UNEP INC.1/INF/9 2010年5月12日
水銀の供給と貿易に関する情報の更新
付属書 II:ラテンアメリカ・カリブ海地域における
余剰水銀の評価 2010年−2050年


情報源:UNEP INC.1/INF/9 2010年5月12日
Update of information on the supply and trade of mercury
Annex II Executive summary of the report "Excess mercury supply in Latin America and the Caribbean, 2010-2050"
http://www.unep.org/hazardoussubstances/LinkClick.aspx?fileticket=nHFy0ZgcyuM%3d&tabid=3391&language=en-US

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2010年5月25日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/mercury/INC1/INC1_20_supply_trade_mercury_Annex_II_LAC.html


付属書 II
ラテンアメリカ・カリブ海地域における余剰水銀の評価 2010年−2050年


  1. UNEP管理理事会決議 24/3 IV は、水銀の放出からのリスクを削減するための行動のための7つの優先領域を特定した。それらのうちの二つは次のようなものである。
     ”一次水銀採鉱の抑制を検討し、供給源の階層構造を考慮すること”、及び
     ”水銀の環境的に適切な保管方法を探すこと”

  2. 決議 GC 25/5 の中で管理理事会は、ヒト健康と環境へのリスクを削減するために、暫定的活動とともに拘束力のある及び自主的という両方のアプローチを含むことができる水銀に関する法的拘束力のある文書を追求することを含めて更なる国際的な措置をとることに合意した。

  3. ラテンアメリカとカリブ海地域では、鉱山操業からの副産物水銀の増大、及び水銀に替わる代替物の使用の増大がこの地域に余剰水銀をもたらす結果となる。さらに、水銀供給の管理は、水銀を使用しない実行可能な代替が存在する分野において水銀の需要を減らすのに役立つ価値ある政策ツールであると現在見られている。

  4. もし、許容できる適用がないなら、水銀は適切に管理され保管されなくてはならず、それによって世界の市場に再び入り込むことを防がなくてはならない。したがって水銀の環境的に適切な保管解決が優先重要事項となる。

  5. 金属水銀は有毒であるというだけでなく、破壊することも分解することもできないので、余剰水銀を安全に隔離する場所が必要である。政府とその他の利害関係者らは、これらの水銀が世界の市場に再び入り込むことを避けるために、これらの水銀を長期間にわたりどのように管理するかを理解する必要がある。この理解には、必要な保管容量のための計画、地域の調整活動の討議、財政的及び技術的支援の確保、環境的に適切な長期保管のための技術的基準の特定、そのようなひとつ又はそれ以上の施設の基本設計の開発が含まれる。設計プロセスの第一段階として、余剰水銀供給に関する報告書はこの地域で隔離のために必要となる水銀の量、適切な行動をとるための時間枠を見積もっている。

  6. こ報告書は、ラテンアメリカ・カリブ海地域は著しい量の水銀を輸入し輸出していることを確認している。この地域で消費されている水銀の大部分は、小規模金採掘のための使用であり、少量が水銀含有製品での使用とともに、水銀プロセスを用いた塩素アルカリ製造での工業的使用である。

  7. この分析は、ラテンアメリカ・カリブ海地域における将来の水銀供給源は、主に鉱山活動の副産物として回収される水銀及び、水銀電極塩素アルカリプラントの閉鎖又は転換により回収される水銀である。そのような地域の水銀供給源はこの分析の中で、この地域における水銀供給と需要の平衡をよりよく理解するために、上述の地域的使用と関連付けられている。

  8. したがって、この報告書は、ラテンアメリカ・カリブ海地域内の将来の水銀供給と需要をよりよく理解するための枠組み、この地域における水銀管理と保管についての議論を伝達ために必要な枠組みを示している。分析は、2009年4月にウルガイのモンテビデオで開催されたラテンアメリカ・カリブ海地域における余剰水銀の保管に関するプロジェクト開始会議のための背景情報を提供した。

  9. 国連産業開発機構やその他の機関の専門家らは、水銀供給の制限は、水銀価格の上昇と水銀供給へのアクセスが困難になるので小規模金採鉱における需要削減に大きな効果があると結論付けている。したがって、供給と需要に影響を与えるための措置は相乗効果があり、ある程度、供給制限は需要削減の効果が出る前に先行しなくてはならない。水銀供給の保管への転換は、さらに需要削減を推進するための取り組みとして特に重要かもしれない。

  10. 報告書の中で評価された基本ケースシナリオによれば、ラテンアメリカ・カリブ海地域における水銀供給は2015年より前に需要を上回るかも知れないので、余剰水銀の保管の必要性を示唆している。このシナリオはより厳しい要求が産業鉱山分野に課せられルことを想定しており、その結果は、副産物水銀の回収の増大をもたらすことを示している。一方、南アメリカにおけるある国際的金鉱山がその副産物水銀をアメリカに輸出し続ければ、この時間枠は数年長くなるであろう。

  11. ラテンアメリカ・カリブ海地域の水銀保管能力の緊急性は、余剰水銀供給に貢献するさらなる需要削減の速度、この地域の諸国が水銀入手への厳しい規制又は管理のような供給制限を通じて更なる需要削減を促進したいと望む程度、及び、この地域の全ての諸国に適切な解決が達成される程度(たとえ余剰水銀の供給が比較的少数の国で生じたとしても)に、依存するようである。

  12. 基本ケースシナリオは、2015年から2050年の間にラテンアメリカ・カリブ海地域で保管される必要があるかもしれない水銀の量は8,000トンを超えるようになることを示している。代替の最小保管シナリオによれば、ある副産物水銀は輸出され続け、副産物水銀の生成の増加が一般的に遅いという仮定のもとに、蓄積される水銀の量は概略2,000〜3,000トンである。これらのシナリオは、水銀需要の削減促進の方法としてのごく近い又は近い将来の水銀隔離の地域戦略の採用の可能性を反映していない。そのような戦略を採用するならば、保管能力の開発を速やかに実施することが必要である。



化学物質問題市民研究会
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