に基づく健康ガイドラインの採択、水銀曝露削減のための目標の設定、及び必要に応じて、公衆の教育を含むかもしれない。

(b) 水銀と水銀化合物への職業的曝露に関する科学に基づく教育的及び予防的プログラムの開発と実施を促進すること。

(c) 水銀及び水銀化合物の曝露により影響を受ける集団のための予防、治療、及び介護のための適切な健康介護サービスを促進すること。

(d) 水銀及びその化合物への曝露に関連する予防、診断、治療、健康リスクの監視についての制度的及び健康専門家の能力を確立し強化すること。

2. 締約国会議は、健康関連の問題又は活動を検討するときに、下記をすべきである。

(a) 世界保健機関、国際労働機関、及びその他の関連政府間組織と必要に応じて、協議し連携すること。

(b) 世界保健機関、国際労働機関、及びその他の関連政府間組織と必要に応じて、情報交換を促進すること。


第17条 情報交換

1. 各締約国は下記情報の交換を促進しなくてはならない。

(a) 毒性学、生態毒性学、及び安全情報を含んで、水銀及び水銀化合物に関する科学的、技術的、経済的、及び法的情報。

(b) 水銀及び水銀化合物の製造、使用、貿易、排出及び放出の削減又は廃絶に関する情報。

(c) 技術的及び経済的に実行可能な、下記に対する代替についての情報。
 (i) 水銀添加製品。
 (ii) 水銀又は水銀化合物が使用されている製造プロセス。
 (iii) そのような代替の健康と環境リスク及び経済的及び社会的コストと便益に関する情報を含んで、水銀又は水銀化合物を排出又は放出する活動とプロセス。

(d) 世界保健機関及びその他の関連する機関との密接な協力の下に、水銀と水銀化合物への曝露に関連する健康影響に関する疫学的情報。

2. 締約国は、第1項で述べられる情報を直接、事務局を通じて、又は、化学物質又は廃棄物条約の事務局を含む他の関連組織の協力の下に、必要に応じて、そのような情報を交換してもよい。

3. 事務局は、多国間環境協定及びその他の国際的取り組みの事務局を含んで関連する組織からの情報はもとより、この条項で述べられる情報の交換に協力を促進しなくてはならない。締約国からの情報に加えて、この情報は、水銀分野の専門性を持った政府間組織及び非政府組織からの情報、及びそのような専門性を持った国家及び国際的機関からの情報を含まなくてはならない。

4. 各締約国は、第3条の下における輸入締約国の同意に関することを含んで、この条約における情報交換のための国家連絡窓口を指名しなくてはならない。

5. この条約の目的のために、人の健康と安全及び環境に関する情報は、秘密であるとみされてはならない。この条約に従い、他の情報を交換する締約国は、相互に合意したようにどのような秘密情報も保護しなくてはならない。


第18条 広報、意識向上、教育

1. 各締約国は、その能力範囲で、下記を促進し、容易にしなくてはならない。

(a) 下記に関する利用可能な情報の公衆への提供。
 (i) 水銀及び水銀化合物の健康と環境的影響。
 (ii) 水銀及び水銀化合物の代替。
 (iii) 第17条第1項で特定された話題。
 (iv) 第19条の下における研究、開発、及び監視活動の結果。
 (v) この条約の下における義務に合致する活動 。

(b) 必要に応じて、政府間組織、非政府組織及び脆弱な集団と協力し、水銀及び水銀化合物への曝露の人の健康と環境への影響に関連する教育、訓練及び周知。

2. 各締約国は、人の活動を通じて排出される、放出される、又は処分される水銀及び水銀化合物の年間量の見積りに関する情報の収集と普及のために、必要に応じて、汚染物質排出移動登録(PRTR)のような既存のメカニズムを利用するか、又はメカニズムの開発を考慮しなくてはならない。


第19条 研究、開発、監視

1. 各締約国は、それぞれの事情と能力を考慮しつつ、下記について開発し、改善するために協力するよう努力しなくてはならない。

(a) 水銀及び水銀化合物の使用、消費、及び人間活動に由来する大気への排出及び水と陸地への放出の目録。

(b) 関連する適切なサンプルの収集と交換はもとより、魚類、海洋哺乳類、海ガメ、鳥類のような生物媒体を含んで、脆弱な集団及び環境媒体中の水銀及び水銀化合物のレベルのモデル化と地理的な代表の監視。

(c) 社会的、経済的及び文化的影響、特に脆弱な集団への影響に加えて、人の健康と環境に及ぼす水銀及び水銀化合物の影響の評価。

(d) 上記(a)、(b)、(c)項の下に取られる活動のための調和の取れた方法論。

(e) 人的活動に由来するものと自然の水銀放出及び歴史的堆積からの水銀の再移動との区別を適切に考慮しつつ、広範な生態系における水銀及び水銀化合物の環境的循環、移動(長距離移動及び堆積を含む)、変換及び運命に関する情報。

(f) 水銀及び水銀化合物及び水銀添加製品の商業及び貿易に関する情報。

(g) 水銀を使用しない製品とプロセスの技術的及び経済的利用可能性及び、水銀及び水銀化合物の放出を削減し、監視するための利用可能な最良の技術及び環境的に適切な最良の慣行に関する情報と研究。

2. 締約国は、第1項で特定された活動をするときに、必要に応じて、既存の監視ネットワーク及び研究プログラムに構築すべきである。


第20条 実施計画

1. 各締約国は、初期評価に続き、その国内事情を考慮しつつ、条約の義務を満たすために、実施計画を開発し、実施してもよい。どのような計画も、それが策定されたなら、直ちに事務局に送付されるべきである。

2. 各締約国は、国内事情を考慮しつつ、そして締約国会議からのガイダンス及び他の関連するガイダンスを参照しつつ、その実施計画をレビューし、更新してもよい。

3. 締約国は、第1項及び第2項の作業を行なうときに、実施計画の開発、実施、レビュー、及び更新を促進するために、国家の利害関係者と協議すべきである 。

4. 締約国はまた、この条約の実施を促進するために、地域計画と調整をしてもよい。


第21条 報告

1. 各締約国は、条約の規定を実施するためにとった措置、及び、そのような措置の効果と条約の目的を満たすにあたり可能性ある課題に関して、事務局を通して締約国会議に報告しなくてはらない。

2. 各締約国は、この条約の第3条、第5条、第7条、第8条、及び第9条で要求される情報を、その報告に含めなくてはならない。

3. 締約国会議は、その第1回会合で、他の関連する化学物質及び廃棄物条約との報告と調整することの望ましさを勘案して、締約国が従うべき報告の時機と書式について決定しなくてはならない。


第22条 効果の評価

1. 締約国会議は、条約発効日後6年以内に開始しつつ、その後は締約国会議で決定される間隔で定期的に、条約の有効性を評価しなくてはならない。

2. 評価を促進するために、締約国会議は、その第1回会合で、生物媒体と脆弱な集団中で観察される水銀と水銀化合物のレベルの傾向はもちろん、環境中における水銀と水銀化合物の存在と移動に関して、自身で比較可能な監視データを用意する計画の確立に取り組まなくてはならない。

3. 評価は、下記を含む、利用可能な科学的、環境的、技術的、資金的、及び経済的情報に基いて実施されなくてはならない。

(a) 第2項に従い、締約国会議に提供される報告書とその他の監視情報。
(b) 第21条に従い提出される報告書。
(c) 第15条に従い提供される情報と勧告。
(d) 条約の下に実施された資金援助、技術移転、及び能力構築の運用に関する報告書及びその他の関連情報。


第23条 締約国会議

1. 締約国会議は、これにより確立される。

2. 締約国会議の第1回会合は、条約発効後1年以内に国連環境計画事務局長により召集される。それ以降の通常の締約国会議は、会議により決定される定期的間隔で開催されなくてはならない。

3. 締約国会議の臨時会合は、会議により必要であるとみなされる時に、又は、事務局により要求が締約国に伝達されてから6ヶ月以内に、少なくとも締約国の3分の1がその提案を支持する締約国の書面要求で開催されなくてはならない。

4. 締約国会議は、第1回会合で、事務局の機能を統制する規定とともに、それ自身及び下部組織のための手続き規則と財政規則を総意で合意し、採択しなくてはならない。

5. 締約国は、継続するレビューと評価の下で条約を実施し続けなくてはならない。締約国は、この条約によって割り当てられた役目を果たさなくてはならなず、そのために下記をしなくてはならない。

(a) 条約の実施のために必要であると考えられる下部組織を設立すること。

(b) 必要に応じて、適格な国際的組織及び政府間組織と非政府組織と協力すること。

(c) 第21条に従い、締約国と事務局が入手可能な全ての情報を定期的にレビューすること。

(d) 実施及び遵守委員会により締約国に提出されたどのような勧告も検討すること。

(e) この条約の目的達成のために求められるかもしれない、どのような追加的な行動をも検討し、引き受けること。

(f) 第4条と第5条に従い、付属書Aと付属書Bをレビューすること。

6. この条約の締約国ではないどのよう国はもちろん、国連、その専門機関、及び国際原子力機関は、オブザーバーとして締約国会議の会合に出席してもよい。、この条約によってカバーされる事柄に関して資格があるとされ、オブザーバーとして締約国会議の会合に出席したいとする要請を事務局に連絡したどのような組織又は機関も、それが国家又は国際的であろうと、政府又は非政府であろうと、締約国の少なくとも3分の1以上が反対しない限り、出席することが許される。オブザーバーのこの許可と参加は、締約国会議により採択される手続き規則の対象とならなくてはならない。


第24条 事務局

1. 事務局は、これにより確立される。

2. 事務局の機能は、下記でなくてはならない。

(a) 締約国会議およびその下部組織の会合のための計画を立て、要求されるサービスを提供すること。

(b) この条約の実施に当り、要求に基づき、締約国、特に開発途上締約国及び移行経済締約国に対する支援を促進すること。

(c) 必要に応じて、関連する国際組織の事務局、特に他の化学物質及び廃棄物条約と調整すること。

(d) この条約の実施に関連する情報交換について締約国を支援すること。

(e) 第15条及び第21条に従い受領する情報及びその他の利用可能な情報に基づき、定期的報告書を作成し、締約国に利用できるようにすること。

(f) 締約国会議の全体的なガイダンスの下に、事務局の効果的な任務遂行に求められるかもしれない管理上及び契約上の準備に従事すること。

(g) この条約で規定されるその他の事務局機能、及び締約国会議で決定されるかもしれないその他の機能を果たすこと。

3. 事務局は、締約国会議が4分の3の得票により、ひとつ又はそれ以上の他の国際組織に委託することを決定しなければ、国連環境計画の事務局長の下に機能する。

4. 締約国会議は、適切な国際的組織と協議して、事務局と他の化学物質及び廃棄物条約の事務局との間の協力と調整を強化してもよい。締約国会議は、適切な国際的組織と協議して、この事柄に関する更なるガイダンスを提供してもよい。


第25条 紛争解決

1. 締約国は、この条約の解釈又は適用に関するどのような締約国間の紛争も、協議又は彼等自身の選択による平和的な方法を通じて、解決することを求めなくてはならない。

2. この条約を批准、受諾、承認、又は加入する時に、又はその後いつでも、地域経済統合機関ではない締約国は、受寄者(Depositary)に提出された文書の中で、この条約の解釈又は適用に関するどのような紛争に関しても、同じ義務を受け入れるどのような締約国に関しても、義務として紛争解決のための次いづれか又は両方の方法を認めるということを宣言してもよい。

(a) 付属書 EのパートTに規定される手続きに従う仲裁。
(b) 国際司法裁判所への紛争仲裁付託。

3. 地域経済統合機関の締約国は、第2項に従う仲裁に関連して、同様な効果を持つ宣言をしてもよい。

4. 第2項又は第3項に従いなされる宣言は、その期限が満了するまで、又はその取り消しの書面による通知が受寄者に付託されてから3か月後まで、効力を有する。

5. 宣言の満了、取り消し通知、又は新たな宣言は、仲裁裁判所又は国際司法裁判所が審理中の訴訟に決して影響を与えてはならない。

6. もし紛争締約国が第2項又は第3項に従う紛争解決の方法を受け入れず、第1項で述べられる方法で紛争が存在する当事者締約国の一方からもう一方の締約国への通知後12ヶ月以内に彼等の紛争を解決することができなかったなら、紛争当事者の締約国の要求により、その紛争は調停委員会に持ち込まれなくてはならない。付属書EのパートUに規定される訴訟手続きが、この条項の下の調停に適用されなくてはならない。


第26条 条約の改正

1. この条約の改正案は、締約国により提案されてもよい。

2. この条約の改正案は、締約国会議の会議の会合で採択されなくてはならない。どのような提案される改正案のテキストも、採択のために提案される会合の少なくとも6ヶ月前に、事務局により、締約国に伝達されなくてはならない。事務局はまた、提案された改正案をこの条約への調印国に、また情報として受寄者に伝達しなくてはならない。

3. 締約国は、この条約に対するどのような提案された改正案に関しても、総意により合意に達するよう、あらゆる努力をしなくてはならない。もし合意のための全ての努力がが失敗し、合意に達することができなければ、そのような勧告は最後の手段として、出席し投票するメンバーの4分の3以上の賛成で採択されなくてはならない。

4. 採択された改正案は、受寄者により、批准、受諾、又は承認のために全ての締約国に伝達されなくてはならない。

5. 改正案の批准、受諾、又は承認は、受寄者に書面で通知されなくてはならない。第3項に従い採択された改正案は、それにより拘束されることに同意している締約国にとって、批准、受諾、又は承認の文書の寄託後の90日目に、修正案が採択される時にいた締約国の少なくとも4分の3の賛成で発効しなくてはならない。その後、改正案は、他のどのような締約国にとっても、批准、受諾、又は承認の文書の寄託後の90日目に発効しなくてはならない。


第27条 付属書の採択と改正

1. この条約の付属書は、条約の不可分な一部をなさなくてはならず、他に示されていなければ、この条約への参照は、同時に、他のどのような付属書への参照ともなる。

2. この条約の発効後に採択されたどのような追加付属書も、手続き上、科学上、技術上、または管理上の事柄に制限されなくてはならない。

3. この条約の追加の付属書の提案、採択、および発効には、下記の手続きを適用しなくてはならない。

(a) 追加の付属書は、第6条の1.3項で規定される手続きに従って提案され、採択されなくてはならない。

(b) 追加の付属書を受け入れることができないどのような締約国も、そのような付属書の採択についての受寄者(Depositary)による通知の日から一年以内に、書面にて受寄者(Depositary)に知らせなくてはならない。受寄者(Depositary)は、受け取ったそのような通知を、遅滞なく、すべての締約国に知らせなくてはならない。締約国は何時でも、追加の付属書に関しては非受諾という以前の通知を撤回することを、書面で受寄者(Depositary)に知らせてもよく、その付属書は、それゆえに、(C)項を条件に、その締約国にとって発効しなくてはならない。

(c) 追加の付属書の採択についての受寄者(Depositary)による通知の日から一年経過したら、その付属書は、上記(b)項に従非受諾の通知を提出していなかったすべての締約国について発効しなくてはならない。

4. この条約の付属書の改正の提案、採択、および発効は、そのような全ての改正は、それが受寄者(Depositary)にそのような改正に関する批准、受諾、承認、又は加入の文書を寄託してから90日目に、そのような締約国にとって発効しなくてはならないとする第30条第5項に従い、付属書の改正に関する宣言をした締約国に関しては、付属書の改正は発効してはならないということを除いて、付属書の改正はこの条約の追加の付属書の提案、採択、および発効と同じ手続きに従わなくてはならない。

5. もし、追加の付属書又は付属書の改正が、この条約の改正に関連するなら、その追加の付属書又は改正は、条約の改正が発効するまで、発効してはならない。


第28条 投票の権利

1. この条約の各締約国は、第2項の規定を除いて、一票を持たなくてはならない

2. 地域経済統合機関は、その権限内の事がらに関して、この条約の締約国である加盟国の数に等しい投票数をもって投票権を行使しなくてはならない。もし加盟国のひとつでも自身で投票を行使するならば、そのような機関は、投票権を行使してはならない。逆もまた同様である。


第29条 署名

 この条約は、すべての締約国及び地域経済統合機関による署名のために、2013年10月10日及び11日に日本の熊本で、その後は2014年10月9日までニューヨークの国連本部で受け付けられる。


第30条 批准、受諾、承認、加入

1. この条約は締約国及び地域経済統合機関による批准、受諾、または承認の対象とならなくてはならない。条約は、条約の署名が締め切られた日から後、締約国及び地域経済統合機関による加入(accession)のために、開かれなくてはならない。批准、受諾、承認、又は加入の文書は、受寄者(Depositary)に寄託されなくてはならない。

2. どのような加盟国も締約国ではない場合に、この条約の締約国になるどのような地域経済統合機関も、この条約のすべての義務に拘束されなくてはならない。ひとつ又はそれ以上の加盟国がこの条約の締約国である場合、その地域経済統合機関及びその加盟国は、条約の下の義務の実施のためのそれぞれの責任を決定しなくてはならない。そのような場合、その機関と加盟国は、条約の下における権利を同時には行使できない。

3. 批准、受諾、承認、又は加入の文書の中で、地域経済統合機関は、条約により統制されることがらに関して、法的権限の程度を宣言しなくてはならない。どのようなそのような機関も、受寄者(Depositary)に、受寄者は次に締約国に、権限の程度の修正について、知らせなくてはならない。

4. 各国及び地域経済統合機関は、批准、受諾、承認、又は加入のときに、この条約を実施する措置に関する情報を、事務局に通知することが推奨される。

5. 批准、受諾、承認、又は加入の文書の中で、どのような締約国も、付属書のどのような改正も、その国が、批准、受諾、承認、又は加入の文書を寄託する時にのみ、発効するということを宣言してもよい。


第31条 発効

1. この条約は、50番目の批准、受諾、承認、又は加入の文書が寄託された日から90日後に、発効しなくてはならない。

2. 50番目の批准、受諾、承認、又は加入の文書の寄託の後に、この条約を批准、受諾、承認、または加入(accede)する各国及び地域経済統合機関について、そのような国又は地域経済統合機関による批准、受諾、承認、又は加入の文書の寄託の後90日後に、条約は発効しなくてはならない。

3. 上記第1項及び第2項の目的のために、地域経済統合機関によって寄託されたどのような文書も、その機関の加盟国により寄託されたものに対する追加として勘定されてはならない。


第32条 留保

 この条約に対する留保はできない。


第33条 脱退

1. ある締約国とっての条約発効後3年後のいつでも、書面による通知を受寄者(Depositary)に提出することにより条約から脱退してもよい。

2. どのような脱退も、受寄者(Depositary)による脱退通知の受領の日から1年経過するか、又は、脱退の通知の中で明示されているもっと後の日から、発効しなくてはならない。


第34条 寄託

 国連事務局長が、この条約の受寄者でなくてはならない。


第34条 成文

 アラビア語、中国語、英語、フランス語、ロシア語、及びスペイン語のテキストが、それぞれ等しく正文となる、この条約オリジナル文書は、受寄者に寄託されなくてはならない。

 上記の証として、その発効に正当に授権された下記署名者がこの条約に署名した。

 2013年10月10に日本の熊本で署名された。




付属書 A 水銀添加製品

下記の製品は、この付属書から除外される。

(a) 国民保護と軍事用途にとって必須の製品。
(b) 研究、計器の校正、参照基準としての用途のための製品。
(c) 置き換えのための水銀を使用しない実行可能な代替品がない場合、スイッチとリレー、電子表示のための冷陰極蛍光ランプ(Cold Cathode Fluorescent Lamp (CCFL))と外部電極蛍光ランプ(external electrode fluorescent lamps (EEFL) )、及び測定機器。
(d) 伝統的又は宗教的儀式で使用される製品。
(e) 保存剤としてのチメロサールを含むワクチン。

訳注8(参考):ランプに関する規制内容については、一般社団法人 日本電球工業会が解説している。
http://www.jelma.or.jp/99news/pdf/20130125UNEP_Suigin.pdf

パートT:第4条 1項の対象となる製品
水銀添加製品 製品の製造、輸入、輸出が許されなく
なる期日
(廃止期日)
電池。但し、水銀含有が2%未満の酸化亜鉛銀ボタン電池、及び水銀含有が2%未満の空気亜鉛ボタン電池を除く。 2020年
スイッチとリレー。但し、モニタリングと制御計器中の高精度キャパシタンス及び損失測定ブリッジ及び高周波無線周波スイッチ及びリレーで、ブリッジ、スイッチ又はリレー当り最大20mgまでの水銀含有のものを除く。 2020年
30ワット以下の一般照明用コンパクト蛍光ランプ(CFLS)でランプバーナー当り 水銀含有が5mgを超えるもの。 2020年
一般照明用直管蛍光ランプ(LFLs):
(a) 60W未満の3波長ランプで、ランプ当り5mgを超える水銀を含むもの。
(b) 40W以下のハロゲン蛍光ランプでランプ当り10mを超える水銀を含むもの。
2020年
一般照明用高圧水銀ランプ(HPMV)
2020年
電子表示用の冷陰極蛍光ランプ(CCFL)及び外部電極蛍光ランプ(EEFL)中の水銀
(a) 短管(500 mm 以下)でランプ当り水銀含有が3.5 mgを超えるもの。
(b) 中管 (500 mm を超えて 1 500 mm以下) でランプ当り水銀含有が5 mgを超えるもの。
(c) 長管(1,500 mm を超える)でランプ当り水銀含有が13 mgを超えるもの。
2020年
化粧品(1ppmを超える水銀含有)、肌美白石けんとクリームを含み、保存剤として水銀が使用されており、効果的で安全な代替保存剤が利用できない場合の目周辺の化粧品は含まない1/ 2020年
農薬、殺生物剤、及び局所消毒剤 2020年
水銀を使用しない適切な代替が利用可能でない場合、大規模機器中に設置される非電子測定機器、又は高精度測定のために用いられるもの以外の下記の非電子式測定機器。
(a) 気圧計。
(b) 湿度計。
(c) 圧力計。
(d) 温度計。
(e) 血圧計。
2020年
1/ 意図は、少量の水銀汚染を含む化粧品、石けん、又はクリームをカバーすることではない。


パートU:第4条 3項の対象となる製品
水銀添加製品 規 定
歯科アマルガム 歯科アマルガムの使用を段階的に縮小するために、締約国によりとられるべき措置は、締約国の国内状況及び関連する国際的なガイダンスを考慮しなくてはならず、下記のリストから二つ又はそれ以上の措置を含めなくてはならない。

  1. 歯科虫歯予防及び健康促進を目指す国家目標の設定。それにより歯科修復の必要性を最小にする。
  2. その使用を最小にすることを目指す国家目標の設定。
  3. 歯科修復のためのコスト効果があり臨床的に効果がある水銀を使用しない代替品の使用の促進。
  4. 歯科修復のための品質の高い水銀を使用しない材料の研究と開発の促進。
  5. 水銀を使用しない歯科修復代替品の使用と、最良の管理実施の促進について、歯科専門家と学生を教育し訓練するよう歯科専門家組織と歯科学校に働きかけること。
  6. 歯科修復に水銀を使用しない代替よりも歯科アマルガムの使用に有利な保険政策とプログラムにやる気をなくさせること。
  7. 歯科修復に歯科アマルガムよりも品質のよい代替の使用に有利な保険政策とプログラムを奨励すること。
  8. 歯科アマルガムの使用はカプセル化された形状のものに制限すること。
  9. 水銀と水銀化合物の水及び陸への放出を削減するために、歯科設備に最良の環境的実施(BEP)の使用を促進すること。




付属書 B 水銀又は水銀化合物が使用される製造プロセス

パートT:第5条 2項の対象となるプロセス
水銀又は水銀化合物が使用される製造プロセス 廃止期日
塩素アルカリ製造。 2025年
水銀又は水銀化合物が触媒として使用されているアセトアルデヒド製造。 2018年



パートU:第5条 3項の対象となるプロセス
水銀が使用されるプロセス 規定
塩ビモノマー製造。 締約国によってとられるべき措置は下記を含むが、それに限らない。
  1. 2010年比で2020年までに製造単位当りの水銀使用量を50%削減すること。
  2. 一次採鉱からの水銀の依存を削減するための措置を促進すること。
  3. 環境への水銀の排出及び放出を削減するための措置をとること。
  4. 水銀を使用しない触媒とプロセスの研究と開発を支援すること。
  5. 締約国会議が既存プロセスに基づく水銀を使用しない触媒が技術的にも経済的にも実行可能となったということを確立してから5年後からは、水銀の使用を許さないこと。
  6. 第21条に従い、代替を開発し及び/又は特定するための、及び水銀の使用を廃絶するための取り組みに関して締約国会議に報告すること。
ナトリウムメチラート又はエチラート、
カリウムメチラート又はエチラート。
締約国によってとられるべき措置は下記を含むが、それに限らない。
  1. 水銀の使用を削減するための措置は可能な限り迅速に、そして条約の発効後10年以内に、この使用を廃止することを目指すこと。
  2. 2010年比で2020年までに製造単位当りの排出と放出を50%削減すること。
  3. 一次採鉱からの新たな水銀の使用を禁止すること。
  4. 水銀を使用しないプロセスの研究と開発を支援すること。
  5. 締約国会議が既存プロセスに基づく水銀を使用しないプロセスが技術的にも経済的にも実行可能となったということを確立してから5年後からは、水銀の使用を許さないこと。
  6. 第21条に従い、代替を開発し及び/又は特定するための、及び水銀の使用を廃絶するための取り組みに関して締約国会議に報告すること。
ポリウレタン製造。 締約国によってとられるべき措置は下記を含むが、それに限らない。
  1. 水銀の使用を削減するための措置をとり、可能な限り迅速に、そして条約の発効後10年以内にこの使用を廃止することを目指すこと。
  2. 一次水銀採鉱からの水銀の依存を削減するための措置を促進すること。
  3. 環境への水銀の排出及び放出を削減するための措置をとること。
  4. 水銀を使用しない触媒とプロセスの研究と開発を推奨すること。
  5. 第21条に従い、代替を開発し及び/又は特定するための、及び水銀の使用を廃絶するための取り組みに関して締約国会議に報告すること。
第5条6項はこの製造プロセスに適用してはならない。



付属書 C 人力小規模金採鉱

国家行動計画

1. 第7条第3項の規定の対象となる各締約国は、その国家行動計画に下記を含めなくてはならない。

(a) 国家目標と削減目標。

(b) 下記を廃絶するための行動。
(@) 全鉱石アマルガム化。
(A) アマルガム又は加工アマルガムの開放加熱。
(B) 住宅地域でのアマルガム加熱。
(C) 水銀除去を行なわずに水銀が加えられている堆積物、鉱石、又は尾鉱のシアン化合物による処理。

(c) 小規模金採鉱分野の公式化又は規制を促進するための措置。

(d) 領土内の小規模金採鉱及び処理で使用される水銀の量の基準見積りと採用される実施方法。

(e) 水銀を使用しない手法を含んで、小規模金採鉱及び処理の水銀の排出及び放出、及び曝露の削減促進のための戦略。

(f) 小規模金採鉱及び処理での使用のための国外及び国内の両方の供給源からの水銀及び水銀化合物の貿易管理及び転用防止のための戦略。

(g) 行動計画の実施と開発継続への利害関係者の関与のための戦略。

(h) 小規模金採鉱者及び彼等の地域社会の水銀への曝露に関する公衆衛生戦略。そのような戦略は、特に、健康データの収集、ヘルスケア作業者のための訓練、及び健康施設を通じての意識向上を含むべきである。

(i) 脆弱な集団、とりわけ、子どもと妊娠可能年齢の女性、特に妊婦の、小規模金採鉱で使用される水銀への曝露を防止するための戦略。

(j) 小規模金採鉱者及び影響を受ける地域社会への情報提供のための戦略。

(k) 国家行動計画の実施のためのスケジュール。

2. 各加盟国は、その目的を達成するために、水銀を使用しない人力小規模金採鉱と市場ベースのメカニズム又は市場ツールの標準の使用又は導入を含んで、国家行動計画に追加的な戦略を含めてもよい。


付属書 D 水銀及び水銀化合物の大気への排出点源リスト

点源カテゴリー:
 石炭焚き火力発電所
 石炭焚き産業用ボイラー
 非鉄金属1/の生産に使用される精錬及び焼結プロセス  廃棄物焼却施設
 セメント・クリンカー(訳注9)製造施設。

1/ この付属書の目的のために、”非鉄金属”は鉛、亜鉛、銅、産業的金を指す。
訳注9:セメントの原料をキルン等で焼成して得られた焼塊(かたまり)。


付属書 E 仲裁・調停手続き
Annex E Arbitration and conciliation procedures


Part I: Arbitration procedure

The arbitration procedure for purposes of paragraph 2 (a) of Article 25 of this Convention shall be as follows:

Article 1

1. A Party may initiate recourse to arbitration in accordance with Article 25 of this Convention by written notification addressed to the other party or parties to the dispute. The notification shall be accompanied by a statement of claim, together with any supporting documents. Such notification shall state the subject matter of arbitration and include, in particular, the Articles of this Convention the interpretation or application of which are at issue.

2. The claimant party shall notify the Secretariat that it is referring a dispute to arbitration pursuant to Article 25 of this Convention. The notification shall be accompanied by the written notification of the claimant party, the statement of claim, and the supporting documents referred to in paragraph 1 above. The Secretariat shall forward the information thus received to all Parties.

Article 2

1. If a dispute is referred to arbitration in accordance with Article 1 above, an arbitral tribunal shall be established. It shall consist of three members.

2. Each party to the dispute shall appoint an arbitrator, and the two arbitrators so appointed shall designate by agreement the third arbitrator, who shall be the President of the tribunal. In disputes between more than two parties, parties in the same interest shall appoint one arbitrator jointly by agreement. The President of the tribunal shall not be a national of any of the parties to the dispute, nor have his or her usual place of residence in the territory of any of these parties, nor be employed by any of them, nor have dealt with the case in any other capacity.

3. Any vacancy shall be filled in the manner prescribed for the initial appointment.

Article 3

1. If one of the parties to the dispute does not appoint an arbitrator within two months of the date on which the respondent party receives the notification of the arbitration, the other party may inform the Secretary-General of the United Nations, who shall make the designation within a further two-month period.

2. If the President of the arbitral tribunal has not been designated within two months of the date of the appointment of the second arbitrator, the Secretary-General of the United Nations shall, at the request of a party, designate the President within a further two-month period.

Article 4

The arbitral tribunal shall render its decisions in accordance with the provisions of this Convention and international law.

Article 5

Unless the parties to the dispute otherwise agree, the arbitral tribunal shall determine its own rules of procedure.

Article 6

The arbitral tribunal may, at the request of one of the parties to the dispute, recommend essential interim measures of protection.

Article 7

The parties to the dispute shall facilitate the work of the arbitral tribunal and, in particular, using all means at their disposal, shall:

(a) Provide it with all relevant documents, information and facilities; and
(b) Enable it, when necessary, to call witnesses or experts and receive their evidence.






化学物質問題市民研究会
トップページに戻る